STEP3 視点キャラの重要性
今回の物語理論の話をしていこう。
ある小説では、視点キャラを一話一話で変えていき、一話一話なんの変化もなく時を過ごす。そんな展開の物語であることが多い。
キャラクターをたくさん出し、どれもかわいい女の子だ。そんなキャラクターの可愛い口調の一人称視点の地文の小説。それぞれの特徴を地文で明記することで、誰の視点かを説明する。中には初めに『〜○○視点〜』と注釈を入れている作品もある。
この小説サイトではよくある表現法であると見受けるが、私はそんな作者に問いたいことがある。
あなたにとって、視点キャラとはどのような役割を持っているのか。
大ヒットした超大作には、視点キャラについて共通のパターンが存在する。
この視点キャラについて、いくつか例を上げていこう。
例1
世界に散らばった七つの龍玉を集める物語。
主人公は山の中で育った野生児で、狩りをして生きている少年。爺さんに鍛えられ、普通の人間よりも強い。龍玉の一つを亡くなった爺さんの肩身としている。
ヒロインは16歳の少女。龍玉を素敵な彼氏をもつことを願うために世界を旅をして収集する。都会で育った常識人で、少年の強さ、世間知らずさを目の当たりにしながら共に旅をする。
例2
忍者の里の人間に嫌われる少年。彼は全員に認められて里の長となるべく努力している。
両親共におらず、ほかの子供たちが親に褒められたりするのを遠くから見つめる。
里の人間に自分の存在を認めさせるためにイタズラをするしかない。
学校を卒業し、忍者としての一歩を踏み出してから日々成長していく物語。
例3
恋人を亡くした女性はある宗教にのめり込んでしまう。
奇跡の技を使う教皇に、「恋人を生き返らせてあげる」という条件を突き出され、布教に励んでいる。
そんなある日、小柄な少年と鎧を纏った男の二人が街に現れる。二人は兄弟だという。
奇跡の技を錬金術であると断定し、神を侮辱する彼らの物言いに女性は憤る。
しかし、兄弟は女性と同じように亡くした母を生き返らせようとして右腕と弟の身体を失い、弟の霊を鎧に定着させるために左足を失った姿を目の当たりにする。
教皇の奇跡の技を見抜いた兄弟。教皇の地位は一気に堕ちてしまう。
心の拠り所を失った女性は兄弟に「自らの足で立て、あんたには立派な足がついてるから」と皮肉のような励ましを貰って立ち上がった。
例4
個性という特殊な体質を持つ人間が産まれ始めた世界。
爪を伸ばしたり、火を吐いたり、動物を模した能力を有したりする人間が蔓延り、能力を活かして正義のヒーローとなる者達がいる。
ヒーローとなることを夢見る少年。しかし、彼は無個性という能力を有さない人間だった。
個性を必要とするヒーローという職業を夢見る少年はバカにされて悔しい思いをする。
そんな少年が、ナンバーワンの憧れのヒーローと出会い、助けられ、能力を授けられる。
能力をどのように使っていくのか精進しながら成長していく物語。
ここまでで四つの例を出した。あらすじや内容を読んで心当たりのある作品もあるあるだろう。
さて、ここの四つの例は視点キャラが二つに分類されるのたが、わかるだろうか。
A主人公が成り上がる物語
このパターンの視点キャラは目標を持っている。しかし、大抵は底辺に位置する立場に存在していて、目標を達成するためには最も遠い位置に存在していることが特徴。
困難な状況を、様々な人に助けられながら打開していって成長する様を記したもの。
視点キャラは主人公であることが多い。
例で上げるなら2と4である。
Bヒーローを見る視点キャラ
このパターンも視点キャラは現状に不満を持っている。しかし、自分の力ではどうにも出来ない状況であることが多い。
そんな視点キャラの前に突如表れた主人公が、ハチャメチャで常識外れなことをして驚かせる。
主人公の所業を見て勇気づけられ、視点キャラは現状を変える努力をするようになる。
例で上げるなら1と3である。
主人公が成り上がる話なら、読者にもわかりやすく、そして共感しやすい目標を立てておくことが重要だ。
人々から嫌われる少年が、みんなに認められたい。無個性でもトップヒーローになりたい。など、読んだ者が恐れるもの、読んだ者と似たような状況にあることが共感への近道だ。
そこからどんどん成り上がり、一人の少年は里の長となった。無個性の少年はヒーローとしての第一歩を踏み出した。と、視点キャラを主人公にした場合のAのパターンがこれだ。
そして、悩みを抱えている。現状に不満を持つ視点キャラが、輝くヒーローのことを知り、現状を変えるきっかけとなる。というのがBのパターン。
ヒーローと定義してるが、それはどんな小さなことでもよい。
例えるなら地味な少女が見つめるスポーツ少女。地味な少年が見つめる破天荒なバカ。など、要は普通の人間が憧れる人間、あるいは常識外れな人物を観察する物語のことを差している。ギャグマンガなどは大抵こちらのパターンといってもよい。
この場合の主人公とは、見つめられるキャラであることが多い。それでなければW主人公と名打ってもいいだろう。
さらにBのパターンでは、主人公の技術がほぼ完成されている時期から物語が開始されることが多い。
さて、AとBの視点キャラのパターンで共通することがいくつかあることを察してる者もいるだろう。
これがSTEP3の真骨頂。
これまでの話は前座、前提知識と言っても過言ではないほどの話をここからしていく。
この2つのパターン、改めて見てみると共通する事柄がある。
一つは視点キャラ、あるいは主人公が悩みを抱えていること。これはSTEP1にて解説してる為、割愛していく。
もうひとつの共通のパターンがこの定義には隠されている。
さて、考えていこう。
Aのパターンでは主人公が底辺、もしくは無力で無知識な状況から成り上がっている。
Bのパターンでは視点キャラが悩みのどん底にいる。
そう、どちらのパターンも主人公あるいは視点キャラが底辺にいることが伺える。
ではなぜどちらのパターンも底辺にいるシーンから始まるのか、考えてみよう。
とある漫画家の先生がこのようなことを発言している。
『食べること。それは全人類の本能で、美味しいものを求めるのは共通した願いである。マンガに必要なのはそういうこと』
内容は大分改変しているが、これが今回語る物語理論の本題である。
つまり視点キャラに求められるものとはこのことだ。
美味しいものを食べたい。それは全人類の願いであると言っても過言ではない。つまりこのことは全ての人間が共感できる目的であるということ。
しかし、世に出る物語全てが美味しいものを食べるための物語ではない。
これはその漫画家の先生が描いてる漫画を元に語られたものだ。
それをそれぞれの作品に当てはめるならこうなる。
『一般的に理解しやすい目的。それは全人類にわかる事柄で、共有できる感情である』
さて、一般的にわかりやすい目的とはなんだろう。
嫌われる少年が認められたいと願うこと。無個性の人間がヒーローになりたいと願うこと。亡くした恋人を生き返らせたいと悩む女性。素敵な願いを叶えてくれる道具を集めたいと願う少女。
それは誰もが一度は願ったことのある、もしくは願う可能性のあるものではないだろうか。
それは常識的な願いであるといってもいい。
つまり、視点キャラに求められるものは『常識的』であること。
無論、物語が進んで世界観、キャラ、その他設定を理解した段階で常識外の人間の視点にすることは有用だ。
例えるなら海賊王を目指す少年が、慕う兄を亡くして悲しむシーンなどがそれに当たる。
だが、初めから常識に当てはまらない人間が視点キャラになっても共感は得られない。
普段ハチャメチャな人間が序盤でいきなりシリアスな展開になっても読者はついていけなくなる。
つまりそういうことだ。
STEP3
視点キャラに求められるもの、それは常識的な考えの持ち主であること。
これは序盤での話であり、中盤に差し掛かって、設定を理解できるような状況に持ってきた段階で視点キャラを変えることは有用である。
次回の更新は物語の本質を解いていこう。
また、質問や解説してほしいものがあればコメント、もしくはTwitterにてリプライしてくれれば可能な限り対応していく。
それではまた、機会がある時にお会いしよう。
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