『物語の冒頭でいかに読者を引き込み読み続けていただくか』ということを勉強させていただく意味で、「第一章 オンエア①」まで拝読した時点でのレビューです。
セリフが少ない書き出しですけれども、「サバンナの風」という単語がぱっと目につくような文章の配置がなされており、興味を惹かれました。仮に冒頭から順を追わずスマホの画面を何気なくスクロールしていたとしてもこの単語に引っかかってまた冒頭に戻ってこの物語を読み続けようという動機付けとなるでしょう。そして、短い場面の中でキャラたちを本当に自然な形で紹介し、心理面での関係性まで描写されており素晴らしいと感じました。わたし自身が市民ランナーですので余計に興味を持った点もあります。
ただ、交響曲のすべてが序曲から一番キャッチーなフレーズが出てくる作品ばかりではないのと同様にこの小説の序章も静かで丁寧なスタートです。
私事で恐縮なのですけれども、わたしはある事情から本を買ったり図書館で借りたりすることができません。触れることができるのはネット小説だけですので、物語の冒頭でいかに爆発的に読者を引き込むかということの切実さを感じています。
この作品は小説冒頭の静けさと深さをも楽しむことのできる方に丁寧にお読みいただきたい作品です。そして、プロの作家の本に触れることのできないわたしが得たこの幸福な機会に感謝して丁寧に読み進めさせていただきたいと思います。
ミステリー好きならご存じ、湊かなえ先生の新作、「ブロードキャスト」が、何と、このカクヨムで掲載される事が決まりました。
湊先生の作品としては、「告白」や「夜行観覧車」など、映像化されているものも複数あるので、テレビなどでその作品を目にされた方も、割と多いのでは無いでしょうか?
本作「ブロードキャスト」は、既にハードカバーにて刊行された御本ですが、これからカクヨムにて連載されるとの事で、その内容に付いてはネタバレになる為、詳しくはここで書きません。
ですので、概要のみご紹介させて頂きたいと存じます。
本作は、中学生時代、陸上部の大会で惜敗した主人公、町田圭祐(まちだ けいすけ)が、その先で入学した高校である青海学院において、陸上部以外の場所に青春の活路を見出し、大々的に部活動に打ち込んで行くお話です。
若き高校生、町田が、青海学院高校にてどの様な活動をするのかは、是非、掲載される内容をご覧になって頂ければと思います。
以下、余り関係無い話をさせて頂きます。
私自身、湊先生が双葉社より刊行された「夜行観覧車」をハードカバーで持っているのですが、本作もドラマ化と同時に漫画化もされているので、ついでにご紹介したいと思います。
「夜行観覧車」ですが、その内容が大変面白いと言うだけで無く、ハードカバーの表紙を飾っている絵も、劇団イヌカレーなどで最近流行し出したアヴァンギャルドなテイストに仕上がっており、実に小粋です。
表紙にある絵は、一見、漆黒の背景に灯りがほんのりと点いた様な、幻想的で綺麗な絵なのですが、そこには意味深長な隠喩ないしは直喩が含まれており、読み進む度に、その各部が一体何を象徴しているのかと言う、絵の謎が解明されて行きます。
作中での視点移動が多く、不慣れな人には読み辛い事もあるかも知れませんが、それを上回る面白さがあり、かつ、先に紹介した表紙の部分でも、実に面白味がある御本です。
更に、湊先生のデビュー作である「告白」は、もう一人の著名なミステリー作家、宮部みゆき先生の作風にも通じる所があり、大変に評価が高い作品です。
ユーザー様各位におかれましては、本作「ブロードキャスト」のみならず、湊先生のそれらの作品も読まれては如何でしょうか。
以上、感激のあまり、関係無い話をして仕舞いました。
それでは、そんな大変なご活躍をされている、ミステリー作家、湊かなえ先生の新作、「ブロードキャスト」をお楽しみ下さい。
緻密な文章のつみかさねで、読みやすく、そしてまた、これはどうなのかな、という後ろ暗い気持ちを持たされる。
でもそれが小説作法上の負なのかも知れない。
時代の移り変わりとともに(などというと、随分歳とったおっさんみたいだけど、)表現の幅に、現実的なやりとりが付与されている場面がよく目につくようになった。あれです。梶井基次郎の檸檬の気持ちがわかっちゃうよ、というあれです。
スポーツって爽やかな反面、陰湿なイジメがあったり、近頃では指導という名の暴力の問題があがっていたりして、(僕の中で、)非常にタイムリーな気もする。いいね\(゜ロ\)(/ロ゜)/