第42話 勇姿99?
奥の部屋がお父さんの部屋みたいで、他の人の仕事場所とは違って個室になっている。
まるで社長の部屋みたいだなあ。
「ここが俺の仕事部屋だ」
部屋には机と椅子に棚、それに机の上にペンが置いてあるだけだった。
書類はあるにはあるけど、棚の中に入れられているから何か取ってある資料とか参考にする資料なのかもしれない。
「いつも何をしているの?」
「そうだなあ、アンディにとってここのお仕事は何だと思う?」
「えっと、何かの書類をまとめるとか?」
「正解だ。さっき見た通り、みんなは与えられた書類をまとめているんだ」
「じゃあお父さんも一緒なんだね」
「残念だが、半分あっていて半分間違っているよ」
半分正解で半分間違い?
どういうことなんだろう、合ってると思ったんだが。
「さっき与えられた書類と言っただろう?その与える人が俺なんだ」
「そうなの?でもそれって誰かにやっといてって言えば良いんじゃないかな?」
「まあそれでもいいんだが、それだと仕事ができる人とできない人がやると時間の差が生まれるからな。
簡単に言えば、この人はこの仕事に向いている、ということを見つけて仕事をやってもらうように言うのが俺の仕事なんだ」
確かに仕事ができる人とあまりできない人では差が出る。
この差を上手く使えば早く終わるし、下手に使えばただただ時間が伸びていく。
これを上手く分けると考えると、けっこう難しい仕事なんじゃないのかな。
本当に将来僕がなれるのだろうか。
「まあ、この仕事はそのうち慣れていくよ。さて、次何だが……」
そんなに簡単に言っちゃうの!?
一応スキルという便利なのがあるけどさ。
お父さんは部屋から出ると、外にいる一人に声をかけた。
「ザザン、ちょっと」
「どうしたんすか?まだ時間まであると思うんすけど」
「ああ、昨日言っていた件だが少し早くなってな」
「なるほど、了解っす」
「じゃあ頼んだぞ。アンディ、急で悪いがちょっと用事があるんだ。こいつに案内してもらってくれ」
そう言うとお父さんは本塔のほうへと歩いて行ってしまった。
「君がダルクさんの息子さんっすね」
「あ、はい。アンディって言います」
「俺はザザンっす。よろしくね」
何か気が抜けたような人なんだけど、大丈夫なのかなあ。
でもお父さんは信頼しているように話していたし。
護衛部隊だったら少し心配だな。
「じゃあ行くっすよ」
「えっ、どこに行くんですか?」
「君のお父さんのかっこいいところを見れる場所っすよ」
お父さんのかっこいいところ?
一体何だろうか気になる。
「アンディー!」
「エイミー、戻ってきたんだね」
「うん!パ…じゃなくてお父様とお母様は用事があってアンディの所に行っておいでだってさ!」
エイミーはザザンさんを見ると、わざわざパパママからお父様お母様へと言い換えていた。
僕たちの前ならいいけど、護衛部隊の人達がいる前ではお父様お母様で言っているんだね。
別に気にしなくてもいいと思うんだけどなあ。
「それじゃあお嬢様も一緒に行きましょうか」
「ザザン?また護衛のお仕事?」
「今日は違うっすよ。アンディ君の案内っす」
エイミーはザザンさんのことを知っているみたいだ。
「知り合いだったの?」
「知ってるよ!私の護衛をしてくれたのよ!」
「今はダルクさんの雑用になっちゃったすけどねー」
ん?ちょっと待てよ。
エイミーはこんなでも国王と王妃の娘、お姫様なんだ。
そのエイミーを護衛をするってことは、強いってことなんじゃ……。
「それじゃあ行くっすよー」
人は見た目によらないってことだろう。
適当そうな人な人でもお姫様を守るってことは強いんだろうなあ。
今は僕が守っている立場であるから、参考になるところがあったら参考にしよう。
僕たちはザザンさんについて行き、着いた場所は先ほど戦闘部隊の人達がいたところだった。
「何が始まるの?」
「簡単に言えば模擬戦っすね」
「「模擬戦?」」
「お嬢様は何回も見たじゃないっすか……」
模擬戦ということは戦うのかな?
お父さんは強いって言っていただけあって強いんだろうけど。
それがかっこいい姿なのだろうか。
「あ!お父様だ!」
エイミーが指をさす方には国王であり、エイミーのお父さんであるジャックさんがいた。
その隣にはオリヴィアさんもいた。
「何か大切な戦いなの?」
「そうっすね。ああして国王様に見せる必要があるんすよ」
「何でなのー?」
「守られる人は守る人が強くないとダメなんすよ。だから模擬戦をして強いってことをみせるんす」
なるほど、確かにそうだね。
弱い人に守られても意味がないからね。
「それだとザザンさんはどうなの?」
「俺っすか?俺もやるっすけど、ダルクさんと交換で見てくれと言われたんすよ」
それならわざわざザザンさんではなくて他の人に頼めばよかったのに。
いや、エイミーの護衛をしていたザザンさんだからお父さんはザザンさんにお願いしたんじゃないかな。
流石としか言いようがないよ。
「あ、始まるみたいだよー」
戦う場所には、お父さんともう1人の男の人がいた。
あの顔、どっかでみたことがあるような……。
「あの人は?」
「あの人はデルト・ブルー・エリクソンっていう人っすよ。戦闘部隊の隊長で、しかも自営業で成功をしている、いわゆる天才っすね」
「あの人が……」
ブレットに似ているから、見たことがあるような気がしたのか。
それでもブレットとは違い、威厳がある姿へと変わっている。
まさに戦士というにはふさわしい人だ。
ブレットも成長すればあんな風にかっこよくなるのかな?
それに対してお父さんは、いつもとは違って真剣な眼差しだった。
あんなお父さん、初めて見たかもしれない。
お父さん、負けないで……!
*
「ダルク、この前はブレットがすまなかったな」
「ケガをしたりしていたら怒っていたが、まあ気を付けてくれよ」
「もちろんだとも。だが、どうしても可愛い息子だから甘やかせてしまう」
「その気持ちはわかるぞ。俺もついつい甘やかせてしまうからな」
「まったく、お前の息子はどうしてあんなにも立派に育ったのやら」
デルトはアンディのほうへ目を向ける。
そこには楽しそうにエイミーと話しているアンディがいた。
「俺も不思議だよ。甘やかせたから我儘になるだろうと思ったんだが、そのようなことが全然ないんだ」
「羨ましい限りだ。本当にお前の息子なのか?」
「何を言うんだ、俺の自慢の息子だぞ。っと、もうそろそろ始めないとな」
「ああ、本気では戦えないが、負ける気はないぞ」
「俺もだ……!」
ダルクとデルトが持っていた剣は、大きな音を出してぶつかり合った。
スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます 銀狐 @Silver_Fox_K
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみますの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます