第41話 見学99?

「おはようございます。ダルクさん」

「ああ、おはよう」

「そちらの子供は?」

「俺の息子のアンディだ」

「始めまして。アンディと言います」


 今日はお父さんの仕事場であり、エイミーの実家でもあるダディス王国のお城へとやってきている。

 いわゆる職業見学というやつだ。


「…あれ?エイミーちゃんがいないんだが?」

「エイミーなら途中で『パパとママのところへ行ってくるー!』って言ってどっかに行っちゃったよ」

「それは早めに言って欲しかったよ……」


 止めるときにはもう走り出していたし、お父さんは別の人と話をしていたからね。

 どちらにせよ、元々帰省も兼ねての職場見学だったから言わないで置いた。


「これからどこに行くの?」

「護衛部隊の所、と言いたいが行く途中に戦闘部隊の場所があるから覗いてみようか」


 戦闘部隊と言うとあのブレットのお父さんがまとめている部隊なんだっけ。

 正直争いごとは好きじゃないから興味が出ないけど、もし魔法があるなら見てみたいかな。

 まだどういう魔法があるのか全然分からないから参考程度によさそうだ。


「あれ、アンディくんじゃないか」

「デトラーさん」


 なんでこんなところに、と思ったけどそりゃあそうだよね。

 何せダディス王国専属魔法学者なんだからいて普通なんだから。

 どちらかと言うと僕がいるのが不思議なぐらいだし。


「今日はカラリアちゃんいないのかい?」

「残念だがアンリと一緒にいる」

「…気のせいなのか、俺に極力合わせないようにしていない?」

「お前に合わせるとまたあの話ばっかりさせるからな。今は普通の勉強をさせている」


 お母さんと一緒ということは恐らくお話をしているか遊んでいるかのどちらかだと思うよ。

 お母さんは息子と娘にはめちゃくちゃ優しいからね。

 もちろん僕も一緒にいるときは甘やかせてもらっているけど。


「っと、俺はもう先に行くよ」

「まだ解決していないんだっけか?」

「そうだよ。またこれからテスト飛行だからね。バイバイ、2人とも」


 忙しそうに小走りで行ってしまった。

 家に来た時と飛行船に乗っていた時はゆっくりしていたのに、お城にいるときはこんなにも忙しそうなんだなあ。

 やっぱり仕事に就くなら楽であわよくば給料が高いところがいいよね。


「それじゃあ行こうか」

「うん」


 お城なだけあってやたら広く、移動が多くなっている。

 大きくさせて見栄を張るのもあるが、分かりにくくさせて防衛に使えるということを考えればちょうどいいのかもしれない。

 ちなみに僕たちが目指しているのは別塔があるところ。

 今は渡り廊下を渡っている。


「アンディ、下を見てごらん」


 渡り廊下の途中で止まると下を見るように言われた。

 見てみるとたくさんの人が刃を潰した剣を握っている。


「あれが戦闘部隊だ」

「みんな笑っているね」

「戦争なんてもう起きないからな。ああやってみんなリラックスしてやっているんだ」

「でもそうなるとサボりって思われるんじゃない?」

「そうだな。でもな――」


 すると下で集合の合図が出た。

 特訓していた人たちは一斉に集まると門へのほうへ向かい始めた。


「どこかに行くの?」

「町へ出て、みんなで町の人達の手伝いに行くんだ。この前行ったときに見なかったか?」

「うーん……。分からなかったなあ」

「まあ手伝う場所に着くと着替えてしまうからな。分かりづらいだろうけど、ああしてしっかりと給料に見合った仕事をしているんだ」


 確かに何人か見たことがあるような人がいる…かもしれない。

 わざわざ戦闘訓練をしてみんなの手伝いをするのは大変だろう。

 こういう人たちがまさに国を守っていくんだな。


「あれ?でもお父さんの部隊って……」

「護衛部隊だが、もちろん他に仕事がある。じゃあ行こうか」


 再度歩き始めて別塔の中へ。

 中に入るとまず目に入ったのが入り口にあるたくさんの木の板だ。

 しかも木の板の上には名前があり、よく見ると木の板は別々の色をしている。


「これは何なの?」

「おっ、いいところに目を付けたな。これは誰がどこにいるか分かるようにしている木の板なんだ。例えば――」


 緑色はこの塔にいる、黄色は本塔という国王がいる塔にいて、赤は外出をしていることになっている。

 ちなみに休みの場合は板自体置かないから分かりやすかった。

 この世界だと機械がないからこういう確認の仕方があるのか。

 これこそ魔法で何とかできないのかな?


「でもこんなに多かったら分かりにくいね」

「最初はそうだが、慣れてしまうとすぐに見つけられるものだぞ」


 図書館にある本の場所が大体わかるあれか。

 あ、やっとお父さんの板を見つけた。

 今は黄色になっているから本塔にいたことになっているのか。

 そう考えていると、お父さんは黄色い板を取り出して緑色の板をはめた。


「めんどうだが、こうしないとみんながどこにいるか分からないからな」

「広いから仕方ないよね」

「まあそういうことだ。まだこの木の板がなかったときは1日中探し回っても見つからない、なんてこともあったぐらいだからな」


 それはなんという地獄なんだろうか。

 もしかして探す人と探される人がぐるぐる回っていたんじゃないのかな?

 そうなる前に置手紙とか書けばよかったのにね。


「ダルクさん!やっと戻ってきたんですね!」

「待っていましたよー。はいこれ、昨日言われていたやつです」

「……うん、よくできているよ。助かる」

「ではこのまま通しますね」


 後から入ってきた人がお父さんに書類の確認をしてもらうと、すぐに中へと入っていった。


「忙しいの?」

「普段はそんなに忙しいわけではニアが、今日はアンディの案内をするために俺の分をやってもらっているからな。いつもより少し多くなってしまったんだ」

「ん?もしかして僕を誘ったのはサボるため――」

「さあ、中に入ろうか」


 言葉を遮るようにして中へと入っていった。

 ねえねえ、本当に将来のために案内してくれているの?

 何かサボりの手伝いをしているみたいで少し気になるんだけど。

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