ハリキリゆびきりゆびのみゲンマン

伏潮朱遺

第1話 親塊そっこで添う肉離れ

      0


 ゆびきりげんまんうそついたらはりせんぼんのますゆびきった。

 ゲンマン。

「て言ったの?」

「え、そうゆう話ですっけ」秘書が言う。「勝手にゆびきりさせられて約束守らないとってやつじゃ」

「それ、出処は」

「はいはい先生。能があるのも鷹なのもじゅーじゅーわかってますから」

 ネットか。

 他にない。彼女の行動範囲からいって。

 しかし、情報源が知りたくて質問したわけではなくて。

「どうなの君は」

「それは、まあ、体験できるものなら」秘書が言う。

「指持ってかれるかもしれなくても?」

「だって平気なんですよね?」

 ゲンマンと言えば。

「どこまで本当かわからないけどね」

「とか仰りつつも先生だって興味がおありでしょうに。このこの」

 肩をつつかれる。

 僕の立場と彼女の立場を考慮せずともやっぱり失礼に当たるのでは、と思ってしまったその時点で、僕との面談を諦めてほしい。

 出直してきたまえ。

 時間を戻して一昨日来るといい。きっと暇を持て余しているから。





 第1章 シンカイ、ソ、ニクバナ



      1


 探偵だろ。

 いちいち訂正するのもうんざりだ。生きてる限りこれを言われ続けなきゃならないならいっそ死んだほうが。マシかどうかは死んでみなきゃわからないか。

「ケーサツに言ったほうが」

「どちらがいいかは俺が決める」偉そうに。実際偉いのだとは思うが。

 社長。

 ほうじ茶をゆでこぼしたみたいな色の髪。室内だというのにサングラス。相当に色の濃い。無駄に高価そうなスーツの上下。全世界は俺のものだといわんばかりに脚を組む。

「じゃあ提案で」

「君に頼んだほうが有益だと判断した」社長が言う。

「主語は」

「俺以外に誰がいる」どんだけ偉いんだお前は。「いいか。二択じゃない。話はついてるんだ」

「誰と」一応訊いた。わかってた。

「無益な質問はこれくらいにしてもらいたい。報酬は既に君の」

 なんで俺の口座番号を知ってるんだ。

 二択じゃない。これも。

 あいつしかいない。俺の個人情報を垂れ流す奴は。

「どこに」

 轟音。主に空の方向から。

「あと七分で到着する。ロビィでこれを持って」

 突っ立ってろと。

 いまどき待ち合わせに目印なんか使うか。ケータイ番号を教えてくれれば。

「必要ないだろ。これから付きっ切りになるんだから」

 俺だけ降ろされた。俺を降ろすためにわざわざここに寄ったのだ。車は清々しいくらい躊躇いなく発進する。

 受け取らされた名刺を空に透かす。轟音の正体が隠れる。一瞬。

 まずい。あれかもしれない。

 クライアントを待たせるの云々ではなくて、向こうに見つけてもらわないと。俺は護衛対象の顔も名前も知らされてない。

 護衛なんかどうやるんだ。そもそも探偵というのは何をする職業なのだろう。探偵じゃないからちっともわからない。護衛のやり方だって同様のことで。

 エレベータで上がったフロアの中央に、待ちぼうけ用のソファがあった。カバンを抱きかかえて眠りこけるサラリーマン。ぽかんと口を開けたままコンビニの出入り口を見つめる少女。母親が買い物をしているのだろう。一番大事なものを置き去りにして。

 国際便なのか国内便なのかすら聞いてなかったことに気づく。しまった。出口が違うらしい。仕方がないので、両者が交わる位置に。例のこれを持って。

 そこまでして自社商品の宣伝をしたいのかあの強欲社長は。サンドウィッチマンと大差ない。むしろそのものだ。

 じろじろ見られる視線はさほど気にならない。どうぞ思う存分見ていってほしい。対象ならさっさと発見して近づいてくれ。恥ずかしいも疲れたも吹っ飛んでる。どっちかと言わなくてもひたすらに眠い。こんなことなら待ちぼうけ用ソファにすべきだったか。目標が俺を探し当てて声を掛けてくれればそれまで寝てたって。

 向こうは知ってるのだろうか。知らないかもしれない。互いに知らないのか。どうやって出会えと。ああそうか。だからこれを持ってるわけか。

 まだか。いい加減瞼が蓋を。

 二秒くらい眠ってた。

「出たのか」手元を覗き込んでる黒い頭が言う。

 俺より背が低い。ニンゲンのほうが圧倒的に多いのだが。

「いつ出たのかと聞いている」

「なにが」

 睨まれた。黒い眼の。その年代にしては落ち着いた身なりの。

 大きな荷物を持ってなかったので近場からの帰省かもしれない。

「見せろ」

 言われるままにほいほい手渡したが。

「幾らだ」

「書いてあるんじゃ」

「そうじゃない。受け取ったんじゃないのか」

 ああそうか。

 彼が。

 護衛対象。

「その倍出すから帰れ」

「といわれても」

 流れ上契約したことにはなっているが、やる気はないし。あったとしてもそれは。

 なんだろう。

 のんき?

「断ったんだ。そんなことをする意味はない」

「どうして」

「大方無理矢理カネだけ振り込まれて俺の帰国ついでに四六時中貼り付けって言われたんだろう。その餌持たされて。何か違ってるか」

「餌?」

「俺が一番欲しかったものだ。もらえないか」

 これの処分について指示は出てないから。

「どーぞ」

「ありがとう」

 フランスから帰国したばかりだとかで、時差ぼけの心配をしたら、そんなに柔じゃないと一蹴。その割に、電車のシートに着くなり寝息が聞こえた。起こそうにも、どの駅で起こせばいいのか聞きそびれた。タクシーにすればよかったか。

 海が見える。濁った色の。白い煙がもくもくと。後ろのシートにいる女性が流暢に車窓の解説をしてくれるので、睡眠妨害にはちょうどよかった。ここは昔別荘地で、とか工業地帯で有名な企業がいくつもあって、とか。傍らにいる息子に聞かせているようだったが、その息子の静かにしてほしいんだけど、の一言で、ぱったり黙ってしまった。

 なんてことをしてくれるんだ。俺が寝たら誰が。

 二時間くらい眠ってた。


      2


 ただでさえ立て込んでいるというのに誰だ。どうせ龍華タチハナ経由の怪しい伝手だろう。

 見るからに怪しい。

 白髪交じりだが頭髪量はさほど衰えていない。猫背の眼鏡の無精髭。全世界に嫌気が差してるといわんばかりの眼差し。

「といいますと?」私は、精一杯口調を穏やかに努めた。いい加減限界だ。

「ですからね、私は命を狙われていましてね、はい。末恐ろしくておちおち出勤もできないのですよ。あなた方、そうゆうのご専門でしょう。実を言いますとね、私はあなた方の組織に一度、ああいいえ二度でしたかね、三度かもしれませんね、まあそう少なくない数失望させられてましてね。この度もそれはそれは迷いに惑ったんですよ、ええ。しかしねえ何もせずにずっぷり殺されてしまうよりはね、建設的な選択のような気が掠めたのですよ悪夢でしょうねえ。それで、ええっと、しぶしぶ重い腰を上げて」

 いいから簡潔に要約しろ。と眼を遣った先で逸らされる。

 お前が連れてきたんだろうが龍華。

 小柄で低姿勢を装ってはいるが、虎視眈々と何かを狙ってる。誰もが思わず微笑み返すその嘘くさい微笑の下に隠してる。なんだ?俺の転覆か?

「具体的に、命を狙われているという証拠などは」

「おや、信じてもらえていないようですね。はあ、これだからあなた方の組織は。またも私を失望させてぽいですよ、ええ。ほんとにまったくねえ。あなたが責任者だと伺いましたよ、ははは。勘違いされますとね、困りますから断っておきますが、決してあなたの外見だとか方法論だとかに笑いを催したのではないのですよ、ええ、断じてね。ほら、追い詰められると笑うしかないでしょう、はははは。お気になさらず」

 摘み出せ。と眼を遣った先はモニタと睨めっこ。

 こっちを見ろ。

 見た目は完全に新人だが、中身はその域を超えてる。能力の高さは認める。が、上司の俺への態度がまるでなってない。

 龍華はお得意の、一般市民の目線に下りた親切さを前面に押し出して。「脅迫の手紙やメールなどを受け取っていませんか」

 ねえよ。狂言なんだから。

 第一あったらとっくに。

「はいはい、こちらに。どうぞご覧に」

 私は思わず立ち上がった。怒りのエネルギィを天井に吸収してもらおうと思ったのだ。近づけばそれだけ速く。

「それを最初に」

「ものには手順というものがありますでしょう、はあ。嫌ですねせっかちな方は」

 龍華が独占してるので引っ手繰った。どうせ入力済みだ。


  Carver

 Doctor

 Emperor

 Finger

 Guard

 Actor

 Her Bystander


 A4一枚。横書き。印字。

「これがですね、二週間ほど前でしょうかねえ、ポストに」

「二週間も放っといたのか」

「ですからね、人の話は聴いていただかないと。はあ、喋り損ですよ。私ねえ、喋るの苦手でして、話すのも出来る限り遠慮したいといいますか、ええ。善良な市民の話を聞くのもあなた方の。協力しないとしないで公務が執行の妨害だとか言ってねえ。都合のいいときだけ無理繰りあることないことべらべら喋らせて。来たの間違いでしたねえ。はははは、私の命ももはやこれまでと諦めるのが吉か凶か」

 黙らせろ。と眼を遣った先は無人で。

 おい、どこ行きやがった。いつの間に。

 この部屋出るには俺の横通って。

「あの優秀そうな方ならね、まあその、早速解析だとか。頼もしい限りですねえ、ええ。私の寿命もねえ、彼の両肩に懸かっているといっても過言ではないといいますか言い過ぎといいますか」

「差出人に心当たりは」

「あるからこうしてね、遥々こんな陰険な巣窟に出向いたわけでしてねえ。その、同居人ですよ」

 妻か。

「アトリエというんですか、はい、そちらに篭りっきりで最近めっきり帰ってこなくなりましたが。音信もどちらかと言えばねえ、不通でして。私もどちらかと言えば多忙な身でして。今日もねえ、少ない休日返上してやっとこさの」

 痴話喧嘩か。

「出向く部署を間違ってるんじゃないか」

 追い返せ。と怒鳴ろうとしたところで龍華が戻ってくる。

 A4サイズの紙を俺とそいつに手渡して。

「意味はおそらくこんなところかと」


  Carver  彫刻家

 Doctor  医師

 Emperor 皇帝

 Finger  指

 Guard  守衛

 Actor   俳優

 Her Bystander 彼女の(?)傍観者


「なんだこの(?)てのは」

「これだけ異質だと思いませんか。他は単語一つなのに」龍華が指でつんつんと紙をつつく。

「送り主に訊け」

「どうしてこれが同居されてる方からだと?」

 そうだとしたら自作自演もいいところだ。

 言ってやれ龍華。そして追い返せ。

「こんな妙ちくりんな行ないをされるのは、あの方くらいだと、ええ」

「証拠は」見せてみろ。ないくせに。

「ああ、証拠証拠と。どうぞ訊いてきてください、多忙な私の代理でね」

 自分で行けよ。と睨んでみたが龍華が勝手に。

「行かないからな」

「よく見てください。四つ目です」

 指。

「これが?」

 まさか。

 いや、偶然だろう。

「先生の同棲されてる方は」龍華が入力の手を止めて聞く。

 彫刻家。

「自称ですよ、ははは。完全な悪趣味でしてね」

 先生? 待て。

「失礼だが」

「職質ですかね。はあ、ならば答えるほかありませんねえ。正直に嘘偽りなく包み隠さず申しますと」

 医師。

「おい、じゃあ他は」

「結論を急がないほうが得策かと」龍華が言う。

 そんな暢気なこと言ってられるか。

「行くぞ。どこだ」

「ああ、忘れていましたけどねえ、大したことないんですよ。今の今まですっかり忘れてたくらいなんですから、どうでもいいことですよ、はい。同居人は、あの、ええと、なんといいますか」

 指を。

 作る。

 別れ際に見た医者のツラが笑顔だったと気づくのにだいぶ時間を要した。


      3


 ざまあと笑い飛ばすには気の毒な背中で。声も掛けづらい。

 かといって協力してやる気は毛頭ない。それが鬼立キリュウの仕事だ。頼まれたって願い下げ。これ以上面倒ごとには関わりたくない。

 と切り捨てるにしたって、無視できないような殺され方だし。

 たぶん、俺は。

 関係者だ。

「で、どうしたって?」

 そんな。待ってました、みたいな顔で振り返るな。

 してやられた。

 季節がなんであろうと常に上下真っ黒を着込んでいる。暑苦しい。唯一秋冬にコートが付け加わるくらいだが、それでも黒尽くめなのか変わらない。むしろ拍車をかけている。その服しか持っていないのか黒が好きなのかは知ったこっちゃない。

 初対面だと銀縁の眼鏡からのぞく鋭い眼に気おされがちだが、少し立ち入ってみるととんでもない。

 ただの正義バカ一代。奴の頭にはそれしかない。

「二人ともピアニストってのは知ってるだろ」鬼立は手帳も見ずにすらすらと。仕事熱心なことで。「一人目は小指、二人目は薬指を切られてる。左手のな。次は中指か?」

「ちょっとばかし休んだほうがいいんじゃねえの? 隈できてっぞ」遠回しに関わりたくないと言ったつもりだったが。

「一人目が先週の月曜、二人目が火曜」

 通じやしない。

「おとといか」

「その法則で来ると、三人目は来週の水曜ってことになる。もう一週間しか」鬼立はそこで項垂れる。未然に防ごうとかケーサツにあるまじきことを仕出かそうとしてる。

「三人目が出るってわかったわけじゃねんだろ? 予告状でも届いてんのかよ」

「どう思う?」

「一人だけ心当たりがねえことも」

 指切り落として喜びそうな。

「誰だ」鬼立が言う。

「知ってっだろ」

「彼女なのか」

「違うんじゃね?」

 第一、

 彼女。

 じゃねえし。

「なんでそう言い切れる?」鬼立が言う。

「あいつなら、んなまどろっこしいことしねえで全部持ってくよ」一本ずつなんて。「無理じゃね? 三人目出てっから」

「出ると思うか?」鬼立の視線が俺の左手で留まる。

 わかってる。

 左手の中指で思いつくのは。

「切ってから」殺されている。

 犯人の手口。

「んじゃ、あと殺すだけだな」

 なんだその眼は。

「柄にもねえ」

「来週の水曜はどこも出掛けるなよ」鬼立が言う。

「なんなら本部で缶詰るか」遠回しに協力してやると言ってないだろうか。「ちょい待て。二人とも」

 ピアニスト。

「俺関係なくね?」

「万一のことがある。ここから変わるかもしれない」

「せっかく軌道に乗り始めるってのに壊すかあ?」

 俺なら壊さないが。

 まだ、という但し書き付だが。

「他に共通点は?被害者絞れるかもしんねえし」

「指も公にしてないからな」鬼立が言う。

「バラさねえよ。考えてみろ、言う相手」

 鬼立は一瞬訝しい顔を見せたが。

「同じ会社と契約してる」

「どこだよ」

「企業テロの可能性も」

「ねえよ。社員ならともかく」

 ったく、出身がそっちだからすぐそっちに頭が回る。

「契約してるピアニスト全員に護衛をつけるそうだ」鬼立が言う。

「ほお、随分とお盛んじゃねえの」

「俺の仕事だよ」鬼立が言う。

 あーなるほど。

 それで項垂れてたのか。犯人の目星がどうとかじゃなく。

「ごくろーさん」

「手伝えよ」鬼立が言う。

「生憎と俺の専門じゃねんでな」

「じゃあ専門を協力しろ」

「それとこれとは」面倒くさい。

「死なれたら困るんだ」鬼立が言う。

「葬式しなきゃなんねえしな。このクソ忙しい最中に」

 否定しろ。そうすれば塞いでやれるのに。

 呼び出しが来るまで休んでいればいいものを。

「んで?どこのピアニストさんを護衛すんだって?」

「協力するか?」鬼立が言う。

「いーや。頑張れ」

 ちょうどいいタイミングで着信。

 これ以上鬼立と話してると流されそうだったが、こっちと話してても同じ結果になりそうだった。

 龍華。鬼立の部下の。

「お久しぶりです。探偵さん」

 だ

 か

 ら

「探偵じゃねっての」

「いるんですか?」上司のことだ。

「さっさと呼び戻せよ。しっつけえのなんのって」

「用件が済み次第連れ戻します。来客の応対もしてもらわないと」

「いろいろ大変だな。有能なボスを持つと」

「聞こえますよ。すぐそこにいらっしゃるんでしょう?」

 確かにすぐそこにいるが。

 聞こえてない。

 熱中しすぎてオーヴァヒート寸前。眼ェ血走ってるぞ。

「手短に頼まあ」

「精神科医と聞いて誰が思い浮かびますか」龍華が言う。

 条件反射で舌打ちをしてしまった。

 聞こえただろう。

「いい思い出はねえわな。つーかあいつ」

「ご存命ですよ。お変わりないご様子で。あ、一つ変更点が」

 同居人。

「探偵さんのご友人だとかで」龍華が言う。

「どこまで調べやがった」

「そうですね。彼女が重要参考人というところまで」

 だから、

 彼女。じゃねえっての。

「しょっぴくのか」

「対応次第ですかね」龍華が言う。

「わざわざ俺に言いやがって。逃がしちまうぞ」

「彼女ではないんでしょう?」

「どっちの」

 さすがは龍華。勘付いたか。

「彼女が犯人ではない、という意味です」龍華が言う。「ああ、いま気がつきました。失言でしたね」

 一応、確認。

 大丈夫。

 鬼立は、視野狭窄最高潮。

「お願いできますか」龍華が言う。

「んなこと俺に云わねえで直接」

 鬼立上司殿に言ってやれよ。

「僕が云って信憑性がありますか。探偵さんなら容易に想像がつくはずです。いまのボスは疑わしきも罰する、白も灰色も真っ黒に。取り返しが付くうちに」

「マジで優秀な部下だな、お前」

「お褒めに預かり光栄です」

 見す見すあいつを鬼立に拷問させるのも忍びない。哀れで仕方ない。

 無意味な誤認逮捕だってのに。

 誤認だと気づいたらクビでも吊りかねない。二度目はない。一回島流しに遭ってる。俺のせいだということにしてるが。本当は。

「これでも罪悪感あるんですよ」龍華が言う。

 こいつのせいだ。

「にやけてんぞ」

「いい眼をお持ちですね」

「わーった。ゆってみる」

 ただでさえ上からも下からも孤立してるってのに。

「お手間掛けます」龍華が言う。

「逃げるかどうかは知らねえからな。それはあいつが決めるこった」

「承知してます。ああよかった。また探偵さんと共同戦線が張れそうで」

「調子ん乗んな」

 そうと決まれば。

「やる気になったんだな」鬼立が復活した。というよりただ目敏いだけか。

 俺が上体起こしたくらいで。

「野暮用」

 食い下がらなかったのは、なんか。

 摑んだ。

 ああそうか。誤認逮捕の足掛かり。

 誰か教えてやれって。

 こちらからの連絡手段は皆無。向こうからはテレパシィ。勝手にアタマん中入ってくる。双方向になればこんなご足労。

 虫の報せで、愛の巣には寄らなかった。車がないとアクセス悪すぎる。免許ないし。車輪の付いてる乗り物がどうも好かない。宙に浮く移動用の乗り物の開発をさっさと進めてもらえないものか。

「無理だよ」

 ほら。噂をすれば。

「入っていいか」

 家に? 病室に?

「着替え中」

「見られて困るようなもんもねえだろ」

「先生以外には見せたくないんだけどなあ」

「お前か」

「違います」

「えんでと話したい」

「いいよ」

 生きてたのか。生き返ったのか。

「どーでもいいじゃん。ここにいれば」

「逃げろってさ」

「行く当てもないよ」

 轟音。指す。

 空を移動する乗り物が通りすぎる。

「自己証明が鬱陶しい」

「お前じゃねんだろ?」

「心当たりがないこともない」

「そいつか」

「僕に会いたくてやってるようにしか思えない」

 逃げるわけに。

「いかねえか」

「僕が出てっても出てかなくてもあと五本は犠牲になる」

「んじゃ逃げとけよ。他でもねえ国家権力がいいっつってんだ」

「邪魔しないよ」

「野放しにするってか」

「そうじゃない。せっかくの共同戦線だ」

「盗聴すんな」

「幻聴だよ」

 お前にからかわれたら終わりだ。

「近々そうなる」

 着信。

 予知もできるとは。いやはや。

「はあ?」

 鬼立からだった。

「社長直々のご指名だ。探偵」

 だ、か、ら。

 探偵じゃねえんだよ俺は。


      4


 探偵の仕業に違いない。

 なんで。

「いないんだ」

「留守じゃないんですか」龍華はやけに涼しい顔で。

「留守の理由は」

 無駄に寒い。世間は春だというのに、ここは。知らないのではないだろうか。

 誰か教えてやってくれ。

 完璧に管轄外の。雪がごっそり残る山道を延々。全身に寒気がする。

 カネ道楽たちの別荘地。

 玄関は施錠。礼状も何もないので。踏み込む理由はたったいま見失った。窓も凍ってる。

「いたっていう形跡がありませんね」龍華が言う。

 空調の室外機が雪に埋もれている。玄関ドアの鍵穴が錆びて。

 最近どころか。

「ここ何年も」

「謀られたんですかねえ」龍華が言う。

「俺に訊くな」

 メータを確認するまでもない。電気もガスも止まっている。

 龍華が外の水道の蛇口を壊した。捻りすぎて。

「駄目ですね、これ」

 廃屋だ。ウッドデッキの手すりにもたれたら、みしみしと嫌な音がした。

「どうするんだ」

「どうしますかね」龍華が言う。

「捜せと言ってるんだ」

 車に戻って暖房のつまみを最大にする。顔だけやたらに熱い。

 着信はなかった。

「訊いてみては?」龍華が両手を温風の吹出し口にかざす。

「お前か」

「なにがです?」

 知らないところでこそこそ。裏で手引きして。やる気なのか惰性なのかどっちでもいいが、探偵が動いている。これは喜ばしいことなのだが。

「俺に隠してることがないか」

「来週から監視が付くそうですよ」龍華が言う。

「誰に」

 にっこり。笑うな。

 俺はその笑いが嫌いなんだ。

「良かったじゃないですか。すっごく美人らしいですよ」

「お前がだろ」

 そんな話は聞いてない。

 どうして部下の龍華に知らされてて、上司の俺は何も知らないんだ。上が束になって俺の出世を阻んでいるとしか。左遷されたのだってそうだ。あの事件がなかったら俺はとっくに。

 ハイウェイに乗った辺りから記憶が途切れ途切れで。眠っていたのかもしれないが、龍華が何も言わないので自分から持ち出すのはやめる。寝不足なのも疲労が限界を超えてるのも。

「怨まないでくださいよ」龍華が言う。

「要は信用されてないんだろ」眼を開けるのが億劫だ。

「僕には独自の情報入手ルートがあるんです。ですから警部が知らなくてもなんらおかしいことはありません」

「なんで監視が付く?」

「美人ですから」

「答えになってない」

 桜がちらほら咲き始めている。公園には気の早い花見客が。黄色い帽子の団体が列を成して。

 やはりあの場所だけ忘れられてるのだ。

 誰も教えてやらないから。もう春だと。知らないからいつまで経っても雪が溶けないし冬が居座る。

 着信はない。掛けたところで繋がらない。

「なんで指なんか切るんですかね」龍華が言う。

「切りたいからだろ」

「起きてます?」

 殺す前に切る理由。

「切るだけならまだ、わかんなくもないんですけどね」龍華が言う。

「わかって堪るか」

「そうやって思考を拒絶するの、悪い癖ですよ」

「殺人鬼の気持ちになれってか」

「そういう意味じゃなくてですね。同情しろとか共感しろとか言ってるんじゃないんですよ。そこはっきりさせときますけどね。理解も了解も不可能ですから。ただ、仕組みとか手順とか、そうゆう方向からのアプローチもあるってだけです」

「それで?その方向のアプローチとやらからすると」

「いちいち棘がありますね」龍華が言う。「犯人は殺すために切ったんじゃなくて、切って要らなくなったから殺したのではないかと」

 本部に戻ると早速、呼び出しを食らった。

 無断で管轄外に繰り出したのは悪いのか悪くないのかと問われれば。

「他に有力な手掛かりがありますか」

「そうゆうことを言っとるんじゃない。君に与えられた役割はだね」

 探偵の手綱を握って、如何に上下左右に振られようとも決して。

「離してません。リードが長いだけで」

「ただでさえ人員が割かれとるんだ。身勝手な行動をされるとだね」

「代わりましょうか。代われるのなら」

 護衛なんざ俺の仕事じゃない。

 いつも買ってるコーヒーが売り切れだったので、その隣のやつで我慢した。が、味の違いがわからない。相当限界かもしれない。

 眼も霞む。レンズが曇ってることにも気づかない。外してようやく気づく。

 あの医者が怪しい。他に何か重要なことを隠している。それを探られまいと先手を打ったのだ。

 じゃあ何を隠したい?

 俺に知られると困ること。

 護衛。命を狙われてる。殺されたくない。のならもっと切羽詰っていても。

 結局護衛の件は有耶無耶のまま。帰った? 

 仕方なく。納得して。

 護ってほしいの主語が。

 医者じゃないとしたら。

 妻。と言わなかったのは何故か。書類云々。内縁の。単なる同棲。

「婚姻関係にはないですね」龍華がちゃっかり調べていた。

 件の胡散臭い医者は、その歳にしては白髪が目立つ。精神科医。離婚歴あり。

「離婚? じゃあその同居とやらは」

「それがわからないんですよ。同一世帯でなくて単なる居候なので」

「近所は。見てないのか」

「離婚する前の同居人、つまりは彼の前妻ですが、その方なら」

「任せる」

「あれ。行かないんですか?」龍華が言う。

「俺が出向くまでもないだろ」眼を瞑って追い払う。

 着信。

 跳ね起きる。絶対に探偵からだ。

「はあ?」

「悪い」探偵がふてぶてしく言う。

 見失った?例のフランス帰りのピアニストを。

 悪いで済むか。

「いま」どこにいるのか。

 空港最寄り駅のあるラインの終点。

「寝る奴がどこに」

「だから悪いっつってだろ。番号聞いてねえか」

「知るわけがない」

「んじゃ調べろよ。いんだろそこに」龍華のことだ。

「残念だが入れ違いだ」

「ったくクソの役にも立たねえ」探偵が吐き捨てる。

「そっくりそのまま返してやる」

 ふと見ると。デスクに見覚えのある。

 いつも飲んでるパッケージ。

 売り切れだったはずでは。

 爪の根元。つやつやしている。

「お好きでしたよね」

 美人といえば美人かもしれないが美人かどうかの基準がわかりかねる。

 ショートカットの、スレンダの、眼の大きい。

 来週じゃなかったのか。

「代わってください。きっとお役に立てます」彼女は自信満々に微笑んだ。


      5


「お話できて光栄です」

 探偵さん。

 訂正が面倒なのと急いでるのとで身分は聞かないで置いてやる。

 女。

「そこで踏ん反り返ってる警部殿よりゃ役に立てるって?」

「メモはよろしいですか」

「憶える」

 たかが十一桁。最初の三桁はおまけみたいなもんだし。

「助かった」

「お困りの際はいつでもどうぞ」

 切って。掛ける。

 出ろ。

 出た。

「どこにいる」

「帰れと言ったはずだ」護衛対象が言う。

 こいつ、わざと置いてったな。

「どこにいる?」

「得意分野だろ」護衛対象が言う。

 探偵。

 じゃないんだがな。

「ヒントは」

「俺の帰国理由」

 物言いがどこぞの誰かにそっくりで頭痛が痛い。

 ピアニストということは。

 公演。自分、他人。

 考えるより調べさせたほうが早い。

「運転中なんですけど」こうゆうときは龍華に限る。知らないことまで知ってる。

「停めろ」

「停めましたよ。ちょっと待ってくださいね。ああ、ありました。中榧ナカヤともる。輝かしい経歴の持ち主ですね。ジュニアコンクールで日本一、世界一獲ってますよ。フランス留学。その後の受賞歴は省略しますね。CDも出してるみたいですね。契約会社が」

 あの暴君社長のとこ。

「どう思う」

「来月に単独リサイタルがありますね。そのために戻ったとしたら」

 本社に顔を出すか。

「他は」

「彼が尊敬するピアニストがいるみたいでして。その方のリサイタルが来週の」

 水曜。

 水曜?

「なんでそんな日」

「祝日だからじゃないですか」

 そうじゃない。水曜?

 左中指の予定日。

「もしや、とは思いますけど」龍華が言う。

「その尊敬するピアニストとやらの」

 暴君社長に訊いたほうが早いか。訊きたくもないが。

 一応連絡すると。

「問題ない」ほらこの態度だ。「君の有能な知り合いに頼んである。そんなことより君の仕事はどうした。彼を一人にするなと」

 なんでバレた。チクられたか。

「いま」彼はどこにいるのか。

「教えるほど暇じゃないんでな」じゃあ電話出るなよ社長さんよ。「何故君に護衛を任せたのかわからないか」

「カネづる」

「理解が早くて好ましい。彼を失うわけにいかないんだ」

 カネの亡者。

「早急に捜せ。もしもの事を」社長が言う。

「無事だ」

 来週になってない。法則はまだ崩れない。

 崩したくなくて法則を作るのだ。

 崩したくなるのはもっと登り詰めてから。

「社長の眼の前にいる彼は土産を持ってきませんでしたか」

「無駄な気遣いをしないところが気に入っている」社長が言う。

 タヌキめ。髪の色がちょうどそんなだ。

 急いだところで社長の思う壺。電車で本社の最寄駅まで。そこからタクシーを拾うのも癪なので歩くことにした。

 嫌でも眼につく。絶対に迷わない。社員用にわざわざ造らせた駅なのだ。

 一本道。通りも一角もこの会社のお膝元。馬鹿でかいビルを造るような企業に碌なのはいない。

 スクランブルの横断歩道。赤で足止めされると見ざるを得ない巨大モニタ。自社契約アーティストのプロモをノンストップで流し続けている。CDだのDVDだのの宣伝。ポスタも至るところにべたべたと。五感全域に障る。

 ピアノの音がした。

 寂れた楽器店だった。昔からここにあったのかもしれない。あの陰険な会社がここに君臨しなければひっそりと看板を構えられたというのに。

 ガラス張りだが中は見えない。曇りガラスは仕様ではなく、汚れのせいだ。踏み込みづらい。

 薄暗い。慣れるまでぎゅうと眼を瞑った。

 カウンタは蛻の殻。所狭しと楽器が並んでいるが、埃を被っていない。一応営業はしてるらしい。床に置いてあるので足の踏み場を見定めながら歩かなければならない。

 ピアノは入り口から最も遠いところにあった。演奏者は壁の陰で見えない。

 曲というより音の集合。秩序を生み出す気はまったくない。自動演奏にしては異様に劇的な。機械にこれは創れない。プログラムをしたのがニンゲンなら、まあ。

「いらっしゃい」

 吃驚した。てっきり留守だと。

 杖が床を攻撃する。白髪、立派な髭を蓄え、腰の曲がった。

「あれが聞こえたかね」圧倒的に外界の騒音に負けているのに、よくぞこの微弱な音を拾った。そんな表情で老人は杖を。「いい音だろうて」

「ピアノ?」

「ばあさんの遺したものだ。気に入った者にしか弾かせん」

 自動演奏でないことが明らかになったわけだが。

「何か探しとるようだな」老人が言う。

「いんや、見つかったとこ」

 ここにいたのか。

 眼球が捉える前に店を出た。

 老人に見られたくない。どころか全世界に聞かれたくない。

 煉瓦敷きの裏路地。ヒールが拍子を刻む。スカートの丈が短すぎないか。直立不動の状態でぎりぎり。これで歩きでもしたら。

 て、歩いてるんだった。

 俺の後ろを。ぴったり張り付いて。

 振り返りたくないな。

「喜んでくれてた?」顔を近づけるな。背伸びまでして。

「どこやった」

 二人の指は発見されていない。

 左の小指。

 同じく薬指。

「わかってることをさあ」

 舌。やけに赤い。

 呑み込む。

 液体固体気体。個体期待。

 奇態。

「訊かないでよ」

「献上しなきゃ駄目だろ」ついつい顔を背けた。

「そっかあ。それで」

 こいつに張り付く予定になってたのが鬼立なら。

 まずいな。止められない。

「付いてこねえでいいぞ」

「僕もこっち用事」足を速める。

「あすこじゃねえだろうな」馬鹿でかいビルの。

「待ち合わせしてるんだよ」

 社長か。或いは。

「僕に会いたくてね、わざわざ帰ってきてくれたんだ。遥々」

 フランス。

 まさか。中榧ともるの尊敬するピアニストは。

「来る?」

 ますますまずいことになる。

 二人見張るもとい護衛なんざ。

 エントランスロビィに着くなり、一目散で走り出す。なんでそんな高い踵で。閉じかけのエレベータのドアを抉じ開けて。

 撒くつもりか。どうせ社長室だ。

 あいつは顔パスだが、俺は。

「御用の方はあちらで」受付が完璧な笑顔を寄越す。

「社長呼べ。陣内っつやわかる」

 えんで。

 お前なら。止められるんじゃないか。


      C


 アポを取ったはずなのに、秘書に首を傾げられる始末。

 教授に直接約束を取り付けたわけではないので、承った輩が情報を滞らせているか。教授にお伺いなしの独断だったのか。

 なんにせよ、私だって今日という日を無理繰り作って来たわけだからここではいそうですかと引き下がるわけにも行かなくて。

「会わせていただけませんか」

「と言われちゃってもねえ、教授だって暇ヒマしてるわけじゃないんですよう」

 秘書は、見た目は取り付く島もなさそうな感じだが、話してみると全然そんなことはない。ストレイトの黒髪と臙脂のフレームのメガネに惑わされた。私の持っているどのスーツより高価そうな。つい脚を見てしまう。ミニなのに豪快なスリットが入っているから。

「ゆってはみますけど。口きいてくれなくなったら責任取ってくださいよ」

 失礼して腰掛ける。

 構内で最も地面から遠い場所に研究室がある。威張っているわけでも権力を振りかざしているわけでもない。彼が某所で答えたインタヴュによるなら、誰も七階以上に研究室を構えたがらないそうで。たまたま空いていたとか。本当か嘘かはわからない。

 秘書が受話器を置く。

 ダイヤルした辺りから横目で様子を窺っていたのだが、いま初めて気づいた、みたいな風を装って。

「どうでした?」

「ケーサツとして会うならお引取りを願います、とのお達しで」

「それ、教授が?」

「私はただの門番ですもん」秘書が言う。

「生憎とこの顔しか持っていません」

「だ、そうですよ。せんせー」

 絶対にあのドアから現れると思っていた。しかし、待てども開かない。

 秘書に眼を遣ると、

 その傍らに。

 分厚い本を膝に乗せて。地味なワイシャツに地味なネクタイ。白衣のボタンはすべて留められていた。

 いつから?さっきまで確か。

「本当にケーサツだと思うかい」私なんか見ていない。急速冷凍させたような声。

「ちょっと美人すぎますよ」逆に秘書は、私を脳天から爪先まで検分している。「嫌ですよねそうゆうの。先生をなんだと思ってるのか」

「あれ? 君が受けたんじゃ」それでも秘書にも私にも眼をくれない。

「電撃訪問者のほうが面白いので、すっこり」

 教授は、溜息ののち笑い出した。

 眼線が本に落ちているので表情は窺えない。メガネの黒縁が覆っている。

「やっぱり君は最高だね。気分がいい。午後は休講だ」

「りょーかいで」秘書は大袈裟に敬礼ポーズを作って受話器を耳に当てる。

 気分屋と聞いていたが、講義まで気分次第だとは。いいと休講になるのだったら、悪い状態で講義を開くのだろうか。冷徹、非情という学生が抱くイメージの由来がわかった気がする。

「ゆびきりさんのことですね」もう何人も同じ用件で訪れているのだろう。うんざりな様子は受け取れないが、そう振舞っているだけかも。教授は無感情にそう言った。

「先生ならお詳しいと思いまして」こちらもできる限り単刀直入に。それが教授の好みだということは下調べ済み。

「どうやって突き止めましたか」

「聞き込みです。私どもの基本捜査の」

「へえ、本当にそんな地味なことするんですね。刑事ドラマだけかと思ってました」

「私のせいで、先生のお話を楽しみにされている学生さんの貴重なお時間を奪ってしまったとしたら、授業料をお払いしなければなりませんね」

「何故でしょうね。そのほうが歓迎されます。必ずしもゼミの人気と相関関係は得られませんが」

 研究室は、デスク以外に座る場所がなかった。椅子がないという意味ではない。あるのだろう。うずたかく積みあがった本のタワーや紙の束の下に。本棚もあるのだが収納要領を超えている。

 教授の頭脳の構造を垣間見れたようで、密かにほくそ笑む。

「しまったなあ。僕以外誰も来ないから」

「構いません。ここで」立ったままで。

 ゆびきりさんの、

「噂の出処は」

 僕です。

 その冷酷無比な眼差しに。ぞっとした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る