第44話 エピローグ


エピローグ


「たらちねの母が呼ぶ名を申さ(まを)めど 道行く人(びと)を誰と知りてか」


 と呼びかけてきたヒロコならいい作家になれる。

 記憶が鮮明なうちに、この街で起きた異変を書きとめておいてくれ。

 死可沼との別れがきまった。

 教え子たちとの別れがつらい。


「わたしと美智子との間には、たった一つの街、この死可沼しかななかった。わたしたちは死可沼を愛していた。ここで、子どもを産んだ。でもあの子たちは、離乳するとすぐニューオリンズの美智子の両親に任せた。わたしたちは、しばらくは――あそこに帰る」


 黒川に架かった御成橋にみんなが集っていた。アサヤ夫妻とのしばしの別離だ。

 ヒロコならこの街の戦いを記録できる。ぜひ、ここで起きた変異について書き遺してくれ。ヒロコならいい作家に、絶対になれるよー。

 期待しているから。


 アサヤにもどって温和な顔でヒロコを励ます。


 ヒロコもアサヤのオッチャンと初めて御成橋で会ったときのことを思いだしている。


「たましきの都のうちに棟を並べ、甍を争える高き賎しき人の住まひは、世々を経て尽きせぬものなれど、これをまことかと尋ねれば、昔ありし家は稀なり」

 

 アサヤは低く朗唱する。


 昔ありし家は稀なり。


 これからこの街には新しい家並みが形作られていく。

 どんな街になっていくのだろうか。


 これは裏死可沼という異界での物語です。

 淫魔、インキュバスや吸血鬼が暗躍する

 場所です。したがって、物語のなかの、

 地名や固有名詞は現実とはまったく関係

 ありません。          作者













































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異変が起きる街 麻屋与志夫 @onime_001

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