012  白銀の少年⑤Ⅱ

「それ以外の霊力者は霊媒師れいばいし、そして、ほかの称号が与えられるの。ここはあなたには関係ないわ。だって、一平いっぺいさんは八嶋やしま家の分家出身であり、八嶋家を追放された人間だった。でもそれは、彼がおきてを破ったことによるものだったの」

「分家の出身?」

 正寿が険しい顔になり、訊き返した。美雪みゆきは正寿の言葉に頷き、その他にも色々と秘密にしてきたことを話した。唯一、自分のことについては話さずに————

 そして、例の一条家の少女が正寿のクラスに転校してくると知らされたのはその何時間後である。

「ありがとう、母さん。じゃあ、親父は今どこにいるんだ? 知っているんだろ?」

 空き部屋を出ていく前に正寿まさとしは、美雪に尋ねる。美雪は首を横に振り、

「ごめんなさい。それは私も知らないの。あの人は何も言わずにどこかに行った。でも、いつかは戻ってくるはずだから」

「そうか。じゃあ、次の奴を呼んでくるわ。クラスの奴に連絡とかあるか?」

「特にないわ。さあ、二者面談は終わりよ。さっさと出ていきなさい……」

 美雪は、背中を押して正寿を部屋の外に追い出すと、すぐに扉を閉めてホッとした。呼吸の乱れもなく、正常に血液が循環している。

「まさか、あの子が……。一条家が動き出したっていうことは、この街全体が危険地域になったというわけね。信之君……」

 美雪はボソッと呟きながら天井を見上げた。

 すると、美雪の携帯に着信が入った。送信者には一という文字が浮かんでいた。タイミングが良すぎるのか、良すぎないのか、誰にも分からない。

 電話は鳴りやまず、通話ボタンを押し、耳元に当てる。

「もしもし……」

『こちら八嶋美雪さんの携帯でよろしいでしょうか?』

 電話の向こう側から若い男の声がした。人を手駒の様に簡単に話をする口調は、昔、どこかで聞き覚えのある声。美雪は嫌そうな表情を口調に表しながら話をする。

「あら、どちら様かしら? 勝手に人の携帯の電場番号を登録しているなんてどこかのハッカーと同じね⁉」

 次の生徒を外で待たせ、電話越しの男に向かって嫌味を連発する。

『いやいや、元六道ろくどう家の秀才に褒められるとは思いませんでしたよ』

 男は、笑いながら自分の部屋から携帯ではなく、札を通して話していた。

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