我が家の猫は王様である ~きみの名は――~
饕餮
きみの名は――
それは13年前の、夏の盛り。
当時住んでいた家は借家の一軒家で、ペットの飼育は禁止されていた。
そんな時、大家さんが
「猫を飼いたいって言ってたわよね? 許可するから飼ってみない?」
と言ってきた。どういうことかと話を聞いたところ、こんな話をしてくださった。
大家さんは地主でもあるんだけれど、それと同時に一軒家の借家を幾つかだけではなく、マンションも幾つも持っている人。そのマンションのひとつで管理人が草むしりをしていたところ、子猫の声がどこからか聞こえてきたそうだ。
不思議に思って周囲を探すと、ダンボールに子猫が四匹、捨てられていたんだとか。
とりあえずその管理人が自宅に引き取り、里親を探しつつトイレの躾をし、三匹までは里親が見つかったものの、どうしても最後の一匹の里親が見つからない。
自宅では既に三匹いるから飼えないし、このままでは保健所に連れて行かなければならないからと大家さんに相談したところ、我が家に、ということで子猫を持ってきてくれたのだ。
病院で病気やノミなどの検査、ワクチン接種も終わっているとのことだった。
「いいんですか?」
「あたしがいいって言ってるんだから、いいのよ。保健所に連れていくのも可哀想だしね」
「わかりました。じゃあ、飼ってみます」
それが始まりで我が家に来た、オス猫の『
躰のほとんどは真っ白で、頭には羽根のような模様、腰にはまん丸い模様、尻尾は長くてシマシマ。手足にも模様が少しある、ほぼ白猫。目はすこしだけ青が入っている、きれいな琥珀色。
その躰の白さから、『雪』や『シロ』なんていうのも候補に挙がったけど、頭の天辺にある模様がドラゴンの翼のように見えた。そのことからドラちゃんにしようとしたのだけれど、さすがにそれは青いタヌキと呼ばれる某アニメのロボットと同じになってしまうということで、ドラゴン → 竜だとありきたり → 龍 となった。
そんな名前の通り、暴れん坊でやんちゃっ子、でも甘えん坊なツンデレ猫の龍は、こうして我が家に来たのだ。
初めて名前を認識したのは、ご飯の時かトイレがきちんとできた時だったと思う。何せ13年も前の話なので、名前をつけるに至ったことは覚えていても、どのタイミングで自分が『龍』だと認識したのか、覚えていない。
悪戯が大好きで、暴れん坊。脱走をして真っ黒になったこともある。
お風呂が大好きだったのに、落ちてから嫌いになってしまったこともある。
野良猫に喧嘩を売られたと勘違いして、私の腕を傷だらけにしたこともある。
病気になったこともあるし、風邪を引いたこともある。
それでも元気に、今まで生きてきてくれた。
とにかく、名が体を現したかのように、アグレッシブな彼にとって、『龍』という名前は本当にぴったりだったのだ。
今でも思う。
もし龍が我が家に連れてこられなければ、保健所で死んでいただろう。
それを思うと、我が家に来てくれて、我が家の子になってくれて、ありがとうと思う。
ペットなんかじゃない。人間の言葉を話せなくても、龍は我が家の大事な家族。
13歳という高齢になりかかりの龍だけど、下僕でもある飼い主としては、『龍』という名前の通り、できるだけ長く生きてほしいと願う。
最近は寝ていることが多くなったけれど、いつまでも元気でいてほしい。
我が家の猫は王様である ~きみの名は――~ 饕餮 @glifindole
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます