2.フェンリル

    村を後にした俺を待っていたのは残念ながら素敵な冒険なんかじゃなく、『盗賊』だった。

そう、俺は今盗賊に追われている。


「おい!待て!逃げんじゃねぇ」


「待てって言われて待つヤツがいるかよっ」


俺がなにかした訳でもない。だが盗賊は追ってくる。理由は簡単だ、やつらは金が欲しいからだ。


「ハァ...ハァ...」


背後のすぐ近くに奴らの声がするヤバイ殺される。


「・・・ぐあっ、クッソ」


木の根っこに引っかかって盛大に転んだ。


「ったく、余計な手間かけさせんじゃねぇよ」


「火球!」


と叫ぶと小さな火の玉があらわれた。それはフワフワと浮遊しながら盗賊の元へと飛んで行ったが手で弾かれてしまった。


「なっ・・・」


「なんだお前魔術師か?」


「普通なら相手が魔術師ってわかった時点で襲うのを辞めるんだがな、何故かって?そりゃ勝ち目がないからな」


「だが見習いは別だ」


「安心しなすぐ逝かせてやるからよ」


この時俺は初めて死を覚悟した。


「いや、待てよ」


「あれを使ってみるか。おい、あれ持ってこい!」


と言い彼らの後ろから現れたのは狼だった。

だが、そこらの狼とは訳が違う。大きさが比べ物にならない。

盗賊のリーダーらしき男がかなり大きいのだが

それを越すほど大きい。


「・・・フェンリル?」


かなり昔に読んで貰った本に出てきていた。

この世界が出来てからは魔王という存在があった。それが初代魔王だ。その初代の魔王を倒したのが突如空から現れたという『フェンリル』だ。ちなみに今はいないが次いつの魔王が出てくるわ分からないというのが今の世の中の現状だ。


「よく知ってんな。んまあ、こいつはそのフェンリルってやつの血をちょっとばかり受け継いでるだけだがな」


「お前はこれからこいつの餌になるんだ」


「さぁ、やっちまえ!」


普通ならここでは恐怖で顔を青くしながら汗をかき、震えているところだろう。

だがしかし俺は違った。不思議だったのだ。

フェンリルの血を引いているのであれば盗賊たちを倒すことも容易いだろう。だが、なぜそうしないのだろうか。倒すどころか、盗賊たちの命令を聞いてこっちに向かって来ている。


「っと、んな事考えるより逃げなきゃ」





・・・続くと思う

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特殊なスキルの魔術師 景嫁/Keika @chihoro

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