ナニカガウゴメイテイル

あかさや

第1話

 うぞうぞ……うぞうぞ……。 


 最近、寝るたびに『なにか」によって這い回られている……感じがする。


 感じがする――なんてふわふわしているとのはわかっているのだが、その本人であるわたしにだってよくわかっていないのだ。なにしろ、這い回られている感触だけがあって、目にはなにも見えないのだから。


 うぞうぞ……うぞうぞ……。


 今日もまた、わたしの身体の上をなにかが這い回っている。

 足を、腕を、腹の上を、顔の上を、なにかがかすかな音を立てながら。


 うぞうぞ……うぞうぞ……。


 わたしはその這い回る感触が気になって今日も目を覚ましてしまった。

 そして――

 わたしが目を覚ますと、寝ているときには確かに感じられたはずの『なにか』が這い回る感触は消えてしまう。


 一体、なにがどうなっているのだろう? まるでわけがわからない。わたしの身体を夜な夜な這い回っている『なにか』も心霊現象とかなのだろうか?


 気になったものの、最近寝不足が続いているために、わたしはまた眠りについてしまった。


 うぞうぞ……うぞうぞ……。


 眠りにつくとまた『なにか』が身体の上を這い回る感触が感じられた。

『なにか』が身体の上を這い回っている間は、どういうことなのかわたしの身体は硬直してしまっている。


 金縛り――というやつだ。


 うぞうぞ……うぞうぞ……。


 わたしのことなどお構いなしに『なにか』はいつも通りわたしの身体のうえを這い回り続ける。その感触は――言うまでもなく不気味で不快だ。


 いまわたしは寝ているはずなのに、『なにか』が身体のうえを這い回っているときはおかしなほど意識がはっきりとしていた。何故かは――わからない。


 うぞうぞ……うぞうぞ……。


 気がつくと這い回る『なにか』の感触が全身に広がっていた。その感触が感じられない部分が、どこにもないほど、蠢く『なにか』によって埋め尽くされている。当然、不気味で不快だが――身体は一切動かせないのでどうすることもできないのだが。


 何故、こんなものにわたしは悩まされているのだろう。いままでの人生で心霊現象のようなものとは一切かかわったことなどなかったのに――今さらになって、どうして。


 うぞうぞ……うぞうぞ……。


 不気味な不快さに喘ぐわたしに構うことなく『なにか』はわたしの身体を元気よく這い回っている。わたしは――それをどうにかしたくて、いつも通り身体をよじらせた。


 しかし、いくら身体をよじらせても、わたしの身体を這い回る『なにか』は消えてくれない。


 足を動かそうとしてみる。

 だが、わたしの命令を無視しているかのように足は動いてくれない。


 次は手を動かそうとしてみた。

 やはり動かない。まるで、全身不随になってしまったかのようだ。


 首を動かして、目を開こうとしてみる。

 すると、目は開かれて――

 そこには――


 無数の

 ■■■■■がわたしに身体を這い回っているのが目に見えてしまって――


 わたしは、悲鳴を上げて――意識は闇の中に消えていった。

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ナニカガウゴメイテイル あかさや @aksyaksy8870

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