僕らの描く道。

桜木 綾翔

第1話

ひと息、ひと息。途切れ、途切れ。ミギ、ヒダリ。階段に向かって足を運ぶ。

午後いちばん、13時30分からの進路懇談を終えて、廊下を独り歩いていた。今回の懇談に親は来ない。僕にとってはそれがせめてもの救いだった。高校3年にもなって進学先も、将来の夢も決まっていないから懇談をしたって一向に進まない。それどころか担任の夕鶴には怒鳴られてばかりだ。両親も、『未来設計図』を書けない僕にうんざりという様子だった。僕だって『就きたい職業』『なりたい自分』はあるが、この歳にもなれば今よりもまだ子供の頃みたいに『就きたい』『なりたい』だけでどうにかなると思えるほど簡単ではなくて、それだけではどうしようもないことを、嫌という程理解している。

立ち止まり、窓の外を眺める。


空は心。


分厚い黒雲海。いくらか待てば雨が降り出すのではないか。湿っぽい空気が鼻に入った。


「…………ぁ〜」


空は心。



今僕の心は黒雲海。

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