第58話 捜索開始!

 翔太視点


 探し人を探す時に大切な事は集合場所を決めておく事だ。

 だが今回問題なのは、ここが知らない街で集合場所を決めても戻ってこれるとは限らないという事である。


 まぁ何が言いたいかというと、僕は所謂迷子になっていた。


 今僕の居る場所は路地裏だ。海斗を探すついでに探検気分で歩いていたら何処だか分かんなくなった。出る道もどこ行けば良いのか分からず参ってしまう。


「う〜ん…どうしたもんかなぁ…」

「どうした坊主、迷子か?」


 とそこで背後から声をかけられる。

 振り向けば筋骨隆々でスキンヘッドの男が僕を見下ろしていた。


 あ、これはやばい奴だ…


「大通りに出たいんなら付いてきな。」


 そう言って男は歩き出す。何かあったら異能で逃げれば良いか、と思い付いていくことにした。



 数分後、僕は大通りに辿り着いた。


「まさか本当に連れて行ってくれるなんて…」

「おいおい、俺の事を何だと思ってたんだよ?」

「実際ゴロツキかなんかだと…」

「まぁ確かにこの見た目だかんなぁ…」

「おじさん自覚あったんだ。」


 ガシッと頭を掴まれる。そのまま万力の如き力で頭を締め付けられた。


「坊主、オメェちぃとばかし口が悪いなぁ?」

「あだ!?頭が割れるぅぅぅぅ!!」

「大体な、俺はまだ27だ。」

「「「「「「え?」」」」」」


 疑問の声はそこら中から聞こえた。大通りに居た人達の声だ。

 彼等はそそくさと顔を伏せ、足早に立ち去って行った。


「…………おじさん…」

「やめろぉぉぉぉ!!そんな哀れむような目で俺を見るなぁぁぁぁぁ!!


 おじさんは僕の頭から手を離し、顔を手で覆うようにして隠していた。


 この世の不条理を感じた瞬間だった。


「何してるの?」


 とそこで僕等に声がかけられる。

 誰だと思って見るとそこにはサーラちゃんが居た。


「そっちは海斗の事見つけた?」

「あ………」


 思い出した、そういえば僕海斗探してたんだ。


「もしかして忘れてたの?」

「い、いや?そんな訳ないじゃん。」

「なんだ坊主、迷子かと思ったが人を探してたのか?ダッセェなぁガッハッハッハッハ!」

「だぁぁぁ!煩い!おじさんは黙ってて!」

「おじさん言うなや!俺の名前はジークだ!」


 見た目と名前が全くあっていないおじさんが文句を言う。


 僕等はしばらく言い争っていた。



「そ、そんで?結局人を探してるのか?」

「ふぅーふぅー、そう。海斗っていう僕みたいな黒髪でおでこが広くてアホそうな顔している奴なんだけど…」

「アホそうな顔って…お前仮にも友達だろう…」

「まぁいいとして、それで見なかった?」

「う〜む、悪いが覚えが無いな。どこで居なくなったんだ?」


 おじさんは考え込むようなそぶりをしたが知らないようだ。


「海斗はこの街に先に入って行ってどこにいるかは…」

「門番に聞いたのか?」

「「あ!」」


 僕とサーラちゃんは同時に声をあげる。すっかり忘れていたのだ。


 そうして僕等は門番に聞きに行くことにした。


「おぉっとそうだ!嬢ちゃんエルフだろ?フードを被っときな。」

「ん?なんで?」

「あっち見てみな。」


 おじさんが示す方向に目を向ける。


「あれは…奴隷?」


 そこには両足に鎖をつけた人が居た。ただ普通の人では無くて頭に獣の耳が付いている。


「そうだ、この街は奴隷が合法になっている。お嬢ちゃんみたいなのが一人でうろついて居たら奴隷狩りに遭うぞ?」

「ん、分かった。ありがとうおじさん。」

「…ジークだ。坊主、すまねぇが俺は用事がある。ここでお別れだ。」

「分かった。ここまで連れて来てくれてありがと、じゃあねジークのおじさん。」


 手を振りながら走り去る。後ろで「おじさんじゃねぇ!」という声が聞こえたが無視した。


 〜〜〜〜〜〜


 その後ローブを被ったサーラちゃんと共に門に走った。

 門には4人の人影がある。


 近づいて行って分かったが人影の内2人は火野さんとメイアさんだった。


 ただどうにも雰囲気がおかしい。何かあったのだろうか?


「美香!メイア!どうかしたの!?」

「サーラ!?と柊くん!大変よ!海斗君が!」


 っ!まさか海斗に何かあったのか!?


「海斗君が、おかしくなったって!」


 ……意味が分からない。海斗は元々おかしい奴だろうに?一体何があったんだ…


「彼はこちらです、付いて来てください。」


 メイアさんと話していた門番がこちらに来て言う。

 僕等は付いて行った。


 〜〜〜〜〜〜


 足音が響く。ここは薄暗い地下牢の通路だ。

 海斗は不法に街に入ろうとしてここに収監されたという。


「彼は半刻程前から突然おかしくなりました。変なポーズをとったり意味不明な言葉を発したり、恐らく何かに呪われてしまったのでは無いかと思われます。」

「え?それって厨二びょーー」


 ゴスッ


 言葉が途切れる。横を歩いていたメイアさんが殴ってきたのだ。


「柊、少し黙ってろ。」

「え、えぇ…理不尽…」


 なんだって殴られるんだか…


 僕のそんな疑問は次の瞬間分かった。

 火野さんが牢番の兵士に話しかける。


「海斗君がこの街に不法侵入しようとしたのはきっとその呪いのせいです。私達が何とかして解いてみせますんで彼を解放してもらえませんか?」

「………分かったいいだろう。友達を助けてやれよ。」

「えぇ!勿論です!」


 う、上手い!海斗の厨二病を呪いのせいにして海斗をこの街に入れるつもりだ!


「この扉の奥の牢に居ます。どうかお気をつけて。」

「ありがとうございます。」


 ギギギギギギ


 軋みながら扉が開かれる。そして妙な笑い声が聞こえてきた。


「フハハハハハハハ!」


 大分末期の状態だ。

 僕等は奥へと進んで行く。


 そして海斗の姿を見つけた。海斗は壁の方を向いて喋っている。


「フハハハハハハハ!!素晴らしい!とても良い肉体だ!フハハハハハハハ!」

「海斗君、私達よ。ここから出してあげるから少し待ってて。」


 ピタリと笑い声が止まる。まさか僕等はだとは思って居なかったんだろうな。


「それは少し不快だな。まさかこの私が閉じ込められていると思われているとは…」

「っ!みんな下がって!」

「柊!伏せろ!」


 メイアさんとサーラちゃんの叫び声が聞こえると同時に僕の体は伏せていた。

 それが命を救ったんだ。


 キィン、カランカラン!


 牢の鉄格子が何かに切られたように絶たれ、地面に落ちた。


「ふむ、なかなか感の良いのが居るな?避けた褒美に1つ教えてやろう。私はデルタ!この籠手に宿りし太古の悪魔!この身体は私の物となった!」


 そう言って振り向いた海斗は禍々しい籠手を嵌め左目の辺りに妙な模様が現れていて、何より普段の姿からは想像も出来ない程の冷たい目をしていた。

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マジックハンド! 光輝くニワトリ @HikarikagayakNIWATORI

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