第57話 脱出しなくては!
何故俺は牢屋に入れられているのだろうか?
疑問だ、なにせ俺は説明をした。ちゃんと説明をしたのだ。
だが未だに出れないのは門番の男が「理由はとにかく不法侵入しようとしたから牢屋行き。」と言って俺をここに入れたからだ。
別に最初はどうでも良かった。みんなが助けに来てくれると信じていたから。だが、そんな希望は儚くも消えて無くなった。
既に3時間、俺は牢屋の中である。
「なんでだぁぁぁぁ!!出せぇぇぇぇぇ!!俺は無実だぁぁぁぁ!!」
「うるせぇぞ!ぶっ殺されてぇのか!?」
「ごめんなさい。」
隣の牢の男に怒鳴られて勢いを失う。
仕方がないのでなんとか脱出出来ないものかと牢屋を探る。
持ち物は武器の籠手を取られていて牢には便器とベットと洗面所が設置されていて、過ごすだけなら困らない。まぁ過ごす気など無いのだが…
まずは壁を調べてみる。
コンコン
壁を叩いて音の反響を聞く。中に空洞が無いかを知る時によくやるあれだ。
コンコンコンコンコォンコン
っ!これは!
一箇所だけ音が反響して聞こえた。これだ!と確信を持ち壁の石を外しにかかる。だが簡単には外れない、必死に爪を立てて何とかずらしていき持てる部分を作る。そしてーー
ガコンッ
石は外れた。
「よしっ!これで脱出出来る!」
意気揚々と取れた場所を除く。
そこで俺は骸骨と目が合った。
「〜〜〜〜〜!?!!?!」
声にならない悲鳴を上げて、俺は意識を失った。
〜〜〜〜〜
ハッと目が覚める。
変わらず景色は牢屋の中で、気分はとっても閉鎖的だ。
ガツンッガツンッ!
苛立ちを込めて牢を殴る。
まぁ殴ったところでどうにかなる訳でも無く、むしろ俺の拳が痛んだだけだった。
「おい!さっきからうるせぇぞ!」
「す、すいません!」
またしても怒鳴られたが結果的に良かったと言える。何故ならさっきからと言うことは気絶していた時間はそんなに長くなかった事だからだ。
気を取り直して…
壁の骸骨をもう一度見る。
見ても分からないので触って見る事にした。
もしかしたら何かしらの道具が入っているかもしれない、武器が隠されてるかもしれない、脱出する為の方法が記された紙があるかもしれない、そんな希望を持ってペタペタと触った。触り続けた。
結論から言うと何も見つからなかった。
ただ壁に骸骨が埋まっていただけだったのだ。
くそっ!壁には手掛かり無しか…なら次は牢を調べてみよう。
脱出もののストーリーなんかでは牢に仕掛けが施されていることが多々ある。
今度こそ手掛かりはあると確信して牢を調べ始めた。
10分が経った。
手掛かりは見つからない。
30分が経った。
牢の一部が外せる事に気づいた。
1時間が経った。
そこからどうする事も出来なかった。
俺は諦めた。
不貞腐れて横になる。
他に探せる場所は便器とベット、それに洗面所の3つ。どれから手をつけるか…
って言うかみんなはどうして見つけてくんねぇんだぁぁぁぁぁ!!
心の中で叫びを上げて、俺は先ずはベットに取り掛かる事にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
火野視点
さて、時は少し戻って火野さん達からの視点である。
「俺一番乗りぃ!」
そう言って海斗君は走って行った。
あっと言う間に離れて行く。
「全く…勝手に行って何かあったらどうする気なんだか…」
「海斗なら何かやらかしそうだな。」
「やっぱりメイアもそう思うわよね。」
「まぁそうだな。」
メイアも私の意見に同意した。
彼は所謂トラブルを引き寄せる体質だ。元の世界にいた時もよくトラブルに巻き込まれていた。
まぁその話は後にして、下手をすればもう既に巻き込まれているかもしれない。そう思うと居ても立っても居られなくなった。
「ちょっ、ちょっと私見てくる!」
「オ、オレも行く!」
「じゃあ私も行く。」
「僕も海斗がトラブルに巻き込まれているの見たいから一緒に行くよ。」
結果的に私達は全員で海斗君の後を追いかけた。
門に辿り着く。
「やぁこんにちは。街に入るのなら3000レクトだよ。」
1人だけいる門番が話しかけてきた。
私達にお金ってあるんだっけ?
そう疑問に思う。
「悪りぃが今手持ちが無い。換金を頼めるか?」
そしてあろう事かメイアは素直にお金が無いと言う。
私は青くなった。
「分かった。それで?換金するものは?」
「この黒猪の毛皮でどうだ?」
だけど私の心配をよそに話は進む。どうやら手持ちのものを換金してお金を得る事が出来るみたいだ。
「へぇ?黒猪を殺るなんてなかなかやるねぇ。それじゃあ付いて来な。」
門番の男はそう言って歩き出す。私達もゾロゾロと門番の男に付いて行った。
とはいえそこまでは移動しなかった。歩いてすぐの所にとある店がある。私達はそこで止まった。
「ここが換金所だ。換金したら1人3000レクト渡してくれ。」
「「「「分か(ったわ)(りました)(った)」」」」
門番の男はまた門に向かって歩いて行き、門番としての仕事をしに行った。
残された私達は換金所に入って行く。
ギィと軋む音をあげる扉を開けると、そこにはいくつもの様々な物が置いてあった。
そして奥のカウンターでは1人のお婆ちゃんが居た。
「うひっひっひっひっ、換金をしに来たのじゃな?」
「えぇ、この黒猪の皮を売りたいんです。」
奇妙な笑い方をするお婆ちゃんにメイアは黒猪の毛皮を渡す。
メイアはこうなる事を見越していたのかちょっと前から突然皮を剥がし出したのだ。
あの時はあまりのグロさに吐いちゃう所だったわ…
「そ、それで幾らぐらいになりますか?」
「ふ〜〜む。……………………分かったよ。」
お婆ちゃんは受け取った物を受け取った時に手に付けていた手袋を外して言った。
「そんで値段は?」
「そうさねぇ…これ1つで3万2千レクトだね。あぁ、安心しなさい、相場は2万5千ぐらいだからねぇ。」
「なんでそんなに高いんですか?」
疑問に思ったので私が尋ねる。
「この黒猪は打撃で倒されている、お陰で傷があまり付いていないから高く売れるのさ。」
「「「ヘぇ〜。」」」
私と、サーラと、柊君の呆けた声が重なった。
「じゃあ換金をお願いします。」
「はいよ。」
お婆ちゃんは席を立ち、店の奥に入って行った。
しばらく後、ジャラジャラと硬貨の入った袋を持って来て中を探す。そして何枚かな硬貨を取り出した。
「ほい、3万2千レクト、確認しなさい。」
言われた通りに確認をする。確かに3万2千レクトある事を確認した。
私達は硬貨を受け取り店から出る。
「うひっひっひっひっ、また来なさい。」
「えぇ、ありがとうございました。」
一言お礼を言って建物を出る。
そしてもう一度門へと向かった。
「換金は出来たか?」
「えぇ、では1人3千レクト、合わせて1万2千レクトです。」
硬貨を取り出し門番に渡す。
門番は暫く数えた後、脇にズレた。
「それではどうぞ。」
私達は街に入って行く。
門を抜けると凄い光景が目に飛び込んで来た。
一見西洋の街に見えるけども街灯があり、店にはショーケースがあった。ガラスが作られているという事だろう。
「うわぁ、凄いわね。」
「スゲェな、中はこんなんなってんのか…」
「ん、凄い。」
「なんか色々混ざってるなぁ…」
それぞれが感想を口にする。とそこで私は思い出した。
「っ!海斗君を探さないと!」
「あぁ、そういえばあいつどこ行ったんだ?あいつの荷物の中にも毛皮が入ってっから中にいるとは思うが…」
「なら取り敢えず街を見て回らない?1時間後、またここに集合で。」
「そうだな、海斗を見つけたら見つけた奴が連れてくるって事で。」
「ん、分かった。」
「僕はそれでいいよ。」
私達は思い思いに散らばった。海斗君はきっと誰かが見つけてくれると思って街をブラブラと見て回ることにした。
まさかその頃、海斗君は牢屋で脱出を図っているとも知らずに。
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