夢を追う少女と人並みに夢を諦めたサラリーマン。少女の夢は大きく、傍目にも分が悪い。いまは若く強く、まっすぐに目指しているけれど、いつか折れてしまう日が来るのかもしれない。ひたむきさは時に見苦しくもあって、青臭くて痛くて、苦笑が漏れそうになりもする。ただどれほど不格好であったとしても、この少女の努力は美しく、惹きつけられる。
少女の言葉が、痛いほどに真っ直ぐな眼差しが、どれもぐっと来てしまいます。彼女が腹を決めて歌っているのではなく、未だ揺らいでいる部分を見せる所が、また素敵です。夢を持つことの苦しみと、素晴らしさが描かれていて、私も何故夢を見るのだろうかと考えてしまいました。
様々な思いが胸に突き刺さります。私ははじめ、社会に溶け込み夢から現実に戻った小塚の視点から読んでいました。けれど、私にもまっすぐ夢へ向かおうとする少女の時代が確かにあったのです。その狭間の自分の曖昧な部分に、少女の言葉が刺さること刺さること。羨ましいなぁと思ったり、苦々しいなぁと思ったり。読み手によって小塚と少女、どちらの視点にもなり得ますし、必ず思うところがある作品だと思います。