第13話 またどこかで出会えたら(トオル視点)

母「早く支度しなさい。今日学校よ。」


母さんが自分に呼びかける。目が覚めてから、俺はみんなが生きているか、スマホで確認していた。今のところ、そういったニュースはない。


「夢……か……?」


そうだとしたら本当に嫌な夢だ。

着替えと朝食を済ませて家を出ると、警察の方がインターフォンを鳴らそうとしていたところだった。


警察「トオル君かい?」


このタイミングで警察関係で心当たりのある出来事なんてひとつしかなかった。

夢なんかじゃなかったんだ……。


警察「君の通う高校の君のクラスの人たち7人が今朝、自室のベッドの上で全員亡くなっていた。死因は心停止。」


自室のベッドの上?心停止?


警察「安心してくれていい。別に君を疑っているわけじゃない。事件性を調べたところ、ほぼ自殺で間違えない。死亡推定時刻が全員、午・前・2・時・……。全員を同時に心停止させるのは、人間には不可能だからね。ただ君のクラスの人が自殺を図った理由を調べているから、事情聴取を願えるかな?」


え……?午前2時?じゃああそこで起こっていたのは、全部俺らが寝ている間の、午前2時に起こっていたことなのか?



事情聴取が終わり家に帰ったときには、夕方になっていた。俺が見た現実は話さなかった。話しても信じてもらえないと思ったし、何よりあんな殺され方……、みんなのご両親や知人に知られるのは躊躇われたからだ。

帰ってから俺は、一人ひとりにメッセージを送った。

こんなことに意味はなく、もう届かないことは分かっているが、みんなのおかげで今の自分がいることを、ちゃんとみんなに伝えたかった。


サクラへ

お前が襲われたことに気付いてやれなくてごめん。

いつも一所懸命にまとめてくれていたサクラの力になれなかったことが、今はとても悔しいよ。ちゃんと君のことを憶えてるから、ゆっくりおやすみ。


リョウタヘ

教室で俺は、お前と一番一緒にいた気がする。

お前が欲しがってた新しいゲームソフト、俺が買ってやるからそっちで売られててもまだ買うなよ!


カナへ

君があのとき恐怖で何も考えられない状態だったことを知っていたのに、相談にのってやることもできなくてごめん。そっちでカイトをいじめんなよ。


カイトへ

お前に多くのことを背負わせて、辛い思いをさせてごめんな。お前をあそこまで追い込んでごめんな。そっちでカナと出会っていることを心から祈るよ。


エミへ

もうケントから聞いてるかもしれないけど、ケントの最期は本当に頼もしく、誇らしかったよ。だから、ケントを責めないでやってくれ。


レンへ

お前が俺に憧れと言ってくれたことは、本当に嬉しかった。今俺が生きている一番の理由は、間違えなくお前だよ。そっちでもみんなの支えになってくれ。


ケントへ

伝えられなかった想いが、ちゃんとエミに伝わっていることを祈るよ。もし、エミと付き合ってたら仲良くしろよ!荒っぽいのとか無しだからな!


俺らがいた校舎には、もう一人いた気がする。

けれど、その人はどうしても思い出せなかった……。



みんなが亡くなってから、1ヶ月が経った。

俺らが通っていた、今俺が通っている高校には、山奥に旧校舎があると聞き、俺は地図に従ってその場所を目指した。

着いたときには、俺は自分の目を疑った。予想はしていて、だから俺はここに来たのだが、いざ本当にそうなると驚いた。そこは間違いなく、俺らが影から逃げていた校舎だった。

俺は中に入り、地下の総合管理室を目指した。けれど、ここには地下は存在しておらず、代わりに多目的室が開いていた。


「この写真……。」


そこには、10人前後の高校生らしき写真が何枚か飾られている。そしてそこに、俺のクラスメイト達の写真も飾られていた……。


「あれ?この娘……。」


クラスメイト達の横に1人の少女が写っていた。そしてその少女は、みんなの写真だけでなく、全ての写真に写っている。

どこか懐かしく、俺はその少女を知っている気がした。何かを忘れている気がした。絶対に思い出さなければいけない何かを……。

けれどどれだけ考えても、思い出すことはなかった……。


帰る頃には、外はもう暗くなっていた。結局この校舎が何なのかは、わからなかった。


【また、会えたね……】


ふいに俺はそう言われた気がした。その声はどこか懐かしく、とても愛おしかった。


「ただいま……、ちゃんと会いに来たよ……。」


誰に言ったのかはわからない。けれど、俺はそう伝えなければいけない気がした。


最後に校門をくぐるとき、俺の携帯が7通のメッセージを受信した通知音が、夜空に響き渡った……。

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