【あとがき】
初めて2人を見た時、現代版「美女と野獣」だと思った。
そして話を聞けば聞くほど、野獣の優しさと美女の健気さに心を打たれて、小説にするしかないと決意した。
ただ、それには幾つか問題があった。
1つ目の問題は、これがノンフィクションであるということだ。つまり、彼と彼女にとって、本当は誰にも知られず秘密の宝物のように胸へしまっておきたい“かも知れない”物語を、衆目に晒してしまうことになる。
もちろん、2人には許可を取ったが、後になって悔やむかも知れない。
だからこそ、僕はもしもそうなった時、彼らが改めてこれを読んだ時に「怒り」よりも「幸せ」が上回るような作品にしたかった。
またそれこそが、これを書かせてくれた2人への最大の感謝だと思った。
2つ目の問題は、実際の話が美しすぎて、脚色したり改変したりする余地がなかったことだ!
これには正直、参った。物書きとしての立場がない。
そこでせめて、2人だけの物語でなく、僕の目を通しての2人の物語にしようと考えた。
結果的に、この選択は間違っていなかったと思う。それに、作品が完成するまで、僕だけが知っているそれぞれの秘密や想いもあったのだし。2人に作品を見せた時は、内緒話を打ち明けているようなどきどきがあった。
とは言え、作品の中にあるエピソードはどれも実際に起こったことで、また現実に彼らが抱いた感情だ。
なのである意味、僕がしたことは、彼から彼女へのラブレターの代筆だと思う。
或いは、彼女から彼へのラブレターの代筆だ。
最後に、蛇足かも知れないが題名でもある「Pay It Forward」という英単語の意味について触れておこう。
これは、日本語に訳せば「恩送り」と表現できる言葉だ。
「恩送り」とは、受けた恩をその“相手に返す”「恩返し」とは異なり、誰かに受けた恩を“別の人”に渡して、次々に親切の輪を広げていくこと。これが巡り巡って「情けは人の為ならず」とも言える。
彼らによってもたらされたこの作品が、いつか何処かで誰かにとっての新しいきっかけになれれば最高だと思う。
最後に、ここまで読んで下さって、誠にありがとうございました。
もしも街中で美しい白人美女と、優しそうな日本人男性を見かければ、それはもしかしたらKとタチアナかも知れません。
淺羽 一
【 Pay It Forward 】 淺羽一 @Kotoba-Asobi_Com
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