人事に絡めずに自然の美しさを描くことは最も優れた芸術だと考えるが、この作品はそれを成し遂げている。描かれるのは、切り取られた小さな自然と主人公の交流である。眺めていた花の一つから飛び出したクマバチに驚き、そして微笑み合う。なんと純粋で善良なあらすじだろう。掌編でありながら心洗われる作品である。主人公の境遇は明らかにされていないが、美しい光景を惜しんで都会へ出ることをやめてしまうあたり、芸術家的な価値観をうかがわせる。素晴らしい作品であった。
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