第2話

ガタンガタン…ガタンガタン…。

「次は〜、福生。福生です…。」

強烈な睡魔の中、聞き慣れた車掌のアナウンスが耳に飛び込む。


週末の営業で疲弊した体は、22歳という若さをまるで感じさせないほど重く、足元に置いた買ったばかりの書類鞄を持ち上げることすら苦痛に感じた。


電車を降り、不安定な足取りでホームから改札への連絡通路に続く長い階段を、手摺に寄りかかりながらも一段、また一段とゆっくり登り、やがて苦手とする改札前の人並みに溶けてゆく。

改札を抜けるまで、たかが1、2分の出来事だが、限られた空間での人口密度と高湿度により際立てられたハイブリッドな臭いに拒否反応を起こし、直ぐさま向かいの喫茶店に駆け込む。


「すいません。ブレンドコーヒーをミルク無しで1杯お願いします。」


週6日は顔を合わしている、40代前半ぐらいのやや影のある女性スタッフに注文をする。


「あれ?今日はいつもよりお疲れだね〜。ちゃんと

ご飯食べてる?」


「食べてますよ!ただ、今日はだいぶ忙しかったんで。」


何気にない会話だが、自分の居場所を再確認出来たような気がする瞬間だ。


出入り口すぐのカウンター席に座り、ジャケットのポケットから取り出した携帯を開く。

(今日の予定は…っと。)


[14時に不動産屋へ行く 内覧]


(マジかぁ…。今日は体調優れんのになぁ…。)


「はい、ブレンドコーヒー。」


憂鬱な思考を断ち切るかのようなタイミングで注文したコーヒーが運ばれて来た。




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