第3話ミラールシェイナ
「なぁ、シェイナ」
クェーグルまでの道中、この歩いてるだけというクソ暇な時間を有意義に過ごすため俺はシェイナに話しかける。
先頭を歩いているシェイナは俺の方に顔を向けて首で「話すのです」みたいな動作をしてその先を促す。
ちっ、やっぱりどこかウザイなこいつ。
「俺の職[無能者]ってのはどういう職なんだ?」
無能者って言うんだからまぁ何も出来ない職なんだろうけど他になんかあると思うんだよ。ってかあってもらわないと困る。凄い困る。
先ずランダムジョブシステムっていうのは納得するとしよう。恐らくこのゲームでも売りのひとつ何だと思うし。
だけどもし仮にランダムジョブシステムで決められた[無能者]が何もできない職だとしたら…初めから詰んでるクソゲーム。クソゲー認定するからな。
俺は期待の眼差しでシェイナを見つめる。
「そのまんまの意味なのです。多分なのですが」
はいクソゲー。
俺が落胆してるのを見てか、シェイナは「でも」と言葉を続ける。
「初めからエンドゲームっていうのは「GoG」には存在しないのです。そもそもそんな事あってはならないのですよ。何故なら「GoG」のコンセプトから大きく外れてくるからなのです」
「コンセプト?」
シェイナは「はいなのです」と大きく頷く。
「「GoG」のコンセプトは「楽しくを、過酷を、自由を気楽気ままに」なのです。だからコンセプトの初段階にすら入れない職なんかあれば直ぐに修正、もしくは何らかの措置がくるのですよ」
なるほど。俺の職にも何らかの良いことがあるってことか。なら取り敢えず一安心だな。しっかし過酷を気楽気ままにとは大きく出たな。
楽しくとか自由はまだ分かるけど過酷を気楽にって正直意味がわからん。
この「GoG」ってゲームにはランダムジョブシステムっていうのがあるわけで、それで思っていた職とは違くてもまぁ頑張れ的な意味にしか俺は聞こえん。
でもやっぱり被り職とかはあるんだろうな。そこんところどうなんだろうか?
「被り職はそりゃああるのですよ。何百万って人が遊んでるなかでそんな多く職があるわけないのですよ」
それもそうか。
「励ましになるか分からないのですがジントの[無能者]は私が今まで見た職の中で初めて見た職なのです。恐らくオリジナルだと思うのですよ」
人差し指を立てて話すシェイナ。
うーん。確かにその情報は嬉しいっちゃ嬉しいな。
シェイナが言うにはオリジナル職は一人しかなれない、つまり唯一無二の職らしい。だから大抵オリジナル職は二次職、三次職とチートづくしの効果、潜在能力値(ステータス)、技(スキル)になるんだと。
まぁでも俺の職はなぁ…
「[無能者]ってどんな二次職になるか想像つかないけど何か他のオリジナルと比べると見劣りしそうなのです」
「うわー俺が懸念してた事をズバッと言いやがった。」
ほんとそこなんだよなぁ。
[無能者]って言うんだから次は何か[可能者]みたいな地味な感じになりそうだ。想像したくねぇ…、、
それから何度も質問攻めをしていると街道が見えその先に大きな門が見えた。
暫く歩いてその門に立っている門兵にシェイナが話けると凄い畏まって頭下げてた。やっぱり凄いヤツなんだなコイツ。俺は認めないけど。コイツは唾吐きクソ幼女で十分だ。
んで俺の方に戻ってきたシェイナに連れられて始まりの街クェーグルの門を潜った。
「おぉ、こりゃすごいな!」
あたりを見渡せばエルフやらドワーフやら猫っぽい人やら。色んな種族でごった返していた。
そんな中チラチラと刺さる、明らかに俺に向けられた嫌な視線だ。
「ねぇ、見てアイツの職…」
「[無能者]って…弱そうな職だな」
「ははっ、可哀想な新人冒険者(ルーキー)」
そんな声がチラホラと聞こえる。
まぁ[無能者]なんて職見たらそんな反応になるわな。俺だって可哀想とか思っちゃうもん。あー俺可哀想だな。
「全然そう思ってないのです」
「…人の心読むなよ」
「仕様なのです」
「そうか。仕様ならしようがないな。」
「………」
いやツッコめよ!?俺すごい滑って可哀想な人みたいになっちゃってるじゃん!!
やめて!そんな冷たい目線を送らないで!
「ここなのです」
スルーですねはい。
俺を無視して足を止めたシェイナは目の前にある大きな建物を指さす。
看板には「クエスト案内所」って書かれてる。
あぁ、そう言えば始める前にチラッと見たな。友達が持ってた「GoG」のガイドブックにも大きく写真で載ってたから自然止めに入ったのかも。
…あれ?ガイドブックあったんだ。買っとけばよかった。
何はともあれここがクエスト案内所なのは間違いないわけで
「ここで何をしろと?」
「もちろんクエストを受けるのですよ」
武器もない、防具もない、何も無い状態でクエストへ行けと?ブラックだなこの世界。
「何もそこまでは言ってないのですよ!取り敢えずクエストを受けてから装備やら何やらを揃えた方が都合がいいのですよ!!」
なんだ、最初からそう言えってんだ。ったく、これだから幼女は…
「幼女は関係ないのです!」
そんなこんなで適当にクエストの用紙をひっペがして受付の爽やかなお兄さんのとこに持っていて無事クエスト受注は完了。
次は武器と防具を揃える為冒険者通りへ行く。
「因みになにを受けたのです?」
「モンスターの討伐」
何か危険的なビックリマーク書いてあったけど報酬よかったから取り敢えずそれにした。金欲しいし。
冒険者通りには初心者向けの武器、装備品等の品揃えが結構良くて値段も安い。オレが持ってる所持金はゲームを始めた直後からある10000D。
Dって言うのは日本で言う円と一緒のやつ。「デト」って言うらしい。
「これとかいいのですよ軽くて耐久性も良いのです。何より安い!ここなのです」
「じゃあこれ買うか」
「えっ…?いいのです?」
え?何言ってるのこいつ?自分でこれが良いとか言ったやないかい。なんで聞き返しとるん?
おっと思わず変な口調になってしまった。
驚いた顔で俺を見るシェイナを無視してオススメしてくれた影踏(シャドウニーク)装備一式を買った。およそ8000Dだ。一式これなら確かにリーズナブルだ。
残った2000Dは全部回復薬(ポーション)とか副装備に使った。
よし、これで冒険に行く準備は出来たな。
「それではレッツゴー!なのです!」
「……」
「……」
俺がジト目でシェイナを見つめると汗を垂らし目を泳がせる。
ふっ、騙されんぞ。
こいつ案内までとか言ってずっとついてきてたからな。
「俺は知ってるぞ。お前…」
「うっ…」
俺はシェイナを指差し決めポーズを取る。
「ボッチゲーマーだろ!」
「ふぇ…?」
「いやードンマイ!友達いないからってゲームに来たけどゲームでもリアル性格が出て中々友達が作れない可哀想なクソ幼女!」
うんうん。しょうがないなこればっかりは!ゲームでも性格でちゃうのは仕方ないし、ボッチなら誰かとゲームしたいなーなんて思うのは当たり前の思想だからな!しょうがないから親切にしてくれた礼として暫くコイツといてやるか。
俺が納得の表情で頷いているとプルプル震えているシェイナが突然笑いだした。
「もー…こんな人初めてなのですよ…ぷふっ…」
お腹を抱えて笑うシェイナ。心做しかさっきより明るく見える。
「その通りなのです。だからジント。一緒に行ってもいいですか?邪魔はしないのです」
「おう。暫くよろしくなシェイナ」
「こちらこそ!よろしくなのです!ジント!」
こうして唾吐きクソ幼女…もといミラールシェイナと、初めてのクエストに向かった。
一次職「無能者」の俺の二次職が「???」三次職が「???」そして… @Rlqsia
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。一次職「無能者」の俺の二次職が「???」三次職が「???」そして…の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます