エピローグそのものを終わらせるわよ

生活排水の流れるような、けれども緑の藻が流れにそよいでいる表面は美しいその川に、鴨が滑空してきて着水した。


ぽちゃぽちゃと音のするその川と、土手をもう一つ挟んだ一級河川とのその間に位置する川原がわたしと守護霊互助組合の決戦の場所だった。


組合員全員対わたしひとりという対戦だけれども全く恐れはない。


ジコチューのシュゴレーが何人いようともそこに『互助』などない。あるのは自分の守護したい人間さえ守られていれば他の人間もシュゴレーもどうなろうが知ったこっちゃない、という分かり易すぎる論理だけだわ。


「行くぞ」

「どうぞ」


外面も内面も多種多様の人間たちに『取り憑いた』シュゴレーどもがワンパターンの一様な攻撃に徹して攻めてくる。


「しょおーっ!」

「どいて」


1体。


「どりゃあーっ!」

「邪魔よ」


2体。


「どっせーっ!」

「えい」


3体。


「死ねーっ!」

「あなたがね」


4体・・・・


いい加減飽きてきた。それにごく純粋な疑問として訊いてみた。


「なんでいっぺんにかかって来ないのよ」


シュゴレーたちは答える。


「規程なんだ」

「規程?」

「組合の内部では団結権が認められていないのだ。団結は反乱につながるからな。コンプラ違反はできんのだ」


はあ・・・世の中どこでもコンプラか。そもそも存在がコンプラ違反みたいなやつらのくせに。


「わかったわ。わたしが最後にアンタたちを団結させてあげる」


そう言ってわたしは一級シュゴレー抹消士養成講座で習ったスキルを応用する。


「ええと。一縄いちじょう打尽! てへてへ」


小道具の縄を投げた。

語尾の『てへてへ』は儀式みたいなもの。


わたしの縄でシュゴレーたちが括られて「一致団結」した・・・ように見える。


「とう」

「うわわわわーっ!」


みんな、溶けていく。

姿形なく溶けていく。


でも、これでシュゴレーが全員いなくなったわけじゃない。

互助組合なんていうよくわからない団体メンバーがいなくなっただけで、他にもゴマンとシュゴレーはいるので、わたしもしばらくは生活の糧を失うことはないだろう。


夕日を浴びながら、わたしはタバコに火をつける。


両切りの、フィルターのない短いタバコ。


ショート・ピースを束の間の平和、なんていう風に訳すかどうかは人それぞれだろう。


でも、これでこの物語は終わりにせざるを得ない。


さよなら、みんな。


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