2人の男は鈍色の空に何を思うのだろうか

@male

第1話 回想及び導引

「ごめんなさい、本当にごめんなさい、必ずいつか迎えに来るわ」

土砂降りのなか軒先を叩く雨の音にかき消されてしまいそうな小さな声で女性がぽつりと呟く


孤児院の前に置かれた籠の中には小さな赤ん坊の兄弟

泣き声と雨音だけがいつもより暗い夕暮れに響く


時は少し前に遡る

この赤ん坊の父親は暴力を働き、酒に溺れ、ギャンブルに明け暮れる日々、会社の金を使い込んでクビになりそこから堕落した日々が続いていた。

ある日パチンコで大負けした夜、酔っ払った勢いで女性を襲った

勿論即逮捕、あっさり豚箱行きだった

母親は泣いた

泣きに泣いて腹の子の事を考え更に泣いた

母親は産んだ

しかし、父方の親戚からは「お前がきっちりやることをやらないからあの子は他の女に欲情したんだ、全てお前のせいだ」と怒鳴られる日々

鬱になった

死のうと思って死にきれなかった

それでも子が大事だった

現実に目をやると空の財布

もう限界だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

2人の男は鈍色の空に何を思うのだろうか @male

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ