完結おめでとうございます。
圧倒的なラストシーン、そしてエピローグまでキッチリ読ませていただきました。
本格的なあらすじと「補陀落渡海」の五文字がタグに入っているのを見て、絶対読もう! とフォローし、ページを開いてからは怒涛の勢いで一気読みしてしまいました。
内容については他の方のレビュー通りなので省略しますが、とにかくディテールの作りこみが凄い。巷のウェブ小説はえてして何もかもを簡略化しがちなのですが、この小説ではいっさい手を抜いているところがありません。
まず登場人物の背景がしっかりしています。何気ない行動や、語られる時代背景に「主人公たちが学術調査に来た大学院生である」ということが納得できるリアリティがあります。日子島の怪しげな生態系やそこに潜むモノたちのバックボーンについて語られる内容も、作者さんがしっかり情報収集して(あるいは持ち前の知識を活用して)書き込まれているのがわかるのです。
おかげさまで、世界観に招かれた一読者として安心して物語の進行を登場人物の手にゆだね、彼らの知識や行動に純粋に驚いたりハラハラしたりできました。
脱出不可能な孤島、ホラー作品として魅力的なテーマ、超常のものへの畏怖、人間のどろどろした感情――。ホラー小説のいいところがガッツリ盛り込まれた物語、心ゆくまで堪能しました。
非常に面白かったです。
どうもありがとうございました。
1994年6月、大学院生の橘川と立花は、伊豆諸島の小島を訪れた。地質学と植物学のフィールドワークの予定だった。アホウドリが飛び、シマホタルブクロの変異株が咲く島で、二人は地元の漁師の「長居をしない方がいい」という忠告にもかかわらず、夢中で調査を行った。
日が暮れると、暑さが、無数の虫が、彼らを襲った。謎の人影、鳥居、洞窟、補陀落渡海の伝説……。ひたひたと忍び寄る恐怖が、主人公たちを追い詰めて行く。
前作を拝読しました。改稿版のこちらは、構成も新たに、研ぎ澄まされた文章がいっそう深く、恐ろしく、読み手の心に刺さる作品になっています。夏の終わりのホラー、ご堪能ください。