虫との戯れ
六地蔵
虫との戯れ
幼い子どもがタンポポやネコジャラシで遊ぶ姿には、微笑ましいものがある。引っこ抜かれた植物たちが少し可哀相な気もするが、あれはあれで繁殖の役割を担っているらしい。その見返りとしての遊びと考えると、子どもとそれらの植物はある種の共生関係にあるのかもしれない。
ある虫は、キアゲハなどの人間にとって身近な蝶に寄生する。寄生された蝶は、狂ったように蜜に貪りつき、人が近寄っても逃げることはない。
これを、子どもが喜ぶ。捕まえようとする。逃げないのだから、簡単に捕まる。すると、蝶の背から突き出た寄生虫の卵管が、捕まえようとした子どもの指を刺すのだ。
この虫は、このようにして産卵する。痛みはない。少し腫れ、痒みを伴うので、蚊などによる虫刺されと区別がつかないという。
産み付けられた大量の卵は翌日には孵化し、体中に広がる。脳を始めとしたあらゆる器官に住み着く。
子どもは、死なない。しかしその体はもう虫の巣としての機能しか果たさない。体を動かすことはもちろん、声を発することさえできない。ただ、漠とした意識の中で、虫たちの蠕動だけを感じる。
幼い子どもが蝶と戯れる姿には、微笑ましいものがある。しかし、体内に卵を産み付けられるというのは、あまりいい気持ちはしない。
虫との戯れ 六地蔵 @goyaningen
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます