共通点
「へぇ、弥生もバイク乗ってたんだね」
クラスメイトの由良那がじっくりとYBを眺める。そしてその隣にはヤマハのポップギャルが鎮座している。綺麗な状態を保っているがもう四十年近くも前のバイクだ。
「私も由良那がバイク乗ってるなんて初めて知ったよ」
「ほら、ウチの学校って校則うるさいじゃん? だからあんまり言えなくてさ」
由良那はニヘッと誤魔化すような感じで笑った。
「でもよかったよ、仲がいい人で乗ってる人がいてさ」
仲がいい人……その言葉が心に引っかかった。正直誰も信用してない私がそんなこと思うはずもなかった、でも本当かどうかはわからないが、由良那は「仲のいい人」と言ってくれた。
「そうだね」と小さく返して、飲み干した缶コーヒーをゴミ箱に投げ入れた。
「それじゃあそろそろ行くね」
そそくさとヘルメットを被ってバイクに跨ろうとする私を、由良那はすぐに引き止めた。
「待ってよ、せっかく共通の話題があるんだからもっと居ようよ! 積もる話もあることだしさ」
正直めんどくさいと思っていた、でも流石に無視して逃げ出すわけにはいかない。
「ほら、同じバイク乗りだしさ」
同じ、そう初めて由良那と同じところを見つけた。共通点のカケラもないと思っていた由良那と私、でも私がバイクに乗ることで一つだけ共通点ができた。それに気づいた瞬間、少しだけど、初めて自分から歩み寄ろうとしてることに気がついた。
話を聞くと由良那は拾ってきたポップギャルを自分で直してここまで組んだらしい。そのせいか、自分から見ると異常とも思えるほど愛車を溺愛していた。
「やっぱりこの豆みたいなタンクが可愛くてさ」
しかし、元々派手な彼女には実にお似合いのバイクだった。
「弥生も随分と古いバイクに乗ってるよね、普通に買ったなら高かったんじゃない?」
「これは、その、知り合い? みたいな人に安く譲って貰って」
「へぇ、そんな人居るんだね、今度合わせてよ」
興味津々で顔を近づけてくる。きっと由良那ならあの人とも話が合うだろうけど。そうして話が進んでいくと、なぜか今度の休みに会うことになっていた。こちらの一方的な提案だが平日の昼間にバイクをいじってるような人間だ、きっといつも居るだろう。
バイク乗りと少女による夏物語。 @siosio2002
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