第42話 鶏と卵って、どっちが先なの?

〈登場人物〉

サヤカ……小学5年生の女の子。

ウサ……サヤカが3歳の誕生日にもらった人語を解するヌイグルミ。



サヤカ「ねえ、ウサ。鶏と卵ってどっちが先なの? 鶏がいないと卵は産まれないから鶏が先だって考えられるけど、でも、その鶏も元は卵だったわけだから卵の方が先だって考えることもできるよね」


ウサ「どっちが先とも言えないんじゃないかな」


サヤカ「えっ!? そんなことあるかな。どっちかが先のはずでしょ」


ウサ「サヤカちゃんは、『親』と『子』は、どっちが先に生まれたと思う?」


サヤカ「そんなの『親』に決まっているよ。『親』が先にいないと、『子』が生まれないもん」


ウサ「そうかな。ある人が『親』になるためには、その人に『子』が生まれないといけないよね。『子』が生まれる前は、その人は『親』じゃないよね」


サヤカ「うん」


ウサ「『子』が生まれたあとで、ようやくその人はその『子』の『親』になることができるわけでしょう。だとすると、『子』が先で、『親』は後っていうことにならなないかな?」


サヤカ「で、でも、そんなのおかしいよ! それじゃあ、『親』から生まれたはずの『子』の方が『親』より先にいることになっちゃう!」


ウサ「おかしいよね。これは、『親』と『子』っていう言葉の問題なんだね。鶏と卵の問題もこれと似ていて、鶏が卵を産むものであって、それと同時に、卵が鶏になるとすると、もうどっちが先なんだっていうことはね、言えなくなっちゃうの」


サヤカ「うーん……」

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女の子とウサとの哲学的会話 春日東風 @kasuga_kochi

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