僕の彼女(仮)は妖精さん⁈

本田 そう

第1話  失恋しましたです。

 よくある風景、よくある公園、よくある場所で‥‥‥

 日が落ち、街灯だけが照らされた公園のベンチ。 

 なにやら真剣な表情の男と、なにやら悩んでいる表情の女。

 そんな真剣な表情の男は女に、


 「僕と付き合って下さい! 」


 と言った。


 まあ、よくある告白である。

 下を向いたまま、男は女に手を差し伸べる。

 男は期待をした。この手を握り返して、OKをもらえる事を‥‥‥。


 が、世の中そんなにあまくないよ!

 

 女は更に悩んだ表情をして、少し考える。

 そして暫く考えて、男に言った。


「‥‥‥ごめんなさい」と。


 男は、「えっ?」とした表情で、体を動かさなくし、暫くしてガックリと肩を落とす。


 そして、フラれた男がよく言うセリフを言った。


「どうして、駄目なの」と。


 女も女がよく言うセリフを


「う〜ん、あなたは優しくていい人よ。けど……、ごめんなさい」と。


 そして女は、男をその場に残し帰って行った。


 男は暫く呆然とし、今さっきまで女が座っていたベンチに腰掛けて


 「‥‥‥またかよ。‥‥‥なんで駄目なんだよ?‥‥‥。 優しさだけでは駄目なのか? ‥‥‥」


 男はまるで魂が抜けたかの様な状態で呟くと、今度は何か体の中から、ふつふつと何かがこみ上げてきて、


 「‥‥‥なにが足りないんだよ!」


 いきなり大声を出すと、男は自分の両手の手の平を見て、


 「やっぱり僕がオタクなのがいけないのか‥‥‥」


 そう言うと、また項垂れた。あっ!因みに先程の男が告ったは腐女子である。

 半年前のコミケで知り合って、最初はお互いのアニメやラノベで話が盛り上がったが、結局最終的には、話が合わず振られた。


 で、この振られた男の名前は、太田 ヒロ。

20歳で普通にその辺の会社に高卒で就職し、普通にアパートに一人暮らしをし、普通の格好をし、容姿も普通。本人はオタクと言っているが普通にアニメを見て、フィギュアを集めることはなく、普通に暮らす普通の青年である。


 つまりは何でも普通である男である。


「‥‥‥あそこまで話が盛り上がっていたのに、付き合うて事になると、別の話てことになるんだなぁ〜」


 暗くなった公園のベンチに腰掛け、一人気落ちして、失恋のショックで‥‥‥なんて思いました?みなさん。

 が、この太田 ヒロ、何か思ったのか、腰掛けていたベンチから、スクッと立ち上がると叫んだ。


「やっぱり俺の嫁は『カンナちゃん』だけだ!」


 因みにカンナちゃんとは『魔法乙女カンナ』と言うアニメで、今は殆んど見かけなくなったツインテールの可愛い女子高生が主人公の物語である。




◇◇◇



 

 夜空に光る小さな星達‥‥‥。

 その内の一つの星がポロっと一つ落ちてきた‥‥‥。

 とある場所のとあるレンタルビデオ屋に。


 太田ヒロはいつもの馴染みのレンタルビデオ屋に寄っていた。そしていつものアニメコーナーの所を見ていると、


「おおっ! カンナちゃんの新作DVDがあるじゃないか」


 喜び直ぐにそのDVDを手に取ると‥‥‥体に電気の様ななにかがピリッと走った。


 「えっ?‥‥‥なんだ今のは?静電気?」


 はて?と考えて‥‥‥


 「まぁ、いいか」


 そう言うとカウンターにDVDを持っていった。レンタルビデオ屋から出て家路の途中、電柱の下にあるダンボールに目がいった。そしてダンボールの中からか細い鳴き声が聞こえた。


 「‥‥‥ネコ? 子猫の鳴き声がする」


 しかしその鳴き声は、今にも消えかかりそうな声だった。そしてダンボールに近づき、中を覗くと小さな三毛猫が震えながら小さな声で鳴いてた。


 「こんなとこに捨てるのかよ。春だけど夜はまだ寒いんだぞ‥‥‥」


 「ニャ‥‥‥ニャァ‥‥‥ニャ‥‥‥」


 「かなり弱ってんじゃないかよ。けどうちはアパートだし‥‥‥」


 か細い泣き声を弱った体で、力いっぱいだす子猫を見て、


 「‥‥‥アーッ!モーウー!」


 小さな三毛猫を手に取ると、自分のジャケットの中に優しく包み込むように抱き、急いで家に帰った。


 「ガチャ」と、家のドアを急いで開け、


 「えっ〜と、バスタオル、バスタオルはと。あと暖房、ミルク‥‥‥」


 バタバタとしながら部屋からバスタオルとミルクと小皿を出すと、バスタオルで子猫を包み込むと、優しく摩りながら


 「頑張れ!、死ぬなよ。頑張れ!」


 そう言いながら一晩中太田ヒロは、子猫の看病をした‥‥‥







 『この人なら‥‥‥願いを叶えて‥‥‥あげても‥‥‥』







 翌朝‥‥‥


 「う〜ん、何か指を……、ハァッ!子猫は?」


 目を覚ますと子猫が左薬指をペロペロと舐めていた。


 「はぁ〜っ(安堵のため息)よかった。元気になったんだな、と、お前お腹減ってるだろう? ミルク飲むか?」


 小さな皿にミルクを入れ、子猫の前に出すと子猫はペロペロと飲み出した。


 「よかった‥‥‥なんとか元気になったみたいで‥‥‥て、よくないかな? こいつどうしたら‥‥‥引き取ってくれる人はいなし、て僕、友達少ないんだよな。う〜ん‥‥‥ヨシ!駄目元で大家の叔父さんに相談してみよう!」


 子猫を撫でながらそう言うと、テーブルに置かれたレンタル袋に気づくと、


 「あっ、そうだ!カンナちゃん見るの忘れてた。この時間じゃまだ叔父さん達寝てるし、DVD先に見るか。カンナちゃん、カンナちゃんっと」


 レンタル袋からDVDを取り出しデッキにセット、暫くして魔法乙女カンナのタイトルが出てきたが、なにか様子がおかしい‥‥‥タイトルのまま先には進まない。


 「えっ! デッキの故障か?」


 デッキの取り出しボタンを押そうとした瞬間、テレビの画面が眩しく光り出すと声が聞こえた。


 「‥‥‥なんだ!‥‥‥いったい?‥‥‥声が聞こえる?」


 眩しさのあまり両手で目を覆った。暫くすると目が慣れたがまだ声が聞こえ、恐る恐る目の前を見ると、


 「‥‥‥誰だよ?何処‥‥‥に居る?まさか、お前か?」


 目の前にいる子猫に言うが「ニャァ」としか言わない。


 「だよな。お前じゃないよな?じゃぁいったい‥‥‥」


周りをキョロキョロとすると、テレビの方から声が聞こえて、そこに目を向けると


 『ここです。ここ!』


 「『ここです』て言われても、どこだ……うん? あっーーっ!」


 白く映ったテレビの画面には小さな髪の長い女の子?らしい人が映っていた。


 「‥‥‥ゲェッ! さっ、貞子!」


 『誰が貞子ですか! 誰が! 私は星の妖精です』


 テレビの画面の中の人物?指差し言いますよ。で、


 「星の妖精?星の………プゥッ、妖、プゥッ妖精ぃ、プゥッ、あはははっ」


 『なんで笑うんですか!失礼な人ですね。プンプン!』


 「だっ、だって、よっ妖精?妖怪の間違いでは?」


 笑いながらツッコミを入れると、画面の中の妖精さん?が機嫌を悪くしたのか、


 『笑うなら笑っていいですよ〜だぁ! せっかく願い事を一つ叶えてあげようと思いましたけどぉ、もういいですぅーっ!』


 「あははは‥‥‥えっ?‥‥‥願い事だって!本当に?」


 『ええ、 そうですう!。けどあなたは信じない見たいですから、いらないですよねぇ、願い事!』


 妖精さん?は画面の中を機嫌が悪そうに右に左に動いてますよ。で慌てる太田ヒロは


 「し、信じます、信じます。妖精さん。どうか許してください!」


 画面に向かって土下座をしますよ。それを見た妖精さん?は


 『どうしようかなぁ〜〜』


 とチラリと土下座をするのを見て、


 『‥‥‥わかりました、許してあげます』


 そう言うと、太田ヒロは「よっしっ」と小さくガッツポーズをする。で、


 「所で妖精さん、願い事を叶えてくれるて言うけど、僕は妖精さんに何かしたかな?て!、もしや、僕の命と引き換えに‥‥‥」


 『えっ? 違います、違います!』


 「じゃぁ‥‥‥僕の大事な物と交換!」


 『それも違いますぅ!』


 「それじゃぁ、何だよ」


 『その子猫です』


 子猫に指を差し妖精さん?は言います。


 「子猫?また何で?」


 『この子猫は私の星の元の下に生まれたからです。けど生まれてすぐに捨てられた。そして死にかけた子猫をあなたが助けてくれたんです。ですのでそのお返しに一つ願い事を叶えてあげようと』


 「そう言うことか。う〜ん、願い事ねぇ‥‥‥アッ!」


 『願い事を増やして、は駄目ですよ!』


 「えっ?‥‥‥‥読まれてたか。けど、急に願い事ていっても、‥‥‥願い事、願い事‥‥‥一つだけだもんなぁ」


 腕を組んであーでもないこーでもないと暫く考えますよ。


 『あの〜う、まだですかぁ。あれから一時間は経ってるんですけどぉ。優柔不断な男は彼女ができませんよぉ〜』


 「うるさいなぁ、彼女なんて‥‥‥彼女?」


 太田ヒロは昨日の告白のシーンをフッと思い出していた。


 そして‥‥‥


 「‥‥‥妖精さん‥‥‥決まったよ、願い事!」


 『エッ! 漸く決まりましたか‥‥‥では願い事を!』


 画面の中の妖精さんはやれやれと両手を顔の横に上げポーズを取ると、


 「僕の願い事は‥‥‥妖精さん! 僕の彼女になれ! カンナちゃんのような姿の可愛い彼女になれ!」


 テレビ台の横に置いてある、太田ヒロが唯一持つカンナフィギュアを手に取り画面に向かって言った。


 『彼女ですね‥‥‥彼女‥‥‥彼女‥‥‥うん? ‥‥‥えーーーっ! 私があなたの彼女ぉーーー!』


 驚く妖精さんが言うと、テレビの画面がまた光り出す。それと同時に、太田ヒロが手に持っていたフィギュアも光り出した。


 『ちょ、ちょっと待って下さい! この願い事はありなんですかぁーーー!』


 テレビの中の妖精?が慌てる様に言うと、妖精?に向けて天から声がかけられた。


 『我が星の妖精よ』


 『あっ! 精霊様!こんな願い、ありなんですか?!』


 『ありです』


 『そ、そんなぁ〜っ! 私にも選ぶ権利がぁ〜』


 『頑張りなさい』


 精霊が言うと画面から金色の光りが出てフィギュアの中に入った。

 そして辺りがまたパッ!と光出すと、辺りが静まり返る‥‥‥。




◇◇◇




 暫くして太田ヒロは目を覚ました。


 「‥‥‥う〜〜ん。なっ、なんだったんだ今の‥‥‥」


 周りを見渡すと何も変わりがないのを確認した‥‥‥そして、テレビの画面を見ると、画面はDVDのトップ画面になっていた。


 「‥‥‥あれは夢だったのか?」


 起き上がろうと右手を動かした時、「ムニュ」と、何か柔らかい物に触れた。

 で、触れた方を見ると‥‥‥


「‥‥‥えっ!‥‥‥ええええええ!」


 太田ヒロの右横には可愛いらしい女の子が寝ていた。助けた子猫と一緒に。


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