語彙について思ったこと

カウンターポスト

第1話

 最近、ある界隈で語彙に人気が集まっている。語彙カーリングに語彙将棋、そして語彙大富豪。


 そこで語彙とついた様々なゲームが日夜開発されているのだという。


 ということで今回は語彙について考えていきたいと思う。


 まず語彙と言われた時に最初に思い浮かぶものはなんだろうか。私は「私は語彙力がないからこれが美味しいとしか表現できないけどとにかく美味しいので食べて欲しい」というようなことをSNSで良く見ることを思い出す。


 この時、語彙力というものを表現の幅、もっといえば美味しいを別の言葉で表現できるということを説明するために使っていると推測される。


 しかしそれは美味しいということを表現するために必要だろうか? 美味しいなら美味しいの一言の方が簡潔に表現できるのではないか。私はそう思うのだ。


 例えば「これは味の宝石箱や~」などというコメントを食レポで聞いたことがあるが、これは聞いただけでどのような味かすぐさま判別するのは難しいように思う。味の宝石箱? 宝石箱というのは宝石が入った箱であり、つまり転じて味という多種多様の宝石がたくさん詰まっているものなのだろう。


 このように考えるまでには少々の時間を要するものではないだろう。美味しいの一言で本当に不足なのだろうか。もちろんレポーターという職業で様々な食べ物に対してコメントしなければならないためにこういう表現になると納得はできるが、果たして私たちがそのような回りくどい表現を使うことは必要なのか。


 複雑な表現には聞き手側にもそれ相応の知識が要求されることがある。この場合だと宝石箱を知らなければ何を言ってるかわからないということもあるのだ。


 ここで、語彙大富豪の話を少ししたい。語彙大富豪とは数人のプレイヤーが単語が書かれた五枚のカードを用意し、それを場にある単語に勝てるように出し最初に手札が無くなったプレイヤーの勝利というゲームだ。


 このゲームではあるプレイヤーの出した単語をその他のプレイヤーが知らず、知らないために勝ちか負けかもわからず戻されてしまうことがある。これをプレイヤーたちは知名度補正と呼んでいるが、これは現実にもまったく当てはまるように思う。


 どれだけ高尚な言葉でも、知らなければわからないし伝わらないのだ。


 つまり語彙力とは、たくさんの言葉を知っていることで様々な表現を理解できる能力であり、その場に応じて伝わる言葉を選択できる能力だと私はそのように思う。

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