第2話《目が覚めたら異世界!?下》
さて。ここらで彼らについて少しだけ紹介しておこう。
初っ端から叫んでいたあの少年。
名前を
県内の有名私立高校“ラヴェーヌ学園”に通う2年生だ。彼は中学時代に出会ったとあるラノベにどハマりし、今に至る。確認するまでもなく厨二だ。先程の興奮ぶりからもわかるだろう。まあ、本人は自覚していないが……
クラスのムードメーカーであり、人気者ではあるのだが、この特徴(厨二)のせいでなかなか彼女ができない。クラスの女子は口を揃えてこう言う。
「あいつはちょっと……」
そして、ユウトのお尻に押しつぶされていたあの可愛らしい女子。
彼女の名前は
ユウトのクラスメイトであり、生来の面倒見の良さと強気な態度からか、クラスの女子のリーダー的存在である。そしてなによりも大切なことだが、華音は、ユウトを黙らせることのできる世界で唯一の人間だ。
そして最後に。間一髪!ユウトの命を救った恩人であり、彼のクラスメイトでもある男子。
名前は
四十七年連続でインターハイへ進出している強豪゛空手部゛の主将である。小さい頃から空手を習っており、その甲斐あってか、体格がとても良い。まさに巨漢!
ちなみに三人は幼馴染だったりする。
さあ!お話はここまでにしよう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「みなさん!?無事ですか!?怪我はありませんかッ?」
突如、荒野に悲鳴じみた声が響き渡る。
2年B組の担任である、
「先生!華音が見つかりませんっ!」
「ッ!?本当ですか、ユウトくん!?」
「嘘つくな、このばかユウト!!」
ドゴッ!
「アーーッ!?」
「先生、私を含めたクラスメイト37人、全員揃ってます!」
「ありがとう、華音ちゃん!はぁ・・・・良かった。クラス全員揃って、とりあえずひと安心ね。」
最悪の事態を覚悟していたのだろう。安堵の表情を浮かべ、そのまま地面にペタンと女の子座りしてしまう薫先生。
それを見て悶絶している男子生徒諸君。そんな彼らに突き刺さる絶対零度の視線。
ガクガクブルブル……恐怖に青ざめ、生まれたての小鹿のように震え出す男子達。その視線の先には……
いた。“不〇明王”達が。
否!クラスの女子達が!
あ、あれ?あれれ?背後にうっすらと鬼のような姿が……なんと!右手に剣を、左手に
あ、一人二人と白目を剥いてドサリ。倒れてしまった!よほど怖かったのか。そう。男は女には絶対に勝てないのだ!!
話がそれてしまった。ところで、薫先生は今年の4月にラヴェーヌ学園に就任したばかりの新米教師である。本来ならば少なくとも10年間は他の学校で研鑽を積まなければいけないのだが、彼女は23歳という歴代最年少の若さでこの学校へやってきた。そのため、校長をはじめとする大先輩方は多大な関心をもって薫先生を見守っている。
しかし、彼女に関心を持っているのは先生方だけではない。言うまでもなく男子生徒諸君だ。薫先生は153センチという低身長。それに加え、色白小顔でお人形さんのように可愛い。しかしそれだけではない!周囲から注目されるというプレッシャーに加えて生来の真面目さもあり、彼女はとても、それはもうとても一生懸命に働くのだ。しかし、世界の創造主たる神様は何故こんなにも非情なのか。薫先生はとてつもないドジっ子である。彼らの心臓を射抜いたのは他でもない。薫先生のこの残念すぎるギャップなのであった。
ほら今も。立ち上がろうと地面に手をついて、尖った石が手のひらににのめり込んだ。
「ーーーーッ!!」
痛みに耐えることが出来ず、バッと石から手を離した。背中が弓なりに反っていく。薫先生の後頭部が、地面に吸い込まれるように沈み……ゴツンっ!
「ぐぅッッ!」
見事なクリーンヒット。あまりの痛みにのた打ち回る先生。そんな残念教師を見て、
「くっ!俺の薫ちゃんが。早く助けねえと!!」
「おい待て!俺の薫ちゃんだぞ?俺が助ける!」
「馬鹿野郎!薫ちゃんは俺の彼女候補だ!お前らみたいな不器用には任せられん!」
謎の争いが始まった。
見かねた健吾とユウトが、
「「おい、お前ら!それ以上はやめとけ!さもないと……」」
それ以上は口に出すことができなかった。見てしまったからである、憤怒の形相で剣を構える奴らを。
((奴らに殺されるから!!))
最後だけ心の中で叫び、二人は両手の手のひらを合わせて目を閉じた。黙祷を捧げるためである。
え?誰にかって?
言うまでもないだろう。
健吾とユウトの心の叫びが届いたのか、ギギギと油を差し忘れたロボットの如く背後を振り返る男子生徒たち。そして彼らは目にした。轟々と音を立てて燃え盛る炎を纏った幾数もの
『紅蓮の炎に灼かれて滅びろ!!』
と。
ひとりの男子ははこう思った。
(はぁ、俺の人生もここまでか。たったの16年間だったけれど、楽しかった。故に、悔いはない!!あ、まって、やっぱあるわ!薫ちゃんと結婚したかったぁ。)
また、もうひとりはこう思った。
(あぁ、昔の光景が次々と蘇ってくる。これが走馬灯か。お父さん、お母さん、今までこんな馬鹿な俺を育ててくれてありがとう。)
そして。
ドッカーン!!
「ああああああぁぁぁぁぁぁァァァ……」
成仏完了☆
(みんな、天国ではもう少しまともになれ。)
(みんな、薫ちゃんは俺がもらった。)
健吾とユウトは黙祷しながら心の中でそれぞれ呟くのであった。
我が校の修学旅行は異世界でサバイバル〜魔法とスキルとチートで最強を目指すそうです 雪風だいふく @yukikaze_daihuku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。我が校の修学旅行は異世界でサバイバル〜魔法とスキルとチートで最強を目指すそうですの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます