プロローグ
あの日を最後に、二度と「彼女」と会うことはなかった。
祖母に「彼女」が話してくれたことや
“行きべきところに行った”ことなどを話すと、そうかい、とだけ言い静かに泣いていた。
そんな祖母はその年の秋の終わる頃に亡くなった。老衰だった。「彼女」が祖母を連れいて行ってしまったような気がしたが、なぜかそれで良いと思えた。“むこう”で「彼女」は祖母に会えただろうか。それだけがとても気がかりだった。
「僕」は毎年、夏になると「彼女」の夢を見る。何か会話をしているはずだが、目が覚めると内容を忘れてしまうのが常だった。ただ、目が覚める直前に見る「彼女」のあの向日葵のような笑顔だけがしばらく脳裏を離れず、それが「私を忘れないで」と言っているように思えた。
あのビー玉は「僕」の宝物になった。
「彼女」との繋がりを証明できる唯一の物だ。ビー玉のむこうに、確かに「彼女」はいた。
いつか、「彼女」に会えるかもしれない。その時は何て言おうか。なんだか楽しみだ。
ビー玉のむこうの彼女 桔更 @kisara0728
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