第22話(最終話)【美少女、空き地にたむろう不良に絡まれる】(俺たちの戦いはこれからだ! その四)
二学期の始まった初日の朝、街に或る『変化』が起こっていた。
ネコたちが棲みかにしていたあの空き地にタチの悪そうなどこかの学校の生徒達がたむろっていた。制服の着こなし方がだらしなく瞬間的に〈関わらない方がいい人達〉とわたしの脳が判断していた。
なるべく目は合わせたくない、見ちゃいけない。だけとチラと見てしまったところだいたい7、8人くらいの男女の集団だった。見ちゃったんだけど見ないようにして一心不乱に歩き続けた。
学校帰りの正午過ぎ、『不良』と呼ぶ以外例えようのないその人達はまだ空き地にいた。朝見たときよりも大きなやかましい声を出し騒いでいた。
一瞬だけ彼らに視線を送りすぐ目を逸らした。
今日9月1日だってのに学校へ行くつもりがないんだろうか。少しは近所迷惑ってもんを考えなさいよ! 決して口にしないことばを思いながら足早にその場を通り過ぎる。
二学期が始まり二日目の朝が来た。なんとなく〝あの空き地の前を通る〟というのが気が重い。通りたくない。通学路を少しだけ変えれば事は簡単だ。
だけどあの空き地には……
ネコたちが帰ってくるんだ——
今ネコたちが空き地に戻ってきたらどういうことになっちゃうんだろう……
なんか『ああいうの』ってネコを虐待しそう。いいえ『虐待』なんて表現は生ぬるい。ネコたちに危害を加え最終的に殺してしまうかもしれない。その様子を動画に撮ったりしてネットにアップしたりするんだ。
まずいなあ……
人の心、人間心理とはふしぎなもの。ソコは避けた方が良いと理屈では解っているのについつい近づいていってしまう。『怪奇スポット』に人が引き寄せられるというのは、そういうことなのかもしれない。
いやいや、そういう問題じゃない。とかなんとか思いながらわたしはあの空き地の前を通る通学路を選択していた。9月2日、昨日と同じように彼らがいた。
ただ昨日と違っていたことがあった。彼らは最初から道路の方に視線を固定させてたのだ。そこに空き地の様子が気になってしかたないわたしが通りかかる——
目が合ってしまった。
しまった! と背筋にびゅっと流れる悪寒。
一人の不良少女がパーカーの裾を翻し一目散にこちらに駆けてくる。まるで短距離の選手みたくあっと言う間もなく距離を縮められあっという間にわたしの進路に立ち塞がれた。わたしの身体が身動きをとれなくなっている。視界に奇妙な迷彩柄のパーカーが目に入っている。まだ暑いのにパーカーなんて日焼けを気にしてるのかなって……いやいやいや、こんなのと会話をしようとするなっ、わたしっ!
おそるおそる顔を上げ至近距離でその顔をみれば目つきは鋭く荒んだオーラを発しまくっている。紛う事なき本物の『不良』だ。
「ねえ、昨日もあたし達に気づいてたよね? 行きと帰り」不良少女が訊いてくる。
「いえ、そんな……気づくだなんて」
「あたし達がいるのに気づいてたよね?」
完全に絡まれちゃってる!
「はい……」
「ならなんで無視するわけ?」
「無視なんて、その知り合いだったら声かけるけど知らない人には、ふつう声かけないかなって」
「ふーん」とその不良少女はわざとらしい返事をした。
「あの……わたし学校があるのでそろそろいいでしょうか……?」
「学校ね。たいへんそうだよね」と妙な同情をされる。
あなたも高校へ顔を出した方がいいんじゃないの、と言いたいけどこんなのにそれを言ったら次になにをされるか分かったもんじゃない。
「じゃ、ひとつだけ訊きたいんだけどさ」不良少女はまだわたしを開放しそうにない。
「な、なんでしょう?」
「なんでそんなに脅えてるわけ?」
「そ……それは——」すっかりしどろもどろ。
「ま、いいか。急いでるんだよね?」
えっ? とわたし。もしかして顔に似合わず良い不良(?)かも。
「帰りもここに来てよね。待ってるから」
はぃっ!?
「もうとっくにその顔、覚えてるから」
顔を覚えたって言われてる!
「ねえ顔上げてくんない?」
わたしはいつの間にか下を向いていたらしい。顔を上げると不良少女が射抜くような目でわたしを見ている。この不良少女だけじゃない。空き地にいるその仲間もわたしの方に鋭い視線を放っている。
わあああああああ————
「早く行きなよ」と不良少女にニヤリ顔で言われてしまう。
わたしはようやく解放された。
しかしコレはとんでもない人間だと悟った。わたしを学校に行かせないなんてマネはしない。警察沙汰にならないよう真綿で首を絞めるよう絶妙の手加減で攻めてきてる。
新学期早々たいへんなことになってしまった。こんなにもタチの悪いのに絡まれるなんて。わたしは帰り道この空き地に寄らないと後で不良たちに何をされるか分からない。
どうすればいいの?
或る一つの考えはすぐにも浮かんでいた。
それは『僕のお父さんは刑事だぞ』とか『私の兄は警察庁刑事局長だぞ』系の対処法だ。
本当に警察に知り合いがいればいいけどそんな人はいない。でもわたしには宇宙人の友だちがいる。ただでさえ宇宙人の上に無造作にとんでもないことをやってのける異常スケールな友だちだ。
宇宙人と不良が戦って不良が勝てると思ってるの!? ロインに頼めば不良たちなんて怖くないんだから! 勝てる、勝てる、勝てる、絶対勝てるはず。不良なんか蹴散らしちゃえ!
もはやロインがわたしの最後の切り札となっていた。
学校が終わって遂に放課後となってしまった。
いくら心の中で『なにをしでかすか分からない宇宙人、わたしの心の友ロインがただでは済まさないんだから』、と思っても今そのロインはいない。わたしは仕方なくあの空き地へと重い足を引きずっていた。
嫌だなあ……なんでわたしが不良なんかに目を付けられちゃったんだろう……
その問題の空き地が視界に入ってきた。
いないといいなあ……
あっ、いないっ。
良かった——
「わっっ!!」
「ひえやぁっっっ!」
自分でもどこから出たのか分からない声が出てしまった。後ろを振り返ると朝と同じ不良少女がパーカーのポケットに両手を突っ込んで薄笑いを浮かべている。
ただ朝と違うところがある。
他の不良たちがいない……
そうよね、不良が空き地にずっとたむろっているはずがない。空き地なんていても楽しいトコじゃない。とは言えコンビニ前も楽しそうなトコじゃないけど……
「ね、あたしお腹空いてんだけど、なんか食べさせてくんない?」
ハ?
なにを言ってるんだこの人は、と思った。
「早く〜、なんか食べたい」
これっ、これは『おごれ』ってことで、形を多少変えた『カネ出せよ』に違いない。自分の中のどこからかおかしな勇気が湧いてきた。ここで言われるままにおごってしまったら……後で間違いなく負の財産になる!
一度タカられるとこの先ずっとずっとタカられる。世の中とはそういうものだ。そうしないため、させないためには——
逃げるっっ!
わたしは一目散に不良少女を無視して一目散に走り出す。逃げるは恥だが——じゃなくて逃げるが勝ち! 三十六計逃げるに如かずだっ! 幸い一人だけだ。一人だけなら逃げ切れる!
「逃げんなっ!」と後ろから声が鋭く飛んでくる。
逃げるなと言われて止める人間がいるもんか! まるで思考がドロボーさん。
しかし襟首に感じる触感。たちまちのうちに追い着かれていた。だけどわたしは止まらない。強引に走り続ける。無我夢中。どれほど夢中で走ったか。いつの間にか襟首の触感が消えていた。
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……
どうしよう、家とは正反対の方へ来ちゃって……ここから遠回りで家に帰るのかぁ…………だけどあんなのに家の場所を突き止められたら大変だ。下校時は下校時で大変だなぁ。あっ、でも登校時の方が大変なのかも。なにしろこの制服で行き先はバレてるから。待ち伏せの危険はむしろ登校時。もはや行きも帰りもない。不良に絡まれたらどっちも同じだ。
この日は遠回りに次ぐ遠回りでなんとか無事家にたどり着く。
はぁ、はぁ、別の意味で息が荒い。心臓がまだドキドキしてる。
なんかあの不良に目を付けられてタカられかけてる。理不尽だ。
このままわたしは日々びくびくしながら過ごすの?
いつまでこの生活が続くの?
冗談じゃない! この先ずっとずっと脅えながら逃げながら暮らすなんて。
そうだ。思い出した!
『宇宙空間すっとばし通信ツール』。
何だか解らない謎の通信アプリをロインはわたしのスマホにインストールしてくれてたんだ。わたしは無意識にスマホを握りしめていた。それを使えばロインを呼べ——
慌ててその考えを打ち消した。スマホを両手に持って胸に押しつけ天井を見上げる。
確かあまりお金が家に無くてここまで来る燃料代に困ってるようなことを言ってた。気安く呼ぼうとしちゃいけないんだ——
しかしこれは合理化だ。わたしがわたしに言い訳してるだけなんだ——
わたしは恐れている。
わたしが不良に絡まれてるっていう事をロインに言った後のことを。
(ごめ〜ん、『ふたばどーり・みさ』さん、燃料代が惜しいから行けないんだ〜)とかいうセリフなんて聞きたくない。それを言われてしまったわたしとロインは、その後も友だちだと言えるんだろうか?
怖くて怖くてとても助けを呼べない。
わたしはもう——『俺たちの戦いはこれからだ!』なんだから!
あの不良さんにはもう——『わたしに絡まないで』って言うしかない。
わたしは友だちなんて地球にいないけど『お喋りする相手』が誰でもいいなんて、そんなことはない! 人を選ぶ権利はあるんだから!
初めて美少女学園長が真っ当なことを言っていたと思った。
しかし二学期の始まった三日目、わたしは逃げていた。登校ルートを変えてしまっていた。そんな9月3日。
我ながら情けない……勉強もろくにできなくなってる上に意気地も無いなんて……
この日は一日中自己嫌悪で過ごしていた。
下校時、わたしは蛮勇を振るっていた。遂にあの空き地ルートを選択してしまっていた。もう後には引かない。後になんて引けない。なにかおごってくれなんて要求されたら絶対断るんだから。断るんだから。断るんだから!
いよいよあの空き地が視界に入ってきた。わたしなお歩いている。だんだんと空き地が近づいてくる。心臓の鼓動が早くなってきたような気がする。
そぉっと空き地をのぞき込む。なー、という啼き声。
えっ!?
そこにいたのはチャトラちゃんでその傍らにあの不良少女がしゃがみ込んでいた。すた、すた、と、なんにも意識せずわたしの足が勝手にそこへと進んでいく。
あの不良少女がチャトラちゃんを撫で撫でしていてチャトラちゃんもおとなしく撫でられていた。
「カワイイよね」わたしの口がそう喋りだしていた。新たなネコが来たんだ——でもネコって確か『ナワバリ』があったはず。戻ってきたら抗争になっちゃいそう……
「かわいい?」不良少女がこちらを見ないで口を開いた。
「カワイイから撫でてるんじゃないの?」そう思わず問い返していた。
「このネコがかわいいんだ?」
なにかとても物騒なことを言ったような気がする。
不良少女はチャトラちゃんを撫でるのを止め別の話題に話しを振った。
「そう言えばさー、この辺ヘンな噂があるよねー」
「うわさ?」
「この空き地にいたネコたちさー、UFOにさらわれちゃったんだってねー、どー思う?」
「おっ、思うって?」
「ホントかウソか」
どう答えればいいの?
「そういう噂話は聞いたことあるけど」
「違うんだよね、そういうの」とそう言って不良少女は、まっすぐこちらを見上げていたチャトラちゃんに一瞥をくれた後立ち上がり、わたしの目を真っ正面から見てきた。顔を横に向け思わず目を逸らしてしまう。
「どっち?」不良少女はなお執拗に訊いてきた。
事実を知る者としてはウソはつけない。いいえ、言っても大丈夫だよね。だってロインがUFO騒動を起こしてくれてるんだから。あの夜あのUFOがどれほどの人に目撃されたことか。だから言っても頭がおかしいとは思われないはず。
「本当だと思う」わたしは言った。
「それ、あたしの目を見て言ってくれる?」
あなたの目なんて見られるわけないのに——しかしわたしは覚悟を決めて顔を上げる。
「本当だと思う」わたしはもう一度同じことを言った。
不良少女は一旦目をつむりそしてまた開いて、
「そこまで来てまだ気づかないかな?」と不思議なことを言った。思わず「きづく?」って、とおうむ返しで訊いてしまう。
不良少女はまたしゃがみ、まだ傍から離れていないチャトラちゃんを唐突に一回だけ撫で、そして言った。
「あんた向こうへ行ってていいから」
チャトラちゃんは不良少女を睨みつけるように見上げ、次にわたしの顔を見て、なー、とひと啼きしてもう歩き出していた。わたしは我に返るのに少しだけ時間を要した。
「ちょっと! 追い払うなんてひどいじゃない!」思わずそう口走っていた。相手が不良だって事を忘れて。
「これは単なる嫉妬」
はぃ?
「よっと」と言いながら不良少女は軽くジャンプしながら半回転、その刹那着ていたおかしな迷彩柄のパーカーもふわりと膨らんだ。
あっ! とヘンなところから声を出しそうになった。
冬期装備の迷彩柄のようにしか見えなかったそのパーカーは黒と白の二色だけで構成されていた。まさか、まさか、これは——
「『ふたばどーり・みさ』ちゃん、お久しぶり」不良少女は畳み掛けるようにそう言った。
「なんでわたしの名前を——?」
「一番最初に会ったとき自分で教えてくれたんじゃない。忘れたの?」
「ひょっとして……黒白——」あまりに〝跳んだ発想〟に一瞬口にするのを躊躇する。
「——ぶちちゃんっ?」
不良少女は白い八重歯を見せた。
「あったりーっ」
こ、こ、こ、声も出ない。
「なんとか言ったら?」と向こうから振られた。そのセリフに血の気が引く。
「あの、あの、あの……」あのしかことばが出てこない。
「なに、あの?」
「その……」あのがそのになってる。
「あー、なんとなく解るから」
「え?」
「この顔のせいなんでしょ? ことばが出せないのは。でもそこはお互い様じゃない?」
「誰が怖い顔なのよっ!」
「あー、そうだ。『美少女だ』って言ってたっけ」
ちょちょちょちょちょちょっっっ、
「あなたどこまで覚えているのっ?」
「どこまで? 全部だよ。すっごい進学校に行ってるんだって?」
顔がカーっと火照ってきた。
「まさかそれみんなに言いふらすとかしないよねっ⁉」
「なに? 言いふらしてほしい?」と黒白不良少女のにやり顔。
あぁ……
「っていうのは冗談でー、でもそれある意味手遅れじゃない?」
「ど、どういうこと……?」
「だって近くに他のネコたちもいたでしょ? みんなその辺のこと聞いちゃってんだよねー」
壁に耳あり障子に目ありってこのことだ。
「みんなって……他のネコたちもあなたみたくなれるの?」
黒白不良少女は、うん、と肯いた。こんなことならネコじゃなく壁や障子にしとけばよかった。
「ねえねえ、なんでぐったりうつむいてるの? こんなのあたし達にとってはホントどーでもいい話しなんだけどな」
「じゃ……あ、どーでもよくない話しってのがあるの?」
「あるよ。あたし達がここにいる訳、知りたくない?」
今度は血の気がザーッと引いていく。
「ごめんなさいっ!」わたしは頭を下げていた。
「はいっ?」
「なんで謝ってんのよ!? ただ単に学園長に送り返されただけって言おうとしてたのに!」
頭が真っ白に。
「がくえんちょう?」
「そう。学園長の円盤に乗って送り返されたの。取り敢えず半分弱、まず7匹、いや7人で戻ってきた」
「確か十一ヶ月くらい戻ってこないんじゃ……」
「その予定だったみたいだけど即席増殖で数が増えたからもういいって。おいおい残りの10人もキリが良くなったら戻ってくるよ」
もう多頭飼育崩壊?
なにかあの美少女学園長、科学技術をろくでもないことに使ったっぽい。
しかし……『キリが良くなったら』ってのが引っ掛かる。ハッキリと『数が増えた』って言ってるってことは……
目の前の黒白不良少女ちゃんって……既に非処女——それどころかお産経験アリ——?
ネコの姿で言うのは許されるけど……人間の姿でそれを言って欲しくなかった。言っちゃあおしまいだよ。
「戻ってくるのはいいとしてその『人の姿』はどういうこと? 美少女学園長に改造されたの?」
「うん、改造された」
「あ〜こんなことになっちゃって……」
「なんでも『戻してもどーせ飼えないだろうから』って、生きやすいように人の姿になれるようにしてくれた。でもこれけっこう気に入ってる」
ぐさっ、と来る。足下を見透かされてる。
『戻してもどーせ飼えない』って、わたしの事を言われてる。
「食べ物はどうするの?」
「食べるときだけネコに戻ればこれまでのペースで生きていかれるから。人の姿ならホケンジョだっけ? そこに連れて行かれることも無いし」
美少女学園長……あんなのの方がネコたちのことを考えていたっていう————ね。
「ただねえ、人の姿になれるって欠陥もあるんだよねぇ」
「ネコ姿に戻ってくれるの?」
「それそれ。前あんなにかわいがってもらったのに避けられるようになった」
「それって、……わたし?」と自分を指差す。
「そうだよ。どうもさ、『ネコ顔』って人の顔にすると人相悪くなるらしくて、みんなでいたら寄りつかれなくなった」
「……」
「だから今日は代表してあたしだけ。そしてチャトラを囮に使ったら近づいて来てくれたってわけ」
「おとり、だったんだ……」
ネコの計略に引っ掛かるって……
「まあ人相については似たようなものだし」
「わたし、悪いのっ?」
「うん」
黒白不良少女ちゃんにあっさりと言われてしまった。
「だいぶうち解けてくれて嬉しいよ。じゃ、そろそろ訊くね」
「え?」
「なんであたしに『ごめんなさいっ!』なんて言ったの?」
「——だって、あなた達を残してわたしだけ地球に戻って来ちゃったし……」
かろうじてだけど言えた。
黒白不良少女ちゃんは下を向き「じゃ、あたしがそれに対する答えを言うね」と口にする。
「あたし達がさらわれそうになってる時飛び込んでくれたのは——その——」と黒白不良少女ちゃんは言い掛け——
「美砂ちゃんだから!」「——その後もなんとかしてあたし達を助けようとしてくれたし——」「あたし達の中で恨んでるなんてのはいないよ」と立て続けにこれだけのことばを解き放った。解き放ってくれた。
ふうっ、と大きく黒白不良少女ちゃんは息をはく。
「人の言葉って言うのに勇気が要るね」とそう言った。「喋れるようになったからどうしてもお礼が言いたかったんだ!」そう言われて黒白不良少女ちゃんにはしっと抱きつかれた。いっつもネコを抱いてたけどネコに抱きつかれるのも悪くないなって思った。
みんなが地球に戻ってくれば元通り……じゃないかもしれないけど元に鞘には収まったと言えるんじゃないかな。
ロインにネコたち。
美少女学園長はヘンはヘンだけどいろいろ考えてくれてる。
今のわたし、けっこう幸せかも————
(了)
美少女たちとネコたち、異星へと飛び出す。 齋藤 龍彦 @TTT-SSS
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