人として生まれたなら人として死ぬのが道理。けれどこの物語ではそうできない存在がいる。人の身から精霊へと変化した「精霊成り」だ。
精霊成りになった主人公は「理」に従い、生まれ故郷を去る。旅を先導してくれるのは「人狩り」を生業とする男。人狩りとは、人を殺せぬ精霊たちに代わって、精霊たちを苦しめる人間を殺す人のこと。
人狩りの仕事がどういうものかを目の当たりしていく主人公は、世の中の不条理を知っていく。この段階での見所は、ポストアポカリプスと和風ファンタジーの融合した世界観だろう。あと、ごはんがおいしそう。
面白さが増したのは、この二人旅の真の目的が明らかになってからだった。
主人公の変貌、そして決断が描かれる最終章まで、ぜひぜひ読んでほしい。
世界観から好みなんですけども。
精霊成りの少女紬と人狩りの男ヒスイの、けっして生半可では行けない道のり。その物語。
幼いうちから残酷な運命を課せられる紬ですが、周囲の環境から学び、成長していくのは幼いが故の吸収力ですね。ひとりの人間として意思をもち成長していく姿は、旅で世界が広がっていることの証左に思えます。
ヒスイはいわゆる汚れ仕事のようなことをしていますが、必要悪というか、彼も割り切れない思いを割り切って生きている。そんな葛藤が垣間見れます。
しかし、この物語の真骨頂は怒涛ともいえる終盤にこそあると思っているので、世界観に魅了されたまま最後まで読み進めると、とんでもないものを見た、という震えが待っていると思います。