第10話
世界が真っ赤に染まって、そこから記憶がない。足掻いても足掻いてもどこまでも真っ赤。それは血を分けた母の血が、ホベリ付いて剥がれない。そして、もう一つ自分を怒りを孕みじっと見る血走った瞳。
忘れようとも思うが、忘れられない。
気がついた頃には、白い天井を見て、管がと繋がった腕を呆然と見ているしかなかった。僕自身に何が起こっているかわからなかった。
数日経ったある日、スーツを着た男の人が数名部屋に入ってきた。
ベットの足元にならん中央の人物に言われた事が気が付かないうちにできたことなのに大人たちは残酷だ。と認識をし、と規定の人たち以外関わるのが怖くなった。
ずっと人から一線を引いて無駄な接触を避けて過ごして来た。
ところが例外がいた。熊のような男で名前は鎌ヶ谷という刑事。
俺が推定20歳を迎え成人式の時死のうとした。なぜか殴られた意味がわからない。
そう思っていた矢先もう一人無駄に接触してくる人物が増えた。柳田といううわっとした少女。
用もないのに話しかけてくる。話題性に欠ける毎日飽きもせず目の前にやって来ては話す。そんなことを繰り返してなんのリミットがあるのだろうか。馬鹿馬鹿しいと思う。
そんな日々を送っているうちに何故か彼女を目で追っていた。市販のレモンティーなんて、甘いというのに、毎日のように飲んでいた。ストレートでやっと飲めると言うのに。
にこやかに友達と笑っている彼女を見ると胸が無性に暖かくなる。
ムズムズとした何かが身体中を無視が這いずり回るかのように駆け回り得体の知れない恐怖ニムを縮こませるようにした。
表情筋なんてどこかに置き忘れて感情すら共において来たような僕は本当の姿を見せることがなくなり、偽りの姿を他人に見せている自分自身を見失うと思う。いや、見失っているのだろう。
あの子は俺が本当に欲している何もかも手に入れている。だから俺は彼女から目が離せないのだろうか。
馬鹿馬鹿しい。人は残酷だ。いとも簡単に人を死に追いやるし傷つける。心開いたところで何も変わらない。虚しいだけだ。くだらない。俺は関係ない。そう思っていたのに、彼女はいとも簡単に僕の領域に跳ねるように飛び込んでいくる。
授業中ぽーとしている彼女にノートを見せる時一番心が落ち着く。失った心のピースがゆっくりとパチリと音を立てながらはまっていく音が心地いい。
夕暮れの籠 霜月藍 @shimotuk_ai
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