第5話
妹の見舞いに行った次の日、俺はモヤモヤとした気持ちをどうにもできずにリビングでうなだれていた。
「なんかあった?」
母が心配そうに聞いてきた。
変に誤魔化しても母には見透かされてしまうだろう。
「まぁあったっちゃあったんだけど心配しなくていいよ。大したことじゃないから」
「あんた分かりやすいわよね。素直だから。でもそっかーやっと立ち直ったか。それでどんな人なの?」
え?
なんでばれてんの?
驚きすぎて顔に出てしまったようだ。
「顔に何でわかったの? って書いてあるわよ」
母がクスクスと笑う。
「俺ってそんな分かりやすい?」
マジで分かんないんだけど。
「まぁ普通の人にはわかんないかもねー。でも私アンタのお母さんだから。アンタって素直だから進路だったりちょっとした愚痴だったりなんでも私に話すのに恋愛については一人で抱え込むじゃない。あの時だってそう。塞ぎ込んで引き込もって・・・・・・でもやっと乗り越えれたみたいね」
優しく母は笑った。
[あの時]俺は、塞ぎ込んだ俺に差しのべられるすべての優しさを拒絶し、罵詈雑言を喚き散らした。
結果として残ったのは友人との深い溝だけだった。その溝は今もまだ埋めることができていない。
「別にアンタがどんな恋愛しても文句言わないし好きにしていんだけどさ。自殺とかだけはマジで止めてよ」
「流石にそれはないと思うけど」
妙な間が空いてしまう。
少し気まずくて母の方をちらりと見ると目があってしまった。すると母はわざとらしくニコっと歯を見せ笑った。
「だったらいんだけどね! あっそうだ、アンタ暇なら彩希の着替え届けてくんない?」
思わぬ提案に心が踊る。
「別にいいよー」
母が不思議そうに見てくる。
「なんだよ?」
ニヤニヤと笑ってくる。
「別に~」
名探偵薫(母の名前)怖すぎだろ・・・・・・
こんなわずかなやり取りで色々バレるとか会話が減るわ。
俺は妹の着替えを渡され、病院へと向かった。
一人で生きることは、死ぬよりも辛い 詩章 @ks2142
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。一人で生きることは、死ぬよりも辛いの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます