第5話

 怪物メドゥーサを倒したペルセウスは、約束通りにアセナ神殿にアイーギスの盾を返還すると同時にメドゥーサの首を奉納した。妹の体と、洞窟の奥にあった幾つかの石像は、ペルセウスが森に埋葬した。

 死に際してメドゥーサは目を閉じたため、恐ろしい石化能力が発揮されることは二度と無かった。

 英雄として名を高めたペルセウスだが、その後も各地を旅して、少ない報酬で人助けをする生き方を貫いた。

 メドゥーサ王女の「死後」、アクリ王は遠縁から養子を迎えて立太子した。ペルセウスがメドゥーサを退治した頃には、既にアクリ王は亡く、養子がアルゴス王位に即いていた。だがその治世はアクリ王時代のような繁栄と安定とはかけ離れていた。ペルセウスが人助けをする機会は多かったのだ。

 ペルセウスは常に七つの宝石を肌身離さず持ち歩いて大切にし、ことあるごとにそれらを眺め、物思いに耽っていたという。



 ペルセウスの活躍は英雄叙事詩として詠われ、長く伝えられている。

 メドゥーサの最後の言葉が何だったのか。ペルセウスは生涯語らず、自らの心に秘めていた。

 後世の吟遊詩人も歴史家も、メドゥーサの末期の言葉をただ推測するのみである。





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