第12話
翌日。
僕は、郡上八幡駅にいた。おじいちゃんとおばあちゃんに連れられて、後はもう電車に乗るだけだった。ここで出来た男の子の友達も、見送りに来てくれたのだ。
「お前がいなくなると寂しいけど、来年も待っとるでな!」
爽やかな笑顔で握手を交わした男の子は、本当に友達になって良かったと思った。正直、ここまで仲良くしてくれるとは思わなかった。
電車の時間も近いのでもうそろそろ乗ろうとした時、彼が呼び止めた。そして、声を潜めて誰にも聞こえないように僕に話した。
「そういや、この前の話。ほら、お前が桜の木がある小さな社に行ったって言ってたやろ?あれ、本当は俺も体験してたんやて。皆に言っても信じてもらえんで内緒にしてたんやけど、仲間がいたとはなぁ。」
僕は思わず耳を疑った。僕以外にも、同じ経験をしている人がいたんだ。そう思うと何だか安心した。嬉しかった。モモカの存在を認めてもらえた気がして。
「僕も、嬉しいよ」
彼に満遍の笑みで答えた。彼も、「おう!俺らだけの秘密やな!」と言って笑った。彼も秘密にしていたのは驚いたけど、同じ女の子に出会ったんだ。そう思うと、なんだか照れ臭い気持ちになった。
僕は、きっとこれから先も、彼女のことを忘れることはないだろう。
寂しい時に側に寄り添ってくれた彼女のことは絶対に忘れない。
「ケイ、もう電車が来るで!」
おじいちゃんが僕を急かすように言った。
「うん!じゃあね!みんな!」
僕は急いで改札口まで走った。そして、もう一度振り返りてを振った。
その時、みんなの後ろにちょこんとモモカがいた。
そっか、来てくれたんだ。僕は全力で彼女に手を振った。
彼女は微笑んで、そして照れ臭そうに手を振り返してくれた。
僕はそこからは振り返らずにもうすぐ来るであろう電車のホームに走った。
僕の最後の夏休み 茉莉花 しろ @21650027
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