5分間クエスト

デイリークエスト

　タイムリミットの一三〇〇（ひとさんまるまる）まで――あと、５分。

　問題ない。この程度の死線など幾度も切り抜けてきた。

　ギルドの受付嬢よりデイリークエストを受注し……私は今日も、魔族へと挑む――。

　本日の討伐対象、最初の敵は……なんだ『グリーンウィード』か。

　コイツには特筆すべき点が無く、討伐というよりただの採取に近い。

　描写する時間すら惜しい。大人の事情により全カットだ。

　続いては……また貴様か。おいおい昨日も会ったばかりじゃないか？

　最近はよくコイツと鉢合わせる。まさか私の事が好きなのか？　奇遇だな、私もだ。

　奴はやはり外見が素晴らしい。白く柔らかい肌を持ち……何がとは言わないが、丸くて豊満で綺麗なんだ。

　普段ならば優しくしてやるのだが……今は急いでるんでな。手荒になるが、どうか許せ。

　私は奴へと魔法液を垂らした。すると白かった肌が、みるみる褐色に染まっていく。そして即座に武器を突き立て……身動きの取れない奴を、思う存分に貪（むさぼ）ってしまう――！

　どうだ、自慢の美しい柔肌が穢（けが）される気分は！？　豊満な身体を滅茶苦茶に蹂躙（じゅうりん）される気分は！？　ふはははははッ！！

　……――ふぅ。少々取り乱してしまったか。

　お次は『ホワイトフィッシュ』か。本日のメインディッシュではあるが、そう手間取るものでもない。

　さっさと片付け――……なっ！？　『スモール・ボーンスケルトン』の奴が紛れ込んでやがった！？　取り巻きがいるなんて聞いてないぞ、受付嬢め！

　オマケにコイツ毒を……小癪（こしゃく）な、喉をやられた！

　いや、慌てるな私。こういう時は『聖なる水』にて浄化を……も、持ってきて無いだとぉ！？　ぬかった、何たる失態だ！

　お、落ち着け……そうだ、ギルドより提供された『ミ・ソ・スープ』で代用を……――ぐぁあああッ！？

　なんだこれは！？　まるで煮え滾（たぎ）るマグマの様じゃないか！！

　くっそ、これは私の『キャット・タン』とは頗（すこぶ）る相性が悪い……長時間治癒不可なバッドステータスを頂いてしまった！

　はかったなギルドのＢＢＡめ！　私が火属性に弱い事を知っていたはずだろう、なぜわざわざ付与しやがったんだ！

　彼奴等（きゃつら）まさか魔族に与（くみ）したというのか……？　くっ、考えていても仕方がない。何よりもうタイムリミットが迫ってしまっている。

　かくなる上は、最後の討伐対象に全てを託そう。

　コイツの持つ神力ならば全ての状態異常を浄化してくれるはずだ！

　頼んだぞ――『ライス』！

　うおおぉぉぉぉぉぉぉッ！！

　………………。

　……――ミッションコンプリート（ご馳走様でした）。

　ジャスト、13時。

　昼休み……終了だ。

　　　　　◇

　【とある食堂（ギルド）の日替わり定食（デイリークエスト）】

　・ほうれん草のおひたし（グリーンウィード）

　・お椀型の冷ややっこ（白くて丸くて豊満な私の好物）（調味料：醤油（魔法液））

　・白身の焼き魚（ホワイトフィッシュ）（小骨（スモール・ボーン）あり）

　・味噌汁（ミ・ソ・スープ）（いつもより熱々）

　・白米（ライス）

　・お冷（聖なる水）（セルフサービス。持ってくるの忘れた）

　名誉の負傷：喉に小骨（残ったまま）、極度の猫舌（キャット・タン）により口内火傷（しばらく痛い）

　成功報酬：満腹感、程よい眠気

　失ったもの：880円、人として大切な何か

　私の旅は――たぶん続く。