最初ちょっと時事ネタ(もうすでに若干懐かしい)が入ってて、「あっ、ホラーってそういう系ですか」と思ったんだけど、読み進めると真面目にホラーしてたし面白かったです。
こういう日常に潜むわけわかんないモノの話はすごく好き。
もはやネットロアとして定着した感のある〝くねくね〟とかもそうなんですが、怨霊とか呪いの箱てきな何となく斟酌できる気持ちのあるヤツよりも「存在自体は意味不明なんだけど、普通に害があって迷惑」みたいなヤツのが個人的には怖いと思います。
「迷惑さ」って結構怖さに直結する大事な要素だと思っていて、例えば貞子が怖いのはビデオテープという媒体で無限に増殖して自分の手元に回ってくる可能性があるからで、「呪いの効果はオリジナルテープ1本のみ」とかだとあんま怖くない。
そういう点で、この「まがま」はめっちゃ怖いです。
めっちゃ迷惑だし、本当に意味不明。
グイグイと引っ張られるように読みましたが、最後の締めが特に素晴らしく、ホラーらしい嫌な読後感と「やってくれた」という気持ちよさが同時に襲いかかってくる不思議な体験をしました。
とても面白かったです。
大学生の大丸が、知人とのラインのやりとりでいつの間にか送っていた「まがま」というメッセージ。
本人に送った覚えはないし、そもそも言葉の意味すらわからない。最初はこの出来事に困惑するばかりの大丸だったが同じ現象が何度も繰り返され、しかも真剣な話をしているときにばかり送られるものだから、周囲との人間関係もどんどん悪化していき……。
自分の知らぬ間に他の誰かが自分に成り代わっている。というシチュエーションはホラーでは古典的なアイデアである。
しかし、本作はそこにラインという現代の身近なツールと、「まがま」という意味は分からないが不気味な気配のする言葉を組み合わせた点が新しく、そして面白い。何なんだよ「まがま」って……。
これがただの不条理な恐怖で終わらず、読み進めるうちに「まがま」に隠されたある法則性が浮かび上がるというミステリー的な構成も楽しく、それでいてホラーらしい読後感を残すオチも綺麗に決まっている。
『世にも奇妙な物語』みたいな話が好きな人には間違いなくおすすめの短編です。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)