命を懸けた戦い

ぴおに

命を懸けた戦い

はぁはぁはぁ


もう少し


後少しだ。



「はい、頑張って!」



満身の力を込める。



「うーーーーーーーーーーっ」



痛いというより

むしろ熱い。



「もうちょっと、もうすぐよ」



セコンドがまた真面目な顔でストローを差し出す

もういいよ、お腹いっぱいだよ。

しかし、声に出せない。

顔を背けても差し出されるストロー。

仕方なく少しだけ飲む。


「はい、頑張って!」


もう一度、満身の力を込める。

もう少しだ。

あと少しで終わる。

27時間…

戦い抜いた。



波を待って、今だ



「うーーーーーーーーーーっ!」



「上手だよお母さん、強いね、頑張って!」



そうだ、私はお母さんになるんだ



「ううぅーーーーーーーーーーーーっ!」





スルッという脱感と共に

看護師さんが慌ただしく動く。


「生まれた?」

「泣かない、泣かないよ!?」

パニックになる。


「大丈夫、大丈夫よ。

羊水を飲み込んでるだけだからね。

今、取り出してるから」

ジュコココという吸引音と共に

看護師さんが説明してくれる。



「オギャア オギャア オギャア!」



「ああ、泣いた」

「良かった…」



私も泣いた。



共に戦った小さな戦士は

体を震わせ

全身で喜びを叫んでいた。


私達、よく頑張ったね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

命を懸けた戦い ぴおに @piony

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ