僕は夏、彼女と出会った

朝だ〜〜〜

「ねぇ、優馬ゆうまくん」

「ん?どうした?」

「優馬くんの初恋っていつ?」

「僕の初恋か。確か8歳の時だったと思う」

「えっ、8歳⁉︎ 思ったより若かった⁉︎ その時のこと、聞いてもいい?」

「え、うん。別に構わないけれど…少し長くなってしまうかもしれないよ?」

「別にいいよ。面白そうだし。それに優馬くんのことはなんでも知っておきたいからね!」

「そう?なら、話そうか。あれは確か、僕がおばあちゃんの家に遊びに行ったときのこと…


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 大川家には、毎年7月の終わりから8月の初めまで、祖父の家に行くという恒例となりつつある行事がある。(ちなみに僕の名前は大川優馬だ)

 今年も例に漏れず、祖父の家に行くことになった。祖父の家の近くには川があったり、森があったりと珍しい遊び場所がたくさんあったので、僕はとても楽しみだった。


 ***


「おじいちゃん、こんにちは!森に行きたい!」

「おぉ〜、優馬。いらっしゃい。長いこと、車に乗っておったから疲れたじゃろう?アイスもあるから、中で少し休んでおいき」


 近くで遊ぶのがとても楽しみだった僕は、すぐにでも遊びに行きたかったのだが。まぁ、それでもアイスは魅力的だったので美味しくいただきました。

 その後、僕はおじいちゃんと森を散策したり、河原で遊んだりした。


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「え、全然トキメキがないよ〜!」

「分かっていると思うけど、これから出会うんだよっ⁉︎ それにトキメキがあるかなんて知らないからね⁉︎」

「分かってるよっ!さぁ、続きを話して!」

「はいはい」


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 3日目、僕は1人で河原に向かったんだ。たしか、どれだけ真ん丸な石を見つけれるか、みたいなゲームをしてたと思う。そんなゲームをしてるから、もちろん目線は下を向いているわけで。


 ドンッ!


「きゃっ」

「うわっ!」


 案の定、人にぶつかった。もしかしたら足音も聞こえていたかもしれないけど、それぐらい集中してたんだろう。ぶつかったのは同い年ぐらいの女の子。綺麗な茶色の髪は肩ぐらいまであり、背は僕と同じぐらいで目も大きく、今思えばとても可愛い女の子だった。


「あ、ごめん。大丈夫?」


 僕は手を差し伸べながら尋ねた。


「ううん、こちらの方こそごめんね」


 彼女はそう言ったあと、


「ありがとう」


 と、言いながら微笑んだ。


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「ついに初恋の子との出会いだねっ!」

「うん。僕らはその後、空がオレンジ色になるまで一緒に遊んだんだ」

「石拾い?」

「…………うん」

「面白いの?」

「いや、僕も何が面白かったのやら。でも、近所に年の近い子がいなかったから、石拾いというよりも誰かと一緒に遊ぶということが面白かったんじゃないかな?」

「なるほどね〜。ぼっちだったわけか!」

「違うわ!まぁ、いいや。その後、僕は毎日彼女と一緒に遊んだ。森とかに行ったりもしたけど、ここら辺はあまり覚えてないんだよね」

「え〜、初恋を忘れちゃったの〜?」

「毎日遊ぶごとに少しずつ彼女に惹かれていっていたのかもしれない、とだけ言っておこうかな。大事なのは最終日、僕がおじいちゃん家を去るときの話」


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 最終日、おじいちゃん家を去る日。今日も僕は河原へ行った。そこにはいつものように彼女がいた。


「おはよう!」

「おはよう、優馬くん」


 いつものように挨拶を交わした後、僕はいつものように石を探そうとした。そんな時、彼女は言った。


「あのね。今日は川に入って遊ばない?」

「え、でもおじいちゃんが1人で川で遊ぶのはダメだ、って」

「大丈夫だよっ!私と優馬くん、ちゃんと2人いるよ!だから、川で遊ばない?」


 いわゆる、上目遣いというもので彼女は問うた。今の僕ならイチコロだけれど、当時の僕は「川で遊べる」ということで頭がいっぱいだった。


「うん、じゃあ今日は川であそぼ!」

「やった〜!」


 その後、僕らは水を掛け合ったりして遊んだ。今までで1番楽しいと思った。そんな時、僕はふと思い出したかのように言った。


「僕、今日お家に帰るんだ」

「えっ」


 彼女は驚いてこちらを向き、足をすべらして転んだ。


 バシャッ


 水しぶきは上げながら彼女は川に倒れこんだ。


「大丈夫⁉︎」


 僕は彼女のもとに駆け寄った。彼女は頭を打ったのか、気絶しているようだった。でもそんなことは当時の僕にはわかるはずはなく、僕はパニックになった。


「え、え、どうしたら…」


 とりあえず僕は彼女を河原にあげて、膝に頭を乗せて寝かせた。そう、膝枕というやつだ。そして僕は彼女を膝枕したまま……………寝た。おい、とは自分でも思うけれど僕は寝てしまった。


 ***


「んっ」


 僕の目にオレンジ色の光が入ってきた。寝ているうちに夕方になっていたようだ。


「おはよう」


 目の前に彼女がいた。膝枕をしていたのだから当然ではあるのだけれど。僕は彼女の方を見ながら、しばらくぼーっとしてハッとしたように彼女に尋ねた。


「あ、大丈夫?急に起きなくなったから…」

「うん、大丈夫。ここまで運んでくれたんだね。ありがとう」


 彼女はそう言って微笑んだ。


「それで、本当に今日帰っちゃうの?」

「あっ、そうだった。うん、今日で帰るんだ」

「そっか」

「うん」


 僕らは見つめあった。一体どれほどたっただろう。


「僕、そろそろ行かなきゃ」

「あ、そうだね」

「 ……………… 」

「 ……………… 」


 僕はこんなに帰りたくないと思ったのは初めてだった。それほど彼女との日々はとても楽しかった。


「今までありがとう。本当に楽しかったよ!あれ、えっと…」

「?」

「そういえば名前、なんていうの?」

「あっ、私、自己紹介してなかったね。ゴホン、私の名前は川口愛衣乃。この村に住む8歳の女の子です」

「愛衣乃、だね。今更だけどよろしく」

「うん、よろしくね。優馬くん」


 ちょっと不思議なそのやりとりに2人で笑った。彼女の笑い声はコロコロと可愛らしかった。


「もうそろそろさよなら、かな?」


 どうやら少しそわそわしてたのを気付かれたみたいだ。


「うん…」

「そっか」


 彼女。いや、愛衣乃を、愛衣乃の目をじっと見つめる。


「私も優馬くんと遊ぶのはとても楽しかったよ。今まで一緒に遊ぶ子なんていなかったし」


 どうやら愛衣乃も僕と同じような環境にいたようだ。


「それと足をすべらしたとき、助けてくれてありがとうね。優馬くんが帰るって聞いて、少しショックですべらしちゃった」


 良かった、愛衣乃も寂しいと感じてくれていたらしい。僕は彼女と同じ気持ちだったことを嬉しく思った。


「そろそろ帰ろう」

「うん」


 僕はそれだけしか言えなかった。少し涙が出そうだったから。


「今までほんとに、ほんとーに…」


 愛衣乃はじっとこっちを見た。目には涙が浮んでいた。愛衣乃は笑みを浮かべながら、頬を涙で濡らしながら言った。


「ありがとう!」


 花が咲いている。そう思わせるぐらい彼女の笑顔は綺麗だった。


 涙が抑えられない。つー、と涙が落ちてくる。何故か心臓がばくばくする。今の僕の顔はきっと真っ赤になっているに違いない。


「ど、どういたしまして。愛衣乃」


 なんとか言葉を絞り出す。何がどういたしましてなのか。今思えばとても変な返事だ。


「ふふっ」


 彼女はそんな僕を見て微笑む。


「またね」


 彼女はそう言いながら軽く手を振って、帰っていった。僕は上手く言葉を発することが出来ず、ただただ彼女が帰って行く姿をぼうっと見つめていた。


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「これで僕の初恋の話は終わり。今でも大事な僕の思い出、だよ」

「うわぁ、いいな〜。私も優馬くんとそんな風に出会っていたら良かったのに」

「ふふ、僕らにはまだまだ先があるじゃないか。この先、もっともっと忘れない思い出を作っていけばいいさ」




 あの日以来、愛衣乃と会うことはなかったけれど。もしもう一度、彼女と会うことがあったなら今度はきちんと言おうと思う。


「またね」と。

「こちらこそありがとう」と。


 終わり


 後書き

 皆さまこんにちは。朝だ〜〜〜です。最後まで僕の作品を読んでいただきありがとうございます。この作品は僕の初執筆、初投稿の作品ですのでとても下手くそであったと思います。ですのでよければ、感想やこうした方がいいですよ、などの意見を貰えると嬉しいです。

 改めて、最後まで読んでいただきありがとうございました。

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僕は夏、彼女と出会った 朝だ〜〜〜 @MorningDa

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