4日目 蛍の星


 祖母の家の方は沢が近い。川も近い。初夏は蛍が飛び交って星のように空に瞬く。



『今年は蛍、見に行かないの?』


「……ここ最近お前と話してて勉強できてないからなぁ、どうしようか」


『勉強なんて、私がいなくてもおばーちゃんちいる間はしないでしょ!』



 ―─チッ、的確に僕の痛いところを突いてくるじゃないか……。



「バレたか」


『ほらほら、行こうよぉ!』


「しゃーない、行くか」



 母には「気分転換してくる」といって準備する。えっと、沢の方は結構気温低いからな、パーカーくらいは持っていこう。今日はそんなに奥深いところまで行くつもりないから靴じゃなくてもいいや。


 玄関でサンダルを履いていると、祖母に捕まった。



はるか、蛍見に行くの?」


「あー、うん」


「それじゃあこれも持っていきなさいな」



 渡されたのは小さな懐中電灯、それも2



「……ばーちゃん、なんで2本?」


「なに、彼女と一緒に行くんでしょう? だったら悠がエスコートしてあげなきゃ」



 ……僕はばーちゃんが怖い(笑)



「いってきます」


『おばーちゃんいってくるねー』



 祖母は僕と、を見て、微笑みながら


「行ってらっしゃい」



 と見送ってくれた。









 今日も彼女は夕闇に消え入りそうなのに。

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