後日談にかえて

《一九XX年七月二日付 某新聞朝刊より抜粋》

 「Y県岩戸山中にて、大量死体遺棄」

 七月一日未明、Y県南東部にある岩戸山において、山中の林から男女合わせて五人の遺体が発見された。警察が身元の確認を行ったところ、その内の三名は、先月中に親族より捜索願が出されていた一家のうち三名、冴木博一さえきひろかずさん(四二)、同清子きよこさん(三八)、同詩織しおりさん(一四)であると判明した。他二人の遺体は損傷が著しく、身元は未だ判明していない。

 死体にはいずれも他殺の痕跡があり、四名は刃物による刺殺及び斬殺、一名は絞殺であると思われる。

 警察は山中に捜索隊を派遣するなどして犯人の足取りを追う一方、未だ行方不明の冴木悠さえきゆうさん(一一)の行方について情報を集めている。


《一九XX年七月十五日付 某新聞朝刊より抜粋》

 「岩戸山中大量死体遺棄事件、急展開」

 Y県岩戸山で男女五人の遺体が見つかった事件で、同県警は十四日午前、Z市内に住む高倉恒一たかくらこういち容疑者(二一)を、殺人と死体遺棄の疑いで逮捕した。捜査関係者によると、高倉たかくら容疑者は極度の錯乱状態とみられており、供述も安定せず、精神鑑定も視野に入れて取り調べが行われているという。

 容疑者宅からは新たに一人の遺体と、殺害に使用されたと思われる刃物、遺体を入れたと思われるスーツケースやボストンバッグが発見された。DNA鑑定の結果、遺体は行方不明となっていた冴木悠さえきゆうさん(一一)であることが判明した。遺体は腐敗が進んだ状態であったが、胸部には刃物による外傷がみとめられている。

 また、容疑者の両親である高倉幹人たかくらみきひとさん(五三)と高倉雪江たかくらゆきえさん(五〇)の行方がわからないことから、県警は身元不明であった遺体との関連について捜査を続けている。


《登場人物》

・高倉恒一……主人公。私。二十一歳。

・高倉由宇……恒一の弟。六年前の七月、電車に轢かれ、死亡。享年五歳。

・高倉幹人……恒一と由宇の父。雪江の夫。五十三歳。

・高倉雪江……恒一と由宇の母。幹人の妻。五十歳。

・冴木悠……詩織の弟。十一歳。

・冴木詩織……悠の姉。十四歳。

・冴木博一……詩織と悠の父。清子の夫。四十二歳。

・冴木清子……詩織と悠の母。博一の妻。三十八歳。



〈了〉

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