緊張と弛緩が両立した、新しいレベルの百合

 石井と長谷川という2人の女子高生の素敵な日常を描いた作品です。

 ギャグ、R-15、青春、そして百合。この小説をどのジャンルの作品として読むかは人それぞれですが(そしてどのジャンルの作品としても読めるのですが)私はこの作品を「色々なジャンルの特性を生かした総合芸術」としてハイレベルだと感じました。
 石井と長谷川の関係は最初から最後まで美しいほどに2人で完成している、いわば閉じているにもかかわらず、同時に様々な要素によって開放感を感じさせます。そしてこの閉塞と開放、緊張と弛緩の両立が、先へ先へと読者の関心を惹きつけ、ページをめくらせます。
 その開放感を感じさせる諸要素が何かと言えば、それは漫才のような掛け合いがもたらすツッコミ役としての読者の存在の許容であり、2人に知識(ロクなものではないし、それに振り回される2人もロクでもない)を与えるインターネットへの接続であり、学園という他者との関わりが強要される空間です。言い換えれば、ジャンルの特性・タイトルに象徴される作品のテーマ・舞台設定のすべてが石井と長谷川の関係を巧みに盛り立てているのです。
 それはもちろん、あくまでも焦点を一つ、美しき関係性に絞って徹頭徹尾書き上げる筆者の実力あってこその技術であることも明記しておきたいと思います。

 もし読む前にレビューに目を通している読者がいるなら、丁寧な質感の百合を、諸ジャンルの特性を活用してより尊く仕上げた本作の素晴らしさを、こんな堅苦しいレビューからではなく実際に作品を読んで味わってください。
 

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