第5話 過去と未来をつなぐもの
花鬘は、鏡に映る桔梗を見て呟いた。
「乙姫よりは情があるのだろうな」
浦島太郎が歳を取って生を終えるまで、城に留め置いたと聞く。それに比べ、自分は恩人の孫へ満杯にならない文箱を贈っただけだ。
聞こえないと分かっていながら、花鬘は桔梗に囁いた。
「桔梗。鶴の怪我を治してくれた礼、確かに果たしたぞ」
花鬘は敦久に思いを馳せた。
止まった時間が勢いよく流れ出て死ぬ運命にある玉手箱に、敦久は長年の思い出を呼び覚ます意味を加えたのだ。そして、捕らえた詐欺師達から金は全て返せなかったものの、被害者に家族の温かさを感じさせる動きとなった。
「ふむ」
花鬘はそっと小槌を取る。
「百年先、千年先になれば変わるものはあるけれど、優しさだけは色あせないでほしいものだな」
願いを込めて見上げた空から、今日も一筋の光が差し込んできた。
玉手箱を開けたとき 羽間慧 @hazamakei
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