第12話 妹達の手続き

 全然起きねぇ……。

 かれこれ半日経ってるぞ。自然に起きるのを待ちましょうと、優しいロニが提案したから我慢して待ったけど、流石に待つのが辛くなってきた。

 エフィエイラなんか即効で飽きて、俺に魔法でちょっかいをかけ続けている。


「なあ、そろそろこちらから起こさないか?」


 アレイも待つのが嫌になったようだな。よし、その提案に乗りましょう。


「じゃあ、俺がまず妹を起こしますね。――春、風邪引くよ、起きて」


 声を掛けながらゆする。


「んー……んー? お兄ちゃん?」

「おう、にーちゃんだぞ。おはよう」

「おはよぉ……。――お兄ちゃん!? いつ帰ってきたの!?」

「残念ながら、帰れてはいないなぁ」


 春が突然大声を出すから、皆起きそうな雰囲気だな。


「まあ、皆起きたら説明するよ。ところで、俺がいなくなってからどれ位経った?」

「? えーとね、一ヶ月半位だよ」


 時間の流れはこっちとそう変わらないようだな。これは早く解決しないと、父さんや母さんが心配だな。


「ふあぁ、よく寝たー。……あれ? ここ、どこ?」


 あ、鈴井も起きたな。というか、全員身体を起こしてるな。春の声のせいだろう。我が妹よ、良い仕事だ。


「皆、頭が働いていない所にすまんが、ちょっと話を聞いてほしい」

「あれ? 伊緒だ。……伊緒だよね?」


 鈴井が、俺の格好を見て、首を傾げている。今の格好が急に恥ずかしくなってきた。厨二病だと思われてしまったらどうしよう。


「そうだよ。皆久しぶり。まあ、積もる話はまた後で。それでね――」


 かくかくしかじか。アレイ達に教わった事を説明する。時折、アレイ達が補足してくれたので助かった。

 聞いた皆は、最初は現実感がなかったのか呆けた顔で話を聞いていたが、暫くすると、不安感や動揺が溢れてしまった。落ち着かせるのにさらに時間が経ってしまった。一部、謎の興奮をしている者もいた。我が妹と、鈴井の妹だ。我が妹は分からなくもないが、鈴井妹は意外だった。流石現役厨二、もとい中二だ。

 それから皆を組合に連れて行き、登録を行った。講義は明日の予定だ。宿は組合の施設を使う。アレイ達の一軒家は地下室を使えばこの人数でも入れるが、流石にあそこは心を休める場所ではない。むしろ壊す場所だ。

 春もいるし、俺もそっちに付き合う事にした。エフィエイラの美味しいご飯が食べたかったなあ。


「イオっち、明日組合の前でね」

「イオさんのお友達の事、僕らの方でも考えておきますね」

「はい、分かりました。よろしくお願いします」


 

 □



 さて、一夜明け、組合施設のまずい(エフィエイラの手料理に比べて)朝食を手早く済ませ、やって来ました講義の時間。七人を見送り、三時間待機の真っ最中。

 ……暇だ。どうしよう。

 修行でもするか。

 他の人達もいるけど、控えめな感じなら――


「泉沢じゃねーか。何してんだ、こんな所でよ?」


 声を掛けてきたのはリーツレイアだ。オカマはいない。


「リーツレイアさん、しばらくです。昨日妹と知り合いが迷い人としてこっちに来まして。今講義中なんです」

「そうか、大変だな。何人来たんだ?」

「七人です。今後の事はアレイさん達も動いてくれるそうなんですが、一気に増えすぎてどうした物かと」

「それなら何人か私が面倒みるぞ。前にも話したが、仲間を増やしたいんだ」

「……ターレスもいるんでしょ? 全く知らない奴ならともかく、知り合い預けるのは流石にちょっとなぁ……」

「その辺もどうにかするからさぁ、なぁ頼むよぉ」


 ザ・女騎士って感じのリーツレイアがちょっと泣きそうな顔で頼んでくる。なんだろう、この気持ち……これがギャップ萌え?


「わ、分かりました。とりあえず話はしてみますから。ね?」

「ほんとぉ?」

「本当です。任せてください」


 そこまで言ってようやくいつものキリッした表情に戻ってくれた。ターレスのせいで相当苦労しているんだろうなぁ。

 さて、そうなると誰を犠牲にするかだな。妹は論外として、その友達の鈴井妹もなしだな。教育に悪い。鈴井妹と鈴井を分けるのもあれだし、そうなると、それ以外の四人かな? 人数もいればターゲットも分散できるだろうし。

 よし、あとでアレイ達に相談してみよう。って事で、控えめな修行の再開だな。


 

 □



(春視点)

「うー、眠い。話も頭に入って来なかったよ」

「春ちゃんのお兄さんの言ってた通りだったね」


 講義から解放され、受付へと向かいながらあ愚痴をこぼし合う。ちなみになっちゃんのお姉さんは寝てた。他の人達は何とか起きてた。


「お兄ちゃんも随分待たせちゃったなぁ」

「そうだよね。スマホも本もないし、待つのは大変だっただろうね」


 そうか、私達もスマホはまだ電池はあるけど、流石にお兄ちゃんのは無理か。悪いことしちゃったかなぁ。


「あ、あそこにお兄さんがいるよ――ん?」

「ホント? お兄ちゃ――は?」


 お兄ちゃんが浮いていた。

 神聖な雰囲気の淡い光を放つ両手を祈るように組み、力強いオーラみたいなのを全身から発し、火の玉や水の玉を体の回りをぐるぐる回しながら、浮いていた。

 物理的に浮いていた。周りの人も距離を取ってひそひそ話をしている。雰囲気的にも浮いていると言える。

 まあ、あれだ。

 妹として、滅茶苦茶恥ずかしい。


「お、お兄――」


 はっ! 今ここで兄に声を掛けたら、私も恥ずかしい思いをしてしまう! ここはそっと後に下がって、他の人先に声を掛けてもらお――


「あ、春。講義お疲れさま」


 お兄ちゃんのばかあああああああぁぁぁぁぁ!!

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