何故、男は女子小学生を騙して夏祭りへ行くのか

幼い頃に大切な人と過ごした思い出は色褪せることなく残るものだ。これはそんなひと夏の恋の話だ。

その日、入院した祖母の見舞いをすませた主人公・井口雅治は、近所に住む6歳年下の女子小学生・みさきを連れて地元の夏祭りに向かう。

おしゃまな元気少女みさきちゃんに引っ張られ、わたあめ、焼きそば、たこ焼き、かき氷……定番の屋台グルメを食べ歩く。周囲の喧騒と祭囃子が重なり、提灯が照らす情景はロマンチックで、そこだけ切り取ると仲の良い兄妹か、年の差カップルのデートの光景だが、問題が一つ。

それは主人公が、みさきちゃんが淡い恋心を抱く「まさにぃ」の偽物であることだ。

みさきの恋する「まさにぃ」の姿を借りたこの人物はいったい何者なのか。可愛らしい浴衣を着た小学生を騙してわざわざ夏祭りにやってきた目的とは。

こう書くと不気味で怪談めいているが、作品ジャンルがSFとなっているのがヒントだ。

最後にあっと驚く真実と、そしてホロリと切ない結末が待っている。文量こそ短いものの、綺麗に仕上げられたハートフルラブストーリーだ。

(『夏色の物語』特集/文=愛咲優詩)

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