エピローグ

 冷たい廊下をギスケ湯たんぽの力を借りて突っ切ると、自室に滑り込む。全館をめぐっているスチーム暖房は、それなりに部屋の暖かさを保ってくれていた。

 私の腕から逃れようとじたばたしているギスケを、強く抱きしめる。

「ギスケ」

『とりあえず腕の力を緩めて欲しい。話はそれからだ』

「……ギスケ」

 もう一度、名前を呼ぶ。ギスケは観念したように、暴れるのをやめた。

『何かな』

「こたつ幽霊の秋絵さんを、どうやって私の部屋に呼ぶつもりだった?」

『方法はいくらでもあったんじゃないかな。こたつごと運ぶとか』

 白々しいことを言う友猫を、いっそう強く抱きしめた。

「ありがとうね」

 腕の中で、ぐぎゅうと、まるで猫が潰れたような声がした。


   〈義理と猫情、渡世の仁義・了〉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

さらばコタツムリ。また会う日まで。 佐藤ぶそあ @busoa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ