第4話小鳥と大きな桜の木
「楽しくてつい飛びすぎちゃったよ。ちょっと休憩しよう。」
小鳥は羽休めをしようと、たくさんの桃色を灯した、幹の太くて大きな木の枝の上に留まった。
「こんにちは、桃色の花の木さん。少しの間ここで休憩させてくれませんか?」
小鳥は木に尋ねた。
すると木は、大空を受け止めるみたいに広げた枝々を風に揺らして答えた。
「もちろんだとも。可愛いお客さん。ゆっくり休んでいくといい。私のことは桜の木とよんでおくれ。」
「ありがとう。桜の木さん。」
小鳥は親切な桜の木にお礼をいって、
翼を畳み、しっかりとした枝に腰を下ろした。
木の上からはカラフルな花畑と空より深い青色をたたえた湖がみえた。
そしてその景色の中心には見覚えのある蝶々が映る。
「あ、揚羽蝶さんだ。」
揚羽蝶の鮮やかな羽は、様々な色が入り乱れる花畑の中でもはっきりと見えた。
はぁ…
小鳥は知らずのうちにため息を零していた。
その小さな、小さな、心の叫びを桜の木は聞き逃さなかった。
「どうしたんだい、純白の小鳥さん。君は何か悩んでいるようだね。」
小鳥は不意に声をかけられてびっくりした。
「別になんでもないよ、気にしないで。」
嘴からは心の内を隠す言葉が飛び出した。
ふぅむ。桜の木はしばらく黙っていたが、唐突にこう言った。
「あの揚羽蝶のことなのかい?」
小鳥は桜の木から、揚羽蝶という単語が出てきたことに全身の羽毛を逆立てて驚いた。
「えっ。僕は何も言ってないのに、どうして分かったの?
桜の木さんは魔法使いみたいだね!」
桜の木はしなやかに枝を揺らす。
「ほっほっほ、いかにも。実は私は魔法使えてな、全てのことはお見通しなのだよ。」
桜の木は冗談めかしてこう言った。
小鳥は心が緩んで笑った。
「つらいことがあるなら私に吐き出していくといい。悩みを1人で抱え込んではいけないよ。」
桜の木の言葉にはずっしりとした重みがあった。
「僕の悩みなんてちっぽけなものだよ。」
桜の木は柔らかく微笑んだ。
「誰かに話すと心って軽くなるものなのだよ。」
桜の花の香りに包まれて、
小鳥はぐらぐらしている心の内側を桜の木に伝えることにした。
純白な小鳥が羽ばたく 羽衣 まそら @hagoromo_masora
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