第3話 春風のすすめ
小鳥は首をぶるっと振る。
「今は、あの鳥に会いに行くことの方が僕には大切なんだ。」
羽根の色なんて気にすることじゃないさ、別に気にしてなんかないさ。
小鳥は広げた翼が少しだけ重たく感じた。
それでも小鳥は翼を振った。
なかなか身体は浮かび上がらない。
小鳥は何回も、何回も、同じ動作を繰り返した。
「どうして僕はうまく飛べないんだ!」
小鳥は焦燥に駆られて、いらいらした。
揚羽蝶さんはあんなに簡単に飛んでいたのに!
それなのに僕は…!
小鳥は翼を動かすのに疲れて、翼をたたんだ。
そのとき春風が小鳥の耳元で囁いた。
「どうしてあなたは飛びたいの?」
「それはもちろんあの鳥に会って、また歌声が聴きたいからだよ。」
「ふふふ。それなら。」
春風は優しく笑いかけて、小鳥の純白な翼を優しく撫でた。
「その時に感じた胸の高鳴りをもう一度思い出して!」
刹那小鳥の中の歌声が再び息を吹き返した。
優しい音色は小鳥の心をほぐして包み込む。
どくん!
小鳥は身体中に熱い血が駆け巡るのを感じた。
「あの鳥の歌声を聴いた時に感じたんだ。あの鳥に近づきたい、僕もそんなふうになりたい!ってね。」
小鳥は軽やかに純白の翼を広げる。
「この気持ちが僕を突き動かしてくれるんだね!」
広げた純白の翼は陽を浴びて輝く。
風は小鳥に味方した。
翼が風を掴む。
今だ!
飛べ!
「あの鳥みたいに!僕も!」
力強く地面を蹴って、純白な小鳥が羽ばたく。
風が小鳥を高く抱き上げて、
淡い青色の光がその小さな身体を抱きしめる。
小鳥はまるで空と一体化したような感覚を覚えた。
「うわぁ!飛べた!飛べたよ!」
小鳥は初めての飛翔に興奮して、あちこちを飛び回った。
目下に広がる縮小された景色は、小鳥の心に深く刻まれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます