これ、本当に読みやすくて面白いです。
あらすじを簡単に説明すると、国家資格を有する魔法使い組織『魔法師団』で国家公務員として働くネロ・リンミー。ある日、突如として国を襲った異常事態の調査を大魔導師サヴァランより命じられ、嫌々ながらも旅に出る。その先で待ち受けてるものは・・・?
まず何といっても描写の丁寧さが光ります。地図的な国の描写、政治的な主人公の立場、そして魔法の理論的な解説、どれをとっても繊細に丁寧に描かれていて、すべての情景が読み手にするっと伝わってきます。そして俺が一番好きなのが、
魔法がどう発動されるのかを、ひとつひとつ理論を交えながら説明してくれるところ!
これ、魔法使いを夢見たことのある人には嬉しい描写なんですよ!
呪文を唱えて精霊を呼ぶだけじゃなく、その魔法にどんな背景があるのか、魔法とはどうやって形成されるのか、それが描かれているのが本当に楽しい。しかも全然説明臭くなく物語にスルッと組み入れてくる。その描写で読者をワクワクさせながらも、ストーリー自体の展開は早くて飽きさせない。凄くいいバランスで物語が進んでいきます。このレビューを書いてる時点で24話まで進んでるんですが、一度読みだすとあっという間に全部読めちゃいます。それぐらい面白い。続きが気になるぜ・・・。
あとキャラクターがニヤニヤしちゃうんだよなー。
主人公のネロは国家公務員の下っ端として自分を擦り減らしながら生きてます。
実は家柄が良く双子の兄は市長という立場にコンプレックスを抱えつつも、上司の理不尽な命令も仕事だからと無難にこなし、自分の僅かな自由を大事にして、ヘラヘラしながらもなんだかんだ周りへの配慮を忘れられない、そんなヤツ。こんなのいいヤツに決まってんじゃん。しかも実は秘められた力がありそう・・・・。
そのネロが悪態ついたり迷惑そうにしながらも他人に親切にしたりしてるところを読むと、思わず顔が綻びます。だって文句言いつついいヤツなんだもん。そして研究者気質な性格も好きな人は多いはず。秘められた力が解放されていくにしたがって、色々ねじ曲がっているであろうネロの内省的な描写ももっと増えたらいいなー、と期待しています。
そして公開されている物語はまだまだ序盤。
これからどう展開されていくのか、どんな魔法が出てくるのか、そしてネロにラブストーリーは用意されているのか、いろいろ気になります。個人的には『BASTARD!!』が好きな人は好きなんじゃないかなーって思います。物語自体が魔法書みたいで、魔法を使ってみたい人にオススメの物語です。
物語が完結してからでいいから、魔法のレシピ本みたいなのも書いてほしい・・・。
この『魔王の星の次の魔王』、超大長編になりそうなほど設定に広がりがあるから、ファンタジー好きの人は序盤のうちに読んでおくのが絶対イイと思いますよ。更新が楽しみ。イヒヒ。
魔法使いの公務員という設定がいいですね。
数ある職業あれど、公務員はなかなか聞きません。
で、主人公の性格もスマートですね。
熱くないわけではないけどスマートである。それゆえ大人びた上に立つものの風格を感じさせます。
世界観もとても練られていて、わかりやすく説明がされてます。
それが邪魔になるわけでもなく、読み手にちょうどいいとさえも思わせます。
作りがとても丁寧でどういう世界でこの獣はどこにいるんだ、この魔法はこうなんだ、ここはこういうところなんだという事をわかりやすく教えてくれます。
総評します。
世界観がわかりやすい優しいライトノベルです。
残念なところは続きが気になってしまうところですね(´・ω・`)
魔法師団が冒険小説の悪役にされる。この設定を見た時にこの物語が奥行きの深い世界観の下にあることを確信した。こういうの大好き。
役所勤めの公務員魔法師達の、法律やら業務規程やら慣例やら世間体やらに振り回される様がリアルすぎて遠いファンタジー世界の話なのに身近さを感じて思わず応援したくなる。
主人公のネロはそんな公務員の皆様の中でも人一倍苦労性なようで、頼りになるが故に個性豊かでアクの濃い周りの人々に振り回されている。公僕のボンボンでありながらも公務員オブザ公務員な彼は、強力な魔法師という実にファンタジーな存在であるにも関わらず、とても理論的かつ酷く現実的で客観的な人間に見える。個人的に、作者の手腕が凄まじいと思うのはこの部分じゃないだろうかと思う。
例えばだが、彼が「勇者」という現実には無い架空の存在を(あるとても現実的な理由から)嫌っているというのも、この作品という架空の世界から冷静に一歩距離を置いているようで、それが我々読者という生身の世界と、主人公の距離を近少し近付けてくれているように思えるのだ。こういう演出の仕方もあるのかと膝を打つ思いだった。このように、主人公への感情移入を促す細やかな気配りがあちこちに盛り込まれている。そして、彼が勇者を嫌う理由があまりにまっとうかつ生々しくて、ちょっと笑ってしまった。
先に少し触れたが、主人公を取り巻く周囲の人々も魅力的だ。なかなかいい性格をしている人物が多く、それに振り回されるネロという構図はユーモラスでくすりとさせられる。だがそれよりも感動させられるのは、よくある噛ませみたいな人間だったり、他の魔法師団支部の局員だったり、ぽっと出の行きずり冒険者だったり、そういう物語の脇にいる人たちがいちいち魅力的な点だ。無能がいない。正確には、能力のあるなしに関わらず登場人物が皆、独自の価値観・思考の下で自分で思考しながら生きている。主人公を賢く見せたり有能だと見せるために他の登場人物をカカシにすることを良しとせず、しっかりと一人の重厚な人生を歩んできた人物として描いているのがよく分かる。こういう物語はいくらでも読み続けたい。
ストーリー自体はまだまだ序盤なため明らかになっていない謎が多く語れることも少ないのだが、特に気になるのはやはり魔王、そしてそれにも深く関わっているに違いない魔公周りの話だろう。この作品のタイトルに二度も使われている「魔王」という単語だが、その正体は未だ謎に包まれており、それがどんな生き物であるのかすら定かではない。ただ一つわかっているのは、「この星の生き物は魔王に思考を支配されている」ということだけだ。こんなに心を掴んでくる一文も中々ないに違いない。書籍化するなら帯にこれを付けてくれないと嘘だと思う。
また、ネロ自身にもまだまだ明らかになっていない顔が多く、こういった魅力的な伏線が今の本筋である任務とどのように絡み合っていくのか、今後が非常に楽しみだ。
密命を帯びた公務員が調査におもむく。
そうとだけ書けば、警察小説みたいだが、ところがどっこいこの公務員は魔法使いなのだ。
抑制された文体だが、淡白すぎず硬すぎず、わかりやすくて読みやすい。たまにはっとするような表現や例えが出てきて文を追うだけでも面白い。
ベルトを外すのと同じくらいのめんどくささの魔法、なんて表現がさらっと出るのとか、かっこいいじゃない。
主人公ネロもとても人間臭くて、しかし凡百な奴というわけでなく、知識欲とか研究心みたいなものが強くて、振る舞いもスマート。まだ戦闘シーンはありませんでしたが、かっこよく戦ってくれそうな雰囲気で待ち遠しい。
細かなシーンの演出も丁寧だが、くどくはなく、物語への信頼を高めてくれる。
第一話での役所の混乱は、金融腐蝕列島やシンゴジラを彷彿とさせる、騒乱っぷりと用語の飛び交う楽しさ。
魔法陣修繕係の木っ端仕事の描写も、世界観に説得力を与えてくれて、主人公たちが一公務員であることを思い知らせてくれる。
そしてそう、この物語の全容はいまだ謎に包まれているのだ。衝撃波の正体、王宮はなにを隠しているのか、そして謎のタリスマン。
公務員魔法使いが密命を帯びて地方に出張、しかもその先に巨大な動乱が待ち受けてそうとあれば、これは俺の好みどストレートなのだが、それを差し引いても確実に今作品はめちゃくちゃ面白くなっていく。まだ序盤も序盤ですが、そんな確信がある。