ふるさとの国を追われた俺は敵国の将軍になってリベンジを決めてやった
ヘツポツ斎
第1話 兄貴って後ろ盾を失った俺は故郷で孤立してた
「少々勝ったからとつけ上がりよって、いいかげん、貴様のツラを見るのも飽き飽きじゃ」
俺の名は
いきなり叔父貴の
「は!? 何言ってんだよ、俺が戦わなかったら
「だまらっしゃい! どうせ裏で
「いや、そりゃ苻堅は来たよ、来ましたよ!
けど全然俺に関係ねーし!
つーか、俺だってわりと苻堅に狙われかけたんですけど!?」
「やかましい! とっととわしの前から去れ! おまえの処分については、追って決める!」
処分て。
なんでこの国を守るためにひーこら戦ったのに、そんな事言われなきゃいけねーんだ。
叔父貴の顔を見た。
もう、まったくこっちの話なんて聞くつもりもねえらしい。
ダメだ、こりゃ。
「――ふざけんな!」
それだけを吐き捨てて、俺は家に帰った。
○
はぁ、兄貴が死んじまってから、ケチがつきっぱなしだ。
この
どっちを見ても尻込みしたくなるほどの強敵。けど、奴らを防がなきゃ、この国が滅んじまう。
だからこそ兄貴――
そんな兄貴の背中に憧れたから、俺だって戦って来れたんだ。
なのに、あのクソ叔父貴! なにが「恪がおったせいで、わしらは晋に攻め立てられたのだ」だ!
ちっげーだろ! 兄貴が病気で死んじまったから、奴らが攻めてきたんだ! なんでこう、あの野郎はああも分かってねえんだ!
布団の中でじたばたする。
そりゃな、理屈は分かるさ。
戦いなんて、勝とうが負けようがしこりが残るもんだ。兄貴は勝ちすぎた。それで、外からたくさん怨みも買っただろう。
けど、なら兄貴を守ってやるのが、叔父貴のやんなきゃいけねえことじゃねえのかよ!
頭ン中がぐるぐるする。
兄貴の発言力は、ほんとにすごかった。未だ幼いこの国の皇帝、
こんな俺にだって、ほんとに良くしてくれた。
将軍として兵を率いて、晋の将軍、あの
俺が戦えば、勝てる。桓温を退けられたのも、兄貴のおかげ。その兄貴が愛してたのが、この燕って国。
……な、はずじゃなかったのか?
布団にくるまりながら、考える。俺は、なんのために戦ってたんだ?
が、俺の悩みは、強制的に打ち止めにさせられた。
気配だ。
五人は下らない。殺気を隠そうともしてない。
なるほど。確かに叔父貴のやつ、「処分は追って」とは言ってたが、「どんな処分か伝える」とは言ってなかったな。
まぁいいさ。その方がわかりやすい。
かたわらの剣を拾い、息を殺す。
燕、かけがえのない故郷。
――それも、今さっきまでだ。
○
さて、叔父貴からの刺客(たぶん)をぶっ殺し、国から脱出したわけだが、ここから先、どうしてくれたもんか。
正直ノープランだったもんだから、歩きながら考える事にする。
行き先は、晋か、苻堅か。燕を滅ぼせるならどっちでもいい。問題は、どっちなら軍を預けてくれるか、だ。
そう言う意味じゃ、選択の余地はない。何せ晋についちゃ、思いっきりボコしてやったのがつい先日。俺がふらっとやってきたら、これ幸いと首をくくらせてきてもおかしくない。もうこうなったら、それはそれでいい気もするけどな。
こないだの戦いのことを思い出す。
はじめ俺らは、思いっきり晋に押し込まれてズタボロになった。そこにいきなり、苻堅のやつが漁夫の利を狙いにやってきやがったんだ。
晋にとっちゃ、俺らをそのままボコしてりゃ、苻堅にケツから飲み込まれることになる。だから、慌てて奴らは撤退を決めた。
こっちとしちゃ渡りに船、って言いたいとこだが、うちの兄貴ときたら苻堅の手下どもも散々に倒しまくってくれたからな。晋の奴らに逃げられて、その後苻堅軍と、ちょっくら小競り合いになったりもした。
もっとも、お互いすぐに軍は引いたが。
ん? もしかして叔父貴の奴、あん時のことのせいで俺が苻堅と通じてる、って思い込みやがったのか?
まあ、今さらどっちでもいいやな。俺が苻堅に殺されりゃそれまでだし、召し抱えられたら、それこそ叔父貴の心配を現実にしてやれる、ってもんだ。
うん、叔父貴思いだな、俺!
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